![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/103661747/rectangle_large_type_2_804f3c34c9dad6533dc62a3693e0c172.png?width=1200)
Photo by
memofleet
応急処置
中性脂肪満タンに
搭載した俺の体を
浴槽に浮かべるなんかみじめ
無防備になると決まって這い出してくる
いまさらどうしようもない思い出とか不快な記憶とか
なんなのそれの実体
いまから三つ数えるから速やかに消えろ
わたしの肉声
あちこちにぶつかりながらはねて反響し
それにつられて近所の犬が吼えるし
大丈夫 こういう時は右腕を噛めばいいんだった
そうだそうだ
歯型がくっきりと付くまで
ぎりぎり
わたしたちは誰かとなにかと
うろたえる間もなく
どうしょうもなく
また関わってしまうから
いつかの痛みも忘れて
いけよおまえ
なんか苦手
わたしの哀しみはグラムでいくらなの
いつもまで経っても哀しい人と
いつまで経っても哀しくならない人は
どっちが哀しいの
哀しむのを諦めた人と哀しむ事しかできない人は
どっちが哀しいのそれよりお金がもうないの
愛も意気地ももう持ち合わせがないの
冷蔵庫には焼肉のたれしか入ってないの
語尾に「の」をいっぱい付けるとどうしてこんなに女々しいの
結果むなしく
なまぬるく
ふやけた指と
こんがらがった五十音でできた浴室と
まきびしみたいに洗い場にまかれた無数のしらばっくれと
いつまでこんなことやってるのって女の耳打ちと
いつまでもやるんだよバカヤローってバツの悪い舌打ちと
揮発性の高い言語と朝刊が来るまでには
到底でるはずのない結論と
えげつない量の失敗作と
ずっととまらないえずき
応急処置として
駄作を
丸めて丸めてぎゅーってして
口の中に詰める
できるだけいっぱい