設計図と一致しなければ直ちに瑕疵(契約不適合)となるか?
相談がくる建築トラブルのなかには、調査途中で設計図の寸法が施工と食い違うことが分かり、それについてアドバイス差し上げる機会がたまにあります。トラブルで困っている方の視点の参考になっていただければ幸いです。
まず…確認したいこと
寸法の違いがあるとき、
① たし算ひき算など図面上での計算ミスで、
施工はそれに気づき修正されているケース
② 図面計算ミスなく、施工は寸法が違うケース
のどちらにあたるか、確認しています。
実際の相談事例で過去見られたからです。
②については必ず何らかの理由があるはずです。
こればかりは施工した業者さんに聞かないと理由ははっきりしませんが、先入観を持たずに可能性を推察できることもあります。では、②は全て瑕疵と言えるのでしょうか?
判決事例を見てみる
設計図通りの寸法にすることは基本的に大切、
そのうえで合理的理由があって変更したことが
① 建築関連の法律に適合している
② 契約内容の注文者の意図やこだわりから
かけ離れていない
場合は、設計図と施工が違っても必ずしも瑕疵とは限らない…と判決された事例を見つけました。この判決ポイントは、「重要なのは、契約で定めた機能や性能を実現することであり、設計数値を厳格に守ることではない」という考え方でした。
本来どちらも整合させたいが、そうならない場合は、一定の判断条件を満たしたうえで、本来の目的が果たせているかを問うた…の様子です。
足して考えたいこと
私は個人的に付け加えたいことがあります。
それは…建築過程(プロセス)での物差しです。
注文者の意図やこだわりを把握する立場の者が、
変更したい前に、注文者に変更意図を説明し、
了承を得ている
です。事前説明していれば、工事が完了し引き渡しされたのちに注文者が抱えた悩みを増幅させることは抑制できたし、不要な悩みや不要な誤解を抱えさせることがなかっただろう…と感じる事例が少なくなかったからです。
そう感じる理由は、自身キャリアから
私はサラリーマン時代から、新築やリフォーム時に
① 設計担当が書いた、契約した図面をもとに、
工事担当として随時詳細について、お施主様と
確認やすり合わせを行う担当をしていた
② 工事したものをチェックし、進捗状況などを
お施主様へ連絡報告する仕事をしていた
③ 何か変更点があれば、設計担当と一緒に
お施主様へ事前説明をしていた
などの経験があった為、①〜③の重要性を身にしみて感じていることが、今の仕事アドバイスに役立っているからです。
価値観は人それぞれ違う…
とはいえ、注文者だって価値観や考え方は様々です。何を物差しにして、何を瑕疵(契約不適合)と考えるか、やはり…最重要と考えるのは、第三者のサポートがあったにしても、クレーム段階で、当事者同士の話し合いをもって事の改善や関係修復にあたるのが妥当ではないか、経験を通して学んでいます。