短編小説「子供の私が守りたかったもの」
朝からウキウキしている。
そう、今日は待ちに待ったレコードの発売日。
同時にそれを買うことに命をかけている
絶対に買っているところを誰にも見られてはいけないのである。
そのため、朝イチでOpenと同時に店に行かなければならない。
大丈夫だ、並ぶ所はちゃんとチェックしている
店に入るなりさっと持ってさっとレジに持って行く
その間5秒
この時間帯が勝負
よし、ドキドキ、胸を弾ませながら店へ向かう。
あった〜見つけた〜
踊る心を落ち着かせながらレジへ向かう。
ふぅ〜とひとまず安堵
お金を払いレジ前にて待つ
ここで計算違い、店員さんの動きがノロい。
レコードを置いたまま後ろを向いてごそごそ袋を探している
早く、早く、そのパッケージを紙の袋で隠して
今日に限って、なぜかスローモーションに見える。
大変だ、こんなところを同じクラスの今井君にでも、見つかったりたら
今井君は近所に住んでいて、よくこのレコード屋に出入りしている
見つかってしまったら
「○○ちゃんが聖闘士星矢のレコード買ってたよ」
あっという間にクラス中に広まってしまう
女の子らしさのイメージを自負している私としては、何がなんでも見られてはいけない
でも大丈夫
いざと言うときの言い訳まで用意してある
「うん、ちょっとお兄ちゃんに頼まれたの、これって面白いの?」
セリフ回しまで練習してきた
念には念を。
ようやく袋に包まれ手渡され
ミッション達成。
家に帰り、充足感に満たされる
オープニングテーマとエンディングテーマ以外は
アニメの曲だという事は分からない
無心に聞き入っていると
母「あら、いい曲聴いてるわね」
おわり