第三十三話 山水に遊ぶ その三 飴色の竹竿
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小学生の頃、真一は父親が勤める工場の郊外移転に伴って、一度転校を経験している。低学年の頃まで、わりと都会のほうに住んでいたのだが、四年生に上がる直前に引っ越した先は、都会と田舎の境目に当たる新興の団地だった。切り開かれた山の上に、当時としては先進的な街並みが広がっていた一方、山の麓には、昔ながらの素朴な田園風景が残されていた。山の森もほぼ手つかずの状態で残り、谷戸の畦道から見上げた緑の合間に、四角い住棟の上階部分が規則正しく並んでいた様子を、今で