見出し画像

各政党の「脱炭素政策」を読み比べてみた③日本維新の会は「原発熱心、再エネ興味薄?」


さて、今回は3回目ということで、今や野党第1党の立場を立憲民主党と争うところまで勢力を拡大してきた日本維新の会(以下、維新)について見ていきます。

維新の政策は、公式ホームページ上にある維新八策2022で見ることができます。その名の通り大きく8つの項目に別れているわけですが、各項目の具体策もかなり詳細に記述されていて、なかなかの力作だなあと感じます。

さて、早速中身を見ていきましょう。

経済成長と脱炭素の両立を強調

まず、「八策」の順番としては維新の旗印である「身を切る改革」や「地方分権」が前の方に出てきて、気候変動対策っぽいものが出てくるのは後のほうです。

5番目に出てくる【成長戦略(長期)】の「エネルギー政策」の項目には、こんな記述が。

グリーンエネルギーを推進する規制改革や投資促進制度の導入により、経済成長と脱炭素社会実現を両立します

太陽光、風力、地熱、バイオマス等の再生可能エネルギーの導入については、障害となる規制の見直しを不断なく行うとともに、地域社会がうるおう仕組みづくりを構築することにより、地方経済の活性化を図ります

いかがでしょうか。気候変動を「人類共通かつ最大の脅威」と表現したライバル・立憲民主党と比べると、より経済成長との両立に軸足が置かれているように受け取れます。また、「規制の見直し」や「地方経済の活性化」と結びつけているあたり、いかにも維新らしさが出ていますね。

もう一つ、【成長戦略(長期)】の「SDGs・ESG・サステナビリティ」の中ではこんな記述もありました。

SDGs への取り組み、特に CO2 排出量や人権等に関する企業の方針や対応が国際的に重視され、経営やビジネスに大きく影響を与え始めていることに鑑み、我が国でも企業の持続可能性を評価する制度を構築します

SDGs 市場で存在感を発揮し、ESG投資資金を日本に呼び込むため、国際基準に即した日本企業の価値向上とイノベーション創出を促進するとともに、SDGs、ESG、サステナビリティに関する国際社会の動向を踏まえた国内環境の整備を行います

企業の持続可能性を評価する制度をつくって、海外からのESG投資を呼び込む。 ここでも、SDGsを経済成長につなげるという、ビジネス的な「攻め」の姿勢が見て取れます。


維新の会公式ホームページより

記述少ない「再エネ」、詳細な「原発」

では、より具体的な脱炭素政策についてはどうでしょうか。

これは【危機管理・科学技術・環境】の中の「環境」の項目に、こんな記述がありました。

2050 年カーボンニュートラル、2030 年温室効果ガス46%削減目標に向けては、過度な負担が産業流出を招かないよう十分に配慮しつつ、新たな投資を呼び込み、目標達成に不可欠な技術革新と雇用創出を実現します

「過度な負担が産業流出を招かないよう十分に配慮しつつ」という文言が入っており、2050年カーボンニュートラルの目標についても政府が立てたものと同じ。かなり抑制的な目標であると感じられます。立憲民主が政府の目標をさらに前倒しして「2030年に再エネ比率50%、50年に100%」とぶち上げたのとは対照的ですね。

実際、立憲民主が再エネの普及についてかなり文字数を割いていたのと比べると、維新のほうは再エネへの記述は多くありませんでした。

その代わり、原発政策については「エネルギー政策」の項目の冒頭に次のような記述があり、かなり詳細に検討されているように感じられました。

東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえ、原発の再稼働に係る国の責任を明確化するとともに、高レベル放射性廃棄物の最終処分等に係る必要な手続きを明確化するため、①原発の稼働に当たっての政治主導の明確化、②避難計画への規制委関与の法定、③原子力損害に係る国負担の明確化、④最終処分施設等の確実な整備のための手続き法制の整備を柱とする「原発改革推進法案」の制定を行います

ちょっと細かくて読みづらいかもしれませんが、「避難計画への規制委関与の法定」や「原子力損害に係る国負担の明確化」など、今の政府がこれらの問題をうやむやにしたまま原発再稼働を進めようとしているのに比べ、正面から法整備を進め、そのうえで原発を推進する、という姿勢が見えました。

原発については賛否が別れる分野でしょうし、私は個人的には廃止していく方向が望ましいと思っていますが、こうやって問題点を逐一法改正しつつ進めようとする姿勢は少なくとも現政権よりは評価できると思います。

立憲民主党のときにも話題にした、日本版GXの特徴ともいえる「水素・アンモニア・CCS」については下記のような記述がありました。

水素等は、脱化石エネルギーの観点から将来の有力なエネルギー源として期待されることから、その活用や研究開発に積極的に取り組みます。また、CC(U)S や石炭ガス火力発電など、環境負荷が低くエネルギー安全保障に有効な火力発電の技術開発も推進します

立憲民主党が書いていたのとほぼ同じくらいの内容や分量で、これらの政策にはそこまで積極的という印象は感じられませんでした。

「脱炭素」にはあんまり力点が置かれてない

全体として感じられたのは、日本維新の会としては、気候変動対策に対してはそこまで大きな力点を置いていないということです。基本的には規制緩和や地方分権によって経済成長をしていこう!という立場ですし、気候変動対策も経済成長につながる範囲でならばやる、といったところでしょうか。

原発については、今言われている数々の問題に自民党と比べると誠実に対処しつつ、基本的には推進する立場のようです。一方で再エネ普及に対しては「規制緩和」くらいしか具体策がなく、あまり思い入れがないように読めました。国の政策として後押ししながら再エネ普及を推進した場合に比べると、将来の再エネ普及率は低くなるのではないか、と感じました。

もちろん、経済成長を犠牲にしてまで気候変動対策をする、なんて言っても選挙で勝てないでしょうから、それは致し方ないところだと思います。だけど、原発だけじゃなく再エネ普及についても、経済成長につなげつつも推進する具体的な「策」がもっとあったらいいなあ、と思わせられました。あくまで個人の感想でございます。

【続きはこちら】
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた④共産党は「大企業にムチ」で最もラディカル

【このシリーズの記事一覧はこちら】
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた①自民党は記述少なく、にじむ原発推進への思い
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた②立憲民主党は「2050年再エネ100%」ぶち上げ
各政党の「脱炭素政策」を読み比べてみた③日本維新の会は「原発熱心、再エネ興味薄?」
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた④共産党は「大企業にムチ」で最もラディカル
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた⑤公明党は「水素・アンモニア」志向
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた⑥国民民主党からにじむ「加速主義」の気配
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた⑦れいわ新選組は「30年までに石炭火力全廃」言い切り

タイトル写真:UnsplashAaron Burdenが撮影した写真

いいなと思ったら応援しよう!