発電機の計画(基本計画~基本設計)
発電機の計画について記述します。
発電機があれば信頼性の高い建築物になりますが、当然コストがイニシャル、ランニングもかかるので、要否については法的要素もありますが、施主の意向も重要な決定要素になります。
以下手順で計画を進めます。
①計画案件に対して発電機要否を検討
②設置場所、運転時間の検討
③発電機必要容量の算出
④仕様と機器のレイアウト検討
①発電機要否について
発電機の要否は以下要素より決定します。
a.消防法令における非常電源が必要な負荷があるか。(専用受電設備が導入できれば不要)
b.災害拠点の建物か、BCP対策を計画するか。
c.施主要望、停電による財産被害があるか。
a.非常電源が必要な消防設備電源は以下となります。
これら電源に非常電源用で発電機を設置しない方法の一つに専用受電設備の導入があります。特定防火対象物以外の建物、特定防火対象物で1000m2未満であればキュービクルを専用受電設備にすることで発電機を法的に設置する必要がなくなります。対象機器の有無は自身及び機械設備設計者が法適合にて確認を行います。
b.防災拠点、BCP対策
災害時に待避者受入や帰宅困難者受入を行う施設、停電しても事業を継続するか建物の特徴によって採否を決めます。
c.施主要望、財産損失の有無
動物実験施設や冷蔵冷凍設備がある施設
証券施設、サーバー施設、病院等の電力供給が途切れると被害が大きい施設は必須となるでしょう。
②設置場所、運転時間
屋内に設置場所が設けられるようであれば耐用年数が屋外設置より優位になる為、屋内設置を優先します。但し、振動騒音、搬入計画、給排気煙道等のクリアすべき検討要素が増えます。屋外の場合は地上または屋上設置が一般的です。必要スペースは発電機容量、運転時間によって変わります。
運転時間は消防負荷の電源確保、建物からの避難時間確保を目的とするのであれば8時間以内が一般的です。
BCPを考慮する場合は72時間(3日間分)が一般的です。
③発電機容量の算出
基本設計段階時、動力負荷は概算値を建築設計や機械設備設計から受領して算出します。
概算値がなければ原単位から算出します。
電灯負荷は原単位から算出します。
原単位については以前の記事をご参照お願い致します。
動力と電灯負荷の合計値に1.5倍したものを発電機必要容量とし、直近上位の発電機メーカー規格より機器を選定します。
容量によって発電機が低圧か高圧か、ディーゼルかガスタービンかも検討します。
低圧は~500kVA程度、高圧は500kVA~程度となります。
ディーゼルは~1000kVA程度、ガスタービンは1000kVA~程度になります。
発電機を選定したら、軽油かA重油かで燃料種別を選定します。
軽油は流通が多いですが、危険物指定数量が1000L未満となります。A重油は流通が軽油に劣りますが、危険物指定数量が2000L未満となります。
必要燃料量は以下式より算出します。
Q=b×E×H/w
Q:必要燃料量(L)、b:燃料消費量(g/kW・h) E:原動機出力(kW) H:運転時間(h) w:燃料密度(g/L)軽油830g/L、A重油850g/L
燃料消費量は以下となります。
22kW以下:310g/kWh
22kW超え~184kW以下:300g/kWh
184kW超え~331kW以下:270g/kWh
331kW超え~552kW以下:250g/kWh
552kW超え:230g/kWh
計算より算出した必要量より燃料タンクをメーカーの規格より決定します。
概ね200L以内であれば発電機内に搭載、
軽油950LまたはA重油1950L以内であれば発電機+小出槽+給油口ボックス+オイル配管
それ以上の燃料時は上記+オイルタンク
屋内発電機は室内に送風機、消音器、ダクト、ガラリとチャンバーが必要となり、高圧発電機時は発電機用の盤が必要となってきます。
④仕様、機器レイアウト
発電機容量、燃料量を算出し、必要機材をピックアップしたら主要機器を粗作図してレイアウトを検討します。または上記条件を伝えてメーカーに作図依頼をかけます。
給油口は外気に解放された屋外、オイルタンクは給油口より下の室か地中かピット内、オイル配管はオイルタンク~給油口~発電機間を配管する為、その経路に1m2程度オイルPSを設けます。煙道ルートを建築の煙突と調整します。
機器レイアウトを決めて配管ルートを検討したらメーカーに仕様書、結線図、外形図等を作図依頼して基本設計としては完了となります。
尚、実施設計で電気実負荷を積み上げて発電機計算を行い、基本設計時の発電機選定機種に変更がないか検証します。
以上です。