個別対面授業
高校一年生のときだった。
隣のクラスから、ひとりを残し、45人の停学処分者がでた。
停学にならなかったひとりが、ボクの友人だった。
そんな友人にボクは、『なんでお前、停学やないねん。』と尋ねてみた。
『俺だけ文化祭の打ち上げに呼ばれんかったんや。』と友人が一言答えた。
そんな友人の事が幸なのか。不幸なのか。ボクはしばらく考え込んだ。
しかし、ボクにとってこの友人の言葉は笑いを誘うにはありあまるものであった。
『なんで、お前のクラス、お前以外停学になったん?』と友人に再び尋ねた。
すると、『文化祭の打ち上げのとき、急性アルコール中毒者がでたんや。それで救急車で運ばれたんや。それで学校にバレたんや。』
『ほんまか。そうやったんか。』
ボクの笑いのバロメーターが一気に上がった。
続けて友人が言った。
『こんなんやったら停学になった方がマシやった。』と言葉を放ったのだ。
ボクの笑いのバロメーターがレッドゾーンへ振り切った。
涙を流し、腹がよじれるほど笑ってしまった。
友人はそもそも停学になりたくても、その打ち上げに誘われなかたのだから。
そんな友人は、授業が始まると先生と友人だけの個別対面授業が続いた。
勿論、体育の授業も同じである。
教室では先生からの質問攻め。
体育の授業は、ただラジオ体操をするのみだった。
ひとりぼっちの友人は、クラスの連中が停学が終わるまで、休み時間のたび、ボクの教室に身を置いていた。
どんなにボクやボクのクラスの連中が大笑いしても、『ひとりは嫌や。』と教室には戻らない。
『キンコンカンコン』休み時間が終わりを告げる。
友人を連れ戻しに教師がやってくる。
そして、友人と先生の個別対面授業が始まる。
友人が連れ戻される間際、『頑張れよ。』とボクは手を振り声援を友人に送った。
こんな友人は果たしてラッキーなのか?
アンラッキーだったのか?
いまだに答えは出ていない。
しかし、友人は停学処分明けの男子生徒達に罵詈雑言を吐き捨てた。
言うまでもないが、個別対面授業で友人の成績が上がることはなかった。
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