通勤時の挫折

前置きが長かった前回の記事ですが、一番何を書きたかったというと、この前に自分は通勤時に大きな挫折を味わったのです。

戦争でありながらも、暗黙の了解というルールがある以上、それを破られることはないと過信をしておりました。否、今まで破られたことはなかったのです。

ある朝、いつものように電車にのり、運良くベストポジション(座席の前)につくことができました。
あとは座席に座っている人が立ち上がれば、私の勝利でした。
ベストポジションを取ってから一駅ほど過ぎたときに、ある女性が私の真横に立ちました。
真横に立つのにたいしては何も問題はないのですが、その女性は明らかに私との距離が異常に近いのです。ソーシャルディスタンスなどなんのその。
しかし、私はその時、その事に関してとくに何も警戒はしていませんでした。何せ既に私はベストポジションを取っている。何をしようと最短で席に座れる私を追い抜いて座わることはできないし、何より暗黙の了解のルールがある以上、私が、所有している目の前の席に座る権利を奪うことはできないと、そう思っていました。

運命の時、私の前に座っていた方が立ち上がりました。私はその方を通すために横にずれました。それはマナーなので。そして席が空いたので座ろうとした瞬間、件の女性が動きました。
女性は私に背中を向けながら、私を横に吹っ飛ばしました。そして何食わぬ顔で私の席を奪い去ったのです。私はあまりの出来事に呆気をとられました。
しばらくは呆然としましたが、徐々に怒りが沸いてきましたので、文句を言おうとしたのですが、私から席を奪った女性は、私に目を合わせることなく、虚無の空間に目を鋭く向けていました。じっと、何もない空間を睨み付けていました。その異様な雰囲気に私は圧されてしまい、何も言えずただ情けなくスマホを見つめるしかなかったのです。

当たり前のように存在するものが壊されたときの衝撃というものは非常に大きいです。私は自分の考えを強制的に改めることになりました。
当たり前は簡単に崩される。
精神的にも身体的にもその日は大きな挫折をあじわいました。
その日を「最も自分の人生のなかで一番情けない日」と名付け、戒めることにしました。

いつか彼女にリベンジマッチを果たすまでこの日が忘れ去れることはないでしょう。
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