【水平思考ミステリー】生意気な後輩
こんにちは。くどうよしなにです。
今回は、水平思考ミステリーの記念すべき第一回をお送りします。お楽しみください。
水平思考ミステリーって何?という方は、以下の記事を参考にしてください。
導入
酒井平太。あいつは本当に生意気なやつだ。
いつも斜に構え、俺の注意を全く聞かないあの態度にイライラする。
この前だって、「了解」って言葉は自分と対等か目下の人間に使う言葉だから、上司の俺には「承知」って言葉を使えって言ったのに、
あいつは聞く耳持たず、いまだに「了解」を使いやがる。
有名大学を卒業したあいつからしたら、三流大学を出てる俺なんか、格下の人間なのかもしれない。
いつかはこの上下関係だって崩れるのかもしれない。
それでも今はまだ、俺が上司なんだ。あいつは俺の言うことを聞くべきなんだ。
そんな俺の考えとは裏腹に、あいつはこの前、取引先にこんなメールを送りやがった。
やはり俺の忠告は聞かず、あいつはいまだに了解を使ってやがる。
でも、ツキは俺の方にあるみたいだ。
俺がそう確信したのは、メールのCCに大下部長が含まれているのを見たからだ。
大下部長は、3年前まで大手出版社の校正部にいた方だし、日本語の使い方にはとても厳しい。
さらに言えば、大下部長は部下を公開説教する人だ。俺は何度もそれを喰らってきた。何度も辱めを受けてきた。
いや、今はそんなことどうでも良い。俺はようやく、酒井が人前で怒られる姿を見られるんだ。
それを想像すると、愉快でたまらない。
あのメールの翌日、酒井は大下部長から呼び出しを受けた。
お叱りの時間だ!
俺は仕事をほっぽらかして、部長と酒井に注目した。ただ、そこで起こったのは、俺の想像とは全く違うものだった。
大下部長は酒井に封筒を手渡し、酒井を追い払うかのように手で払った。
酒井は封筒を一瞥し、その場を去った。
背中を向ける酒井に向かって、部長は言った。
「もう二度と、うちと関わるな」
それは、強烈な怒りを押し殺して振り絞った、厳格な声だった。
後で他のやつから聞いた話によると、酒井は懲戒処分を受けたらしい。
何もそこまでしなくてもいいのに。
俺は初めて、あいつを不憫に思った。
問題
酒井はどうしてクビになったのだろう。
これより下に、答えがあります。今一度、下の記事をお読みになってからお楽しみください。
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答え
酒井平太はどうしてクビになったのか。
それはもちろん、上司の言いつけを守らずに「了解」を使い続けていたから。
まぁ、そんなわけはないです。
むしろ「了解」「承知」の使い分けとして、目上だとか目下だとかは関係ないのです。
了解と承知には、以上のような違いがありますが、ストーリー中のメールにおいては、どちらを用いたとしても間違いではないと考えられます。
では、どうして酒井平太はクビになったのでしょうか。
その肝は、やはりメールにあります。
メールアドレスの奇妙さに気がついた方は多いのではないでしょうか。
kunukiwagoyawaewatsuyonoo@jmail.com
意味のわからない文字の羅列には、違和感を感じます。
これをひらがなに起こしてみると、
"くぬきわごやわえわつよのお"
全くもって意味がわかりません。
そこでヒントになるのが、メール中の「2日後、メールにてよろしくお願いします」という言葉。
"2日後"、そして"メール"。そこでひらめくのは、
このメールアドレスは、暗号なのではないか。ということ。
みなさんは、シーザー暗号をご存知でしょうか。
ズバリ、このメールアドレスは、シーザー暗号なのです!
そして2日後というヒント。このヒントに照らし合わせて、"くぬきわごやわえわつよのお"の文字列を五十音の2つ前にずらしていくと、、、
”このけんじゆんかんとりひき"→”この件、循環取引”
につながります。
つまり酒井は、暗号化した文字列をメールアドレスに忍ばせることで、取引先と循環取引を共謀していたのです。
それが大下部長にバレたことにより、酒井は懲戒免職となったのです。
あとがき
いかがでしたでしょうか。お楽しみいただけたのであれば幸いです。
これからも不定期に投稿する予定なので、気長にお待ちください。
それではまた。お元気で。
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