20、母への介護
散歩して、歩いていると、途中で、元気に玄関を掃き掃除している、お婆さんを見つけた。
ぼくの母も、生きてればあのくらいの年なんだろうな、と思った。
病気なんてならずに、倒れてなかったら、あれくらい動けていたろうに。
そのお婆さんは、腰こそ曲がってはいたが、ぼくの母も、腰ぐらい曲がってても、あれくらい元気でいて欲しかった、と思った。
だいたい、あのお婆さん。まだ、自分のことは、自分でやれてそうだな、とか想像する。
誰でも、自分のことは、自分でしたいだろう。
ひとに任せるようにはなってはいけないな、と思う。
ぼくの母は、ぼくに甘えてばかりいたが。あれじゃあ、あかんわ。自分のことくらい、自分でせんと。
介護職の仕事をしていたせいで、母を甘やかせすぎた。
ADL(残存機能)というものがある。介護者は、その被介護者のADLを奪ってはいけない。
ぼくの介護は、母のADLを奪ってしまうような介護をしていた。
でも、そんな、たかだか三年、介護の仕事をしたところで、良質な介護など、まだ身につかない。
例えば、母がお風呂から上がったとき、服を着るのに、のそのそしていたら、「早よ着ーな」と手を出してしまう。でも、そんなことをやってるうちに、ぼくは、母のADLをじわじわと奪っていってしまうのだ。
その、ADLを奪わない介護をしてこそ、立派な介護と言えるだろう。だから、介護なんて、難しい仕事、もう、まっぴらだ!
次、就く仕事は、介護から離れたいものである。