バグダッドのボディーカウントは風の中

今回はandymoriの名盤「ファンファーレと熱狂」に収録されているバグダッドのボディーカウントという楽曲について考察していきたいと思います。

この曲は軽快なリズムで楽しげに進行していくので、歌詞の複雑さに気づきにくいですが、かなり過激な歌詞になっています。そしてカタカナ言葉や地名の入れ方が小山田壮平さんらしさ全開で味わい深い楽曲になっています。

それでは解説していきます。
"バグダッドのボディーカウントは風の中"と歌が始まりますが、そもそもタイトルでもあるバグダッドのボディーカウントとは何なんでしょうか。これは、NGOの活動である「イラク-ボディーカウント」というものに由来していると考えられます。この活動は、2003年に始まったイラク戦争の犠牲者の数を算出するという活動です。なので、バグダッドのボディーカウントとはイラク戦争で死んだバグダッド(イラクの首都)の人々(またはイラク全体での死者)のことを指していると思われます。つぎの"風の中"ですが、風の中というフレーズはLife Is Partyという楽曲でも登場しています。その曲と同じような意味で使っているのなら単に空気、空間、世界のようなニュアンスで使っていると思われます。まとめると、"イラク戦争での死者たちは今も自分達と同じ空間にいる"というような意味でしょうか。

次に"みどりいろのあの日の風の中"です。緑色の風は、前回解説したメアリージェーンのなかでは、ラリった時に見た幻想のものとして登場しましたが、今回はマリファナをヤってるわけではないので違う意味でしょう。それでは次の写真を見ていただきたいです。

(湾岸戦争のバグダッド空爆の写真)

これはイラク戦争の約10年前に始まった湾岸戦争において、アメリカがおこなったバグダッド空爆の写真です。爆撃は夜間に実行されたため、当時の写真や映像のほとんどがこのような特殊なカメラで撮影されたものになっており、爆発の火花は緑色に写っています。これを壮平さんは"みどりいろのあの日(イラク戦争の約10年前)"と呼んだと考えられます。ここでも"風の中"とあるので、これも"バグダッド爆撃の時の空気は今も風になって吹いている"という意味になるでしょう。

次に"いつか吸い込んだ埃舞う風に中"です。これは良く分かりませんでしたが、戦争や爆撃の話が続く中での歌詞なので、おそらく爆発によって舞った砂埃は風になって今も吹いているということでしょうか。難しいです。

ここでサビに入ります。先に言うと、サビの歌詞はこれまでと一変してアメリカ側の話になっています。
"国旗に包まれたラブリーブラザー"ですが、前提として壮平さんは"兄弟"という言葉を一般に使われる血のつながった兄弟を意味するものとしてあまり使いません。「愛してやまない音楽を」や「兄弟」という楽曲でも"同胞"というような意味で使っています。したがってここでの"ブラザー"というのもそうでしょう。"国旗に包まれた"とは一見よく分からないですが、戦争において国旗を包むものといえば、遺体です。戦時中、アメリカでは身元の確認が済んだ遺体は棺桶に入れられ、上から国旗をかぶせられました。つまり"戦死してしまった愛する同胞よ"という意味だと考えられます。

"国歌とソウルシンガーとファンファーレ"は壮平さんらしい名詞の連続です。これらは3つとも、アメリカの勝利を象徴しています。国歌はやはりナショナリズムを想起させますし、ソウルシンガーもアメリカ文化の象徴ともいえますし、ファンファーレも祝いのイメージがあります。実際のイラク戦争も、開戦から20日で首都のバグダッドは陥落し、翌月にはアメリカのブッシュ大統領が勝利宣言を出しました。

"踊ろう夜明けまで  God Bless America"は、なんというか、壮平さんの皮肉のようなものを感じます。世論的にもイラク戦争はアメリカが批判の的になりましたが、壮平さんも同じ気持ちなのかなという感じです。"踊ろう夜明けまで"は完全に勝利を祝っている様子であり、"God Bless America"はアメリカ第二の国歌とも呼ばれるアメリカの愛国歌のタイトルです。訳すと"神はアメリカを祝福している"になります。壮平さんが本気でアメリカを讃えていることはあり得ないですし、前半の歌詞でアメリカのおこなった空爆を主題にしているので、正義の歪んだアメリカを皮肉って歌っている部分だと考えられます。

"サガルマータ シェルパの背中押した"ですが、ここからは本当に訳が分かりません。サガルマータとはエベレスト山のことでシェルパとはそのエベレスト周辺に住む少数民族のことで、登山の案内などをやっているようです。そんなシェルパの背中を押すとは、どういうことなんでしょうか。

"渋谷道玄坂風俗の扉押した"も訳が分かりません。先程のサガルマータ シェルパと対比されている歌詞構造なのは確認できますが、なぜ風俗の扉を押したのでしょうか。


---まとめ---
最後の部分がほんとうに分かりませんでしたm(__)mですがモンゴロイドブルースと同様に軽快なリズムで過激な歌詞を歌うこの曲のおもしろさが伝わったでしょうか。もしそうなら幸いです。最後の部分に何か解釈がある方がいらっしゃったら是非コメントで教えてください!

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