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雨あがりて #1

#真夏の怪談まつり2024
参加 創作ホラー話し

☆-HIRO-☆ 第一話
2024年6月20日(木)

ホラーっぽい話しを創作しようと思いつきました。この前、試行錯誤的に書き出したのですが、ちょっと早まったかなという感も…
どうしようか決めきらずにいた表題はそのまま「雨あがりて」にしました。激しい雨の後には何かが起こるというコンセプトで書くつもりです。
少しだけ書き直した部分もありますが、ほぼ前の投稿と同じです。


はじめに

先日、変な夢を見ました。夢を見ている最中に突然起こされる出来事があり、そのせいだか妙にリアルに内容を覚えてました。その上、少ししてから寝直すとまたその続きを見る事に…
しかし、それは中途半端に途中で途切れていて、尻切れトンボのような終わり方でした。
その続きが何だかスゴク気になり、自分でその先のストーリーを考え書いてみようかと…
どうせ創作するのなら、最初から手直しして、別の物語を作ってみる方がいいかと思いつき、ひとつの創作話しを書いてみることにしました。
少しづつ話しを書いて、連載形式でUPしていこうと考えてます。
どうか最後までお付き合い頂ければ幸いと存じます。


第一話 突然の雷雨

電車を降りて、男は駅前の通りを歩いていた。背中に西陽があたり、またじわりと汗が出てくる。今日も暑い一日だった。

男は洲崎博多朗(スザキヒロタロウ)、57歳で郵便局に勤めている。数年前に体を壊し、集配課から内勤の郵便課へ転属、主に仕分け作業に従事している。

古い煉瓦作りの建物に差し掛かろうかという時、にわかに東の空から不穏な影が…見る見る空は黒い雲に覆われ、時を経ずして大粒の雨が落ちてくる。

その建物の中央には、アーチ状にくり抜いたような入り口があり、その中へと逃げ込んだ。
入ってすぐの左右には、それぞれ一階の部屋(店舗)への入り口があり、少し奥に階段がある。左側に上の階へ続く階段が伸びている。
この建物に地下はなく、右側は郵便の集合ポストが設置されていた。
その奥は何もなく、天井から三角に区切られた空間になっている。
照明はなくて薄暗い。
比較的入り口から近い、郵便受けの前あたりで雨宿りする事にした。

先程までの陽射しの照りつける光景が嘘のようだ。激しく雨が舗道に打ちつけ、雷鳴も轟いている。
近くのビルに落ちたのか、張り裂けるように凄まじい音が鳴り響き…それが幾度も繰り返す。

彼はちょっと怖くなり、奥の方へ移動した。するとそこに祠があったことに気がつく。
小さいながら中々立派な作りで、この建物と同様、かなり前に作られた年代物との感じを受ける。

雨宿りのお礼代わりにお賽銭を…と思ったが、あいにくポケットには500円玉しかなかった。“そうだ、電車乗る前にカフェでアイスコーヒーを飲んだっけ…その時小銭できっちり支払ったんだったな…”
お賽銭に500円は少し惜しい気がして“またいつか今度…”と手だけ合わせておいた。

2-30分もすると雨が上がり、また強く西陽が差してきた。降り出しと同じく唐突な天気の変わりようだった。
明るくなった外に出て、今いた場所を何とはなしに振り返る。そして前を向き直そうとした時、視界の隅で赤い光がチラリと光ったような気が…後から思うと何か祠の後ろからこちらを睨めつける目だったような…もう一度振り返ったが、何もない。まあ、急に明るい所に出たせいで目の錯覚だったのだろうと、さして気にもせず家路につく。

家に着いて玄関を開けると、物音に気付いて飼い猫が走り出てくる。
小さくて動きのしなやかな黒猫で、ユキと呼んでいる。
捨て猫だったこの子は、まだ小さくてひとりでは生きていけない感じだった。可哀想に思い、家で飼う事にしたのだが、幸せになって欲しいと願い“幸(ユキ)”と名付けた。しかし黒猫なのに白い雪というのも面白いなと思い、人に字を尋ねられれば“雪”だと答えていた。

ユキは子猫の時から面倒みたので良く懐いている。しかし今日は奥から出てきて、こちらを見るなり途中で立ち止まる。
毛を逆立てて”ハーッ“と息を荒げ、尻尾はまるで牛乳瓶みたいに太くしている。
それからクルリと踵を返し、奥へ走り去ってしまった。
“何が気に入らないんだろう? 今日は珍しく機嫌が悪いな…まあ猫は気まぐれと言うし、しばらく放っておこう…”と考え、着替えのため玄関脇の部屋に入っていった。

しかし、いつもは食いしん坊のユキがゴハンを用意しても出てこない。少し心配になり奥の部屋を探し回ったが、どこに潜り込んだか姿が見当たらない。
“あまりゴソゴソ探し回ったら、余計に気を立てるかな? まあお腹が空いたらコッソリ食べに出てくるだろう…”とそれ以上は探さず放置しておくことにした。

晩御飯を済ませてから風呂に入り、入浴後にビールを飲んで寛いでいたが、なんだか体が重だるく、疲れを感じていた。
“今日はそれほど忙しくなかったのに…なんでこんなにダルいんだろう…まあこんな日は早く寝てしまうに限るな…”といつもより早く床に就く事にした。

ちょうど勤務は明日からニ連休。ゆっくり休んで体調を整えておかないと…


次回は 「第二話 般若の顔」
ご期待下さい。

#創作大賞2024 #ホラー小説部門



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