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ある日の東京観光
自己紹介
私は24歳社会人3年目で、田舎で働く私。
仕事にも慣れ、特に熱中できる訳でもなければ、
楽しい訳でもなく、何となく足早に毎日が過ぎる
今日この頃…。
私は鬱々とした気持ちを抱えていた。
あぁ、つまらない。
全部投げ出して、何処か遠くへ行きたいなぁ。
思い出した社会科見学
そんなとき、ふと小学生の時に社会科見学で訪れた
東京国立科学博物館を思い出した。
立派な動物の剥製が立ち並び、薄暗い照明の中、
目をまぁるくして、どれも見逃すまいと
必死に見学したあの日。
あの時、私は確かに心が生き生きしていた。
知らないことがこんなにあるんだと、
世界はこんなに広いんだと、衝撃を受けて
一人感動していたのだ。
その時の気持ちが思い出され、込みだしたら最後。
私はもう一度あの場所へ行きたい!と、
気づいたら有給をとり、電車チケットを入手していたのであった。
いざ上野へ
電車に揺られ着いたのは上野駅。
子供の声があちこちから聴こえる。
パパやママに連れてきてもらったんだね、
いいなぁ、楽しいねぇ!
早速、国立科学博物館へ向かおうと思ったけれど、
道を誤って、裏路地のような所にたどる羽目に…。
でも、遠くに見えるスカイツリー、日差しを遮る街路樹の葉っぱが風に揺られてカサカサと鳴る音や、人を怖がらないカラス、地元の方が自転車のかごいっぱいに買ったものを詰めてヨロヨロこいでいく姿を見て、何だが和んだ。
さて、いよいよ中に入ろう。
お一人様は珍しいのか、周りは家族連ればかりで、ちょっと恥ずかしい気持ちになってしまった。
でも、そんなことで挫けてはならない。
ワタクシは小学生の時のワクワクを追体験しに、わざわざ東京まで着たのよ、と胸を張り中へ進む。
真っ先に訪れたのは360℃シアター。
ここは小学生だった私が、やけに感動してずっと胸に残っている施設である。文字通り、どこを見てもスクリーンで、まるで映像の世界の中に飛び込んでしまったかのような感覚を味わえる施設なのだ。
いよいよ始まる、ワクワク。
またあの感動が味わえるのだ!と鼻を膨らませて中に入ったのだが……あれ??
あのときの感動は何処。こんなんだったけ??
もしかしたら、あまりにも時間が立ちすぎて、
頭の中で美化しすぎてしまったのかもしれない。
確かに、映像は綺麗で臨場感溢れる演出は凄いのに。
あー大人になってしまったんだなぁ、と思った。
世の中のことなんてなぁんにも知らない、無垢な私だったから、あれ程まで感動出来たんだ。
キラキラとビー玉のように輝く子供時代を遠目に見て、羨んで懐かしむくらい、遠くに来てしまったんだ。
でも、あの頃には出来なかった事が今の私にはできる。行きたいと思った時に、行きたいと思った場所で、自分の力で辿り着けようになったのだ。
キラキラと引き換えに。
大人になるって、そういうことだ。
そうなのだ。
なんて一人で納得しながら、
私は360℃シアターを後にした。
![](https://assets.st-note.com/img/1662885907000-Kogg0rxW69.jpg?width=1200)
キラキラ
360℃シアターを後にした私は、
順路に沿って律儀に博物館内をまわり始めた。
社会科見学で国立科学博物館に来たのは、
かれこれ10年以上前になる。
展示物を見ていると、断片的だった記憶が
次第に繫がって、
あぁ、そうだここにはこれがあったとか、
こんなに立派な展示物なのに、どうして覚えていないんだ?というとモノが次から次へと視界を流れていく。
ずっと集中力が続くタイプではないので、
もったいないが、流し見てしまうエリアもあった。
そんな中、一際私の目を惹いたのは鉱物の展示である。
薄暗い部屋にひっそりと輝く鉱物たち。
まるで暗い路地で、妖しい人かも分からぬ占い師に手招きされているようで、妙に緊張感があった。
人間の生きる時間の何倍、何十倍、何千倍もの時間をかけて、やっと私の目に映った鉱物たち。
「お前なんぞ、足元にも及ばないぞ」
なんて、言われているようだ。
満点の星空や宇宙を想像すると、自分がいかにちっぽけな存在感か思い知らされるというが、
私は鉱物を見ても同じ気持ちになる。
荘厳で、格式高い展示を見て、
私の気分はとても高揚した。
お昼にしましょう
ホクホクした気分のまま、
私は国立科学博物館を後にした。
日差しが痛い、暑いのではない、痛い。
時刻は12時30分。
お腹が減っていた。
いくら展示物に夢中になっていようが、
私は空腹については忘れない。
探すのだ、飲食店を!
…とはいうものの、
私は一人で飲食店に入るのが苦手だ。
比較的空いていて、一人でも座れる座席があって、
注文が簡単で、それでいて好きなものが食べられる、そんなわがまま放題な私を受け入れてくれる優しい飲食店はないものか…!!
なんて考えながら駅周辺を歩き回ること15分…笑
やっと、空いていそうな所を見つけ腰を下ろした。
注文したのは、酢橘が香る涼し気なうどんランチ。
本当は炊き込みご飯の小さいサイズサイズがついてくるようだが、人気で売り切れてしまったみたい。
唸るような暑さもあり香り高い冷たいうどんを
私は夢中で啜っていた。
これがまた、お出しが効いていて
なんと美味しいこと、美味しいこと。
拝みたくなるような気持ちで平らげ、
少し物足りないが、腹8分目で良しとする。
あまりに涼しく快適だったので、
文庫本を広げ、長居してしまったのでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1662885959338-rLcpbgsF7U.jpg?width=1200)
花園稲荷神社の秘密基地
ひっそりとした、秘密基地のような場所が好きだ。
上野公園を宛もなくふらりふらりと歩いていると、
花園稲荷神社に辿り着いた。
まるで京都の伏見稲荷大社を思わせる、
真っ赤な鳥居のトンネル道。
そこを抜けると、立派な境内が見えてきた。
やっぱり一人は何だが気恥ずかしくて、
神様には失礼だが、さっさと礼拝を済ませて
立ち去ろうとしたその時。
ゴツゴツした岩肌に、朱色の鉄格子の扉、
そこから一人の男性が出てくるではないか。
え、何をしていらっしゃたの…??
恐る恐る覗き込むと、そこには
「礼拝後は扉を閉めてください。」の文字。
え?ここにも神様がいるの??
たいして明るくもなく、ひんやりとした空気を纏ったその場所は、気軽には入ることが出来ない厳かな雰囲気を醸し出していた。
これは気楽な気持ちで覗き込んではいけない
と思い、一礼して足を踏み入れた。
少しずつ進んで、角を左に曲がると、
むき出しの岩肌に、蝋燭の小さな炎が幾つも揺らめく、不思議な空間が広がっていた。
こんな所で、私は何をお祈りすれば良いのだろう。
さっさと立ち去ろうとした無礼極まりないさっきの私なんて、全てお見通しなんじゃないかな。
ごめんなさい。と心の中でつぶやいた。
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