ハルジオン
まえがき
こんばんは
お疲れ様です。今回はショートショートです
男が道を俯きながら歩いている
分別の出来る彼は上目で人を見ながら歩いている
革靴、それに引っ付く女と濃い香水
一目みて、あいつらは粗大ゴミだとほくそ笑む
自分の価値に似合わない物を使って、何が楽しい
届かないものをねだって、何が楽しい
男は吐き気をしながら通り過ぎる
次はなんだ
ボロボロのジャケット、踵のつぶれた靴
仕事終わりのサラリーマンだろう
コイツも、話にもならない
ゴミはゴミでも、あれは腐った生ゴミだ
理のかなってない上司に頭をさげ、わけのわからない客に頭をさげ
何が楽しくて、生きているのか
男はまた吐き気をしながら通り過ぎる
何が楽しくてか
ふと、我に返った
男は歩く足を速める、目的地に向け
死に場所に向け
男は聖人だった
荒れ地には種をまき、水のない場所には井戸を掘った
人々が幸せになるのがうれしかった
だがいつも人々は男を裏切った
他人よりもっと幸せになりたい、もっと相手を下に見たい
もっと、もっと、もっと
人々の欲に果ては無かった
そして気づいた、男も人々と変わらないと
私がしたことは全て、自己満足だと
結局、私が見たかったのは幸せになる人、
ではなく肥えた人々達が争うことだと
吐き気がした、自分に
死に場所まであと少しだ これで吐き気もおさまる
崖の近くで白い杖を持ち、まっすぐ前を見ている女がいた
目の見えない女か
どうせ私に金目当てだろう
時間の無駄だ
通り過ぎるときだった
死なれるんでしょ、これを持っていってくれませんか
透き通った声だった
失礼だ 死ぬとしても私の勝手だ
ここは崖に近い、その花を最後の者達に売るのか
お前は声やみてくれは良くても心は腐っている
まるで死神だ
いいえ、売る気はありません
私に貴方を助ける力はありません
けど、この花を最後の友として持っていて欲しいのです
何を言っている 何が言いたい
私も、この世界を恨み、人々を憎み
自分を嫌い、この渓に身を投げようとしました
そんなときです ある人達が命がけで私を助けてくれました
彼らは言いました
私たちも一人の男性に助けられた、だから貴女を助けたと
彼らはこの花を大事にしてました
自分たちがまた恩人を忘れない為にと 自分たちの過ちを忘れない為にと
男はある人達を思い出していた
男が助けた人々のことだ
目の見えない女は
見えないはずの目をまっすぐこちらにむけてまた話しだした
この花、ハルジオンを持っていってくれませんか
貴方からはこの花と同じ香りがするから
彼女は微笑みながらそう言った
ありがとう
男は答えた、確かに笑ってだ
あとがき
お疲れさまでした。
読んでくれてありがとう。
花をテーマにした話でした。