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応急処置




中性脂肪満タンに
搭載した俺の体を
浴槽に浮かべるなんかみじめ

無防備になると決まって這い出してくる
いまさらどうしようもない思い出とか不快な記憶とか
なんなのそれの実体
いまから三つ数えるから速やかに消えろ

わたしの肉声
あちこちにぶつかりながらはねて反響し
それにつられて近所の犬が吼えるし
大丈夫 こういう時は右腕を噛めばいいんだった
そうだそうだ
歯型がくっきりと付くまで
ぎりぎり

わたしたちは誰かとなにかと
うろたえる間もなく
どうしょうもなく
また関わってしまうから
いつかの痛みも忘れて

いけよおまえ
なんか苦手

わたしの哀しみはグラムでいくらなの
いつもまで経っても哀しい人と
いつまで経っても哀しくならない人は
どっちが哀しいの
哀しむのを諦めた人と哀しむ事しかできない人は
どっちが哀しいのそれよりお金がもうないの
愛も意気地ももう持ち合わせがないの
冷蔵庫には焼肉のたれしか入ってないの
語尾に「の」をいっぱい付けるとどうしてこんなに女々しいの
結果むなしく
なまぬるく
ふやけた指と

こんがらがった五十音でできた浴室と
まきびしみたいに洗い場にまかれた無数のしらばっくれと
いつまでこんなことやってるのって女の耳打ちと
いつまでもやるんだよバカヤローってバツの悪い舌打ちと
揮発性の高い言語と朝刊が来るまでには
到底でるはずのない結論と
えげつない量の失敗作と
ずっととまらないえずき
応急処置として
駄作を
丸めて丸めてぎゅーってして
口の中に詰める
できるだけいっぱい

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