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真面目な観光振興備忘録 秋芳洞・秋吉台観光と美祢市
先日から40歳前後の美祢市職員2名と話す機会があり、話しているうちにある程度自分の考えがまとまってきたので、ここに残しておこうと思う。
また、ここに書いた内容はDMOの方向性決定のためのヒアリングで話した内容でもある。(令和6年6月現在、美祢市ではDMOの活動として、せとうちDMOの知恵を借りながら方向性を決めようとしている。当然、市の自主財源である『秋芳洞』と、インバウンドにも人気ある『秋吉台』を中心とすることが決まっているが、どんなふうに地域を作っていくかはヒアリングの内容により決定していく)
【美祢市観光の方向性】
当然秋芳洞・秋吉台中心。
秋芳洞の財源がなければ将来への観光投資や地域経済、そして職員の人件費などが賄えない。お金がなければ続かないので財源はしっかりと確保しなくてはならない。
またしっかりと自主財源につながる秋芳洞に人を呼んだ後、観光協会が旅行業の資格を取り行っている地旅の『みね旅』などを活用する。秋芳洞・秋吉台で集めた人を桜山や大岩郷、白水の池などの、認知度はまだまだ低いが魅力的な場所に引っ張りコアファンにしていく。その考えは以前から変わっていない。
以前(コロナ前)観光協会が
「秋芳洞中心の観光からの脱却」
を掲げていたが、やはり先立つものがなければ続かないし、いきなりマイナー観光地に呼ぶのも無理がある。コロナ禍、秋芳洞観光客の大幅な減少で危機感が募り、また秋芳洞中心の路線に戻ってきた感がある。ほかの観光地がだめだと言っているわけでもなく、むしろ旅行業者等に秋芳洞・秋吉台以外の観光地を民間では一番PRしているであろう私だが、やはり中心は秋芳洞・秋吉台だ。
観光は市外、県外、国外の外貨を稼ぎ、パイを大きくしてから観光への再投資や修繕、整備などにつなげていく流れが重要。
【ターゲット】
ターゲットだが、今からの時代は
・日本人個人旅行者
・外国人個人旅行者
・外国人団体旅行者
が中心だと考えている。当然日本人団体も重要だが、一般団体、修学旅行、募集ツアーなど、現在弊社安富屋だけのキャパシティで足りている。また団塊の世代が今年あたりで全員75歳以上を迎える。通年通してでボリュームのある募集ツアーの大半は団塊の世代中心の高齢者である。旅行申し込みもいまだに電子化に統一できず、高齢者の旅行のイメージになっており減少傾向だ。団塊の世代が身体的な理由により外出できない状況になれば、この傾向は一気に進むだろう。
話題性に関してだが、海外旅行者のPRに成功すれば日本人観光客の団体(一般団体・募集ツアー)へのPR効果も十分にある。今年ニューヨークタイムズに山口市が取り上げられたが、外国人が増えるより前に
「ニューヨークタイムズで紹介された西の京山口をめぐる」
などといった内容の日本人向け募集ツアーが増えた。また話題の場所に行きたいと依頼される手配旅行もニューヨークタイムズ効果だ。
数年前に海外メディアで取り上げられた『元乃隅神社』も日本人ツアーの定番スポットになっている。
要するに、話題になった〈いい場所〉に国内も海外もないという事か。翻訳機能などの進化もめまぐるしい昨今、国内・海外限らず話題になった者勝ちだ。
【宿泊に対する考え方】
秋吉台地域に泊まる目的は何なのか?
呑みに行きたいなど、遊びを求めるなら車で30分の湯田温泉がある。また情緒を求めるなら車で35分のところに湯本温泉がある。
以前は秋芳ロイヤルホテル秋芳館(コロナ禍に閉館になった)をはじめ秋芳プラザホテル(一酸化炭素中毒事件で閉館)、秋吉台グランドホテル(廃業)などの施設があったが、コロナ明けの現在は高価格のグランピングと、収容人数の少ない民宿やゲストハウスが主だ。
そんな中でも、やはり宿泊はお金が落ちる(客単価が高いなどの理由)からと、行政を中心に宿泊を増やしたいという思いがあるようだ。
しかし私は特に今宿泊を無理して増やす必要性を感じていない。市の自主財源である秋芳洞は昼の観光地だし、弊社もランチタイムを中心に営業を行っている。近くに大きな宿泊施設もないため商店街も昼間を中心とした営業。現在ある宿泊施設は収容人数も少ないため、泊まりたい人は泊まる。宿泊を増やす!という切り口より秋芳洞・秋吉台の魅力を発信する!で集客は十分だ。
おそらく必要なのは広域連携。背伸びして市外の資本本社が市外にある企業をせっせと誘致してくるなどではなく、せっかく車で30分足らずのところに山口を代表する『湯田温泉』と『湯本温泉』があるのだから、活用して相乗効果を生みたい。
【秋芳洞商店街の今後】
私は秋芳洞商店街で店舗を運営している。商店街での活動でよく言われる〈にぎわいの創出〉という言葉があるが、それだけでは足りないと考えている。むしろそれは2番目だ。このシリーズ1話目にも記したが、秋芳洞商店会では『にぎわい対策プロジェクト』を行っている。コロナ禍に商店会のプロジェクトリーダーが廃業、観光協会と市の担当職員の離職などがあり立て直す必要があるが、にぎわいの創出を最終目標にしているが、そこに至る過程で【にぎわいの継続】を大切にしている。
高齢化が進んだ昨今、商店街運営も例外にもれず高齢の経営者が多い。高齢者が一人で営んでいる店も多くあり、病気での急遽の入院や突然の不幸により強制的にシャッターになる店が出始めた。一旦そのような状況になると、どこに行けば所有者に会えるのか?誰が相続して、誰に合えば話が進むのかなど全く分からなくなる。そうなってしまえば借りたい人がいたとしても商店街に入ることが困難になる。そのためシャッターにしない【にぎわいの継続】が将来最も重要になってくる。方法として実際に行っていたことは、
・お店を貸す意思の確認
・不動産会社への協力の要請
・物件の間取りの確認とスペックの確認(水道の有無やエアコンの有無、築年数他)
・物件の貸し出し参考価格の算出
・物件情報の公開
・マッチングした際の開業時に申請可能な補助金などの情報提供(商工会協力)
といった感じだ。別にすぐお店を閉めるわけではなく、借り手が見つかってから話し合いの上、入居に向けて動いていけばいいというもの。高齢になり間口の広いお店を管理することが困難になった経営者さんには店舗の半分を貸し出す案なども提案しながらやってきた。
個人的な意見ではあるが、商店街の街並みを統一して新しくするなどの案は賛成ではない。もちろんそんなお金は商店会には無いし、市も秋芳洞商店街だけを優遇してくれるわけではない。しかしそれよりなにより、リメイクした商店街はほかのリメイクした商店街と似たようなものになる。無理してお金のかかることをするよりも、多少おんぼろでも今までの歴史などの詰まった今の商店街をうまく活用する方が《らしさ》が出ると思う。
【鬼笑亭跡地活用】
そして今、とうとうあの廃墟『鬼笑亭』が取り壊されることが決まったらしい。その後の使い道は今からのDMOヒアリングも参考にされるらしい。
これについては前から思っていた使い道に加え、今回の世間話で思った事も併せて考えがまとまった。
美祢市の問題の一つに
〈美祢市は人口の割に市が管理しなくてはならない床面積が広すぎる〉
というものがある。市役所や公民館はもちろんだが、廃校や市営の施設など、人口が2万人ほどに対してあまりにも広すぎる。維持費は市の財政をかなり圧迫している。これは地域審議会で副議長をしていた10年ほど前から問題としては認識していたが、職員の話からやはりまだ問題は継続しており、いまだに解決策を探しているようだった。
その床の中に、学術施設が多数ある。秋吉台科学博物館、ジオパーク拠点施設カルスター、化石館、民族資料館などなど、かなりしっかりした研究施設が多数あり、それが、とにかくバラバラに散っている。点で存在している状況だ。
鬼笑亭が取り壊された後地に何ができるかはわからないが、私の希望は上記施設がまとめて入った美祢市の文化や自然など様々なものが見れる有料の学術拠点ができてほしいと思う。
・今はそれぞれバラバラなところにある施設を1箇所にまとめることにより見所の詰まった学術施設となる。
・バラバラに管理しなくてはならないため維持管理費がそれぞれにかかっているものを一元化できる。
・点で存在する施設が秋芳洞商店街にできることにより線になり、観光客の動線に見応えのある有料施設ができる。点での存在では得ることのできなかった収入を得ることができる。
・秋芳洞とセットで滞在時間が延びることにより、地域に落とすお金が増える(飲み物や食べ物など)
・修学旅行の誘致などにも使える施設ができることにより、相乗効果で秋芳洞も来客が増え、財源の確保がより強固になる。
・研究者は秋芳洞集客の効果で来館客数が増えることにより研究の内容を広く周知することが可能になるとともに、遠足の場所として地元の子供達にも認知が広がる。研究に興味を持つ次世代の発掘にも繋がり継続性が生まれる。
・研究者がある程度人数がいるため、分担しての施設管理と事務局一元化で人件費が圧縮できる。
・多くの職員が働く場所ができれば昼のランチ需要はじめ、施設で働く人向けのサービスが生まれる。今までは有料駐車場しかない、『秋芳洞』が目的地の立地から観光客に対しての店舗しか成立しなかったが、観光交流センターに加えてこのような施設ができれば商店街の店舗に多様性が生まれて魅力ある通りに一歩近づく。
・現在の点で存在しているいくつもの学術施設は老朽化により近い未来に建て替えもしくは耐震化などが必要になってくる。それぞれで行うよりもまとまることにより、上記のメリットを得ることができる。
せっかく美祢はカルスト台地を始め素晴らしい自然や石炭の街として栄えた歴史、奈良の大仏の故郷としてPRしている銅山などを持っているのに、バラバラで寄りにくければ宝の持ち腐れだ。研究成果を秋芳洞と線でつなぐことで(秋芳洞と車の線上に配置することで)多くの人に見てもらい、学術の街としての切り口も見えてくる。箱を作ってそこに呼ぼうとしても今の時代は難しい。(秋吉台国際芸術村が例)。流れのあるところにいい箱を配置してこそ、力を発揮する。滞在時間を長くする最善の一手ではなかろうか。
これに関して考えられる問題としては、まず一つは行政の縦割りだ。観光は観光の振興であり、床面積の削減や学術の振興は仕事に入っていない。逆も然り。担当部署が違うと縦割り行政の特徴としてどうしてもスルーされがち。
また秋吉台科学博物館に関しては、昔米軍の爆撃演習場を学術関係者や住民運動で跳ね返した中で作られた歴史がある。秋吉台にある意義を理解しているし難しさもわかる。
ただ多くの施設は研究を続けていたり資料を管理しているが、人通りがあるわけではない場所にあり、来客がない施設となっている。秋芳洞商店街に構えることは利益が大きいと考える。
【地理的問題】
よく秋芳洞地域の開発案などが出たとき、別の道をつけることや、未開発エリアを開発する案が出る。土地の活用目的や状況を知らない人たちがそのような案を出すが、大きなリスクがある。広谷地域は秋芳洞商店街が一番高く、大雨の時には商店街の両側が山まで一面湖状態になる。秋芳洞周辺にある《親水公園》は年に2~3日は水没する《浸水公園》だ。これがわかっているのにそのような提案は定期的に出てくる。河川の整備で氾濫しないように対策は必須だが、近年ゲリラ豪雨や線状降水帯などといった言葉を頻繁に耳にする。〇〇年に一度の大水害は毎年のことになり、甘く見ていては大事故につながる。今回のヒアリングもせとうちDMOの方たちが中心に行っていたため、知らずに現実的ではない計画に行かないよう、重々この状況は伝えてある。
【まとめ】
と、このような内容をヒアリングでお話ししたし、その数日前に市職員とも話をした。今回はたまたま近い間隔でこのような話題が出たこともあり、自分の中での考えがある程度まとまったことでヒアリングでもしっかりと意見を伝えることができた。
今回の話には出ていなかったが、秋吉台道路の有料化、秋吉台観光祭花火大会の継続問題他、問題はまだまだある。おいおい、まとまったタイミングで文章にしていこうかと考えている。
※記事と関係ないが、写真はウバーレフォトクラブにも加入されている岡本英明さんからの提供