43歳一独身公務員の旅行記(東京編)③「ハイバイ『て』 観劇記」
2024年12月26日。僕は東京に向かっていた・・。
目的はお芝居を観るためだ!
かつて僕は東京で役者をしていた。百貨店でアルバイトをして生活費を捻出しながらオーディションを受け続ける生活だった。当時はお金もないし、オーディションには滑りまくるし、謎の宗教団体から勧誘されるし、彼女など当然いる訳もないし、ここでは書けないようなこともたくさんあった。
(第40回太宰治賞に応募した「ムサコに死す」に書いた)
しかし今思えば、あの時代はまさに青春だったよなあ・・・とシンミリ思うのだ。
公務員になった今、時々あの時代が途轍もなく懐かしくなる。
それで、時々フッと・・・東京にお芝居を観に行くのだ。それはきっと大阪でも、神戸でも、京都でもなくて、東京でなくては・・ならないのだった。
今回は、旅行記ではあるが、観たお芝居の感想を書こうと思う。
舞台は・・
ハイバイのお芝居を観るのは3回目。何年か前、伊丹アイホール(現在は無くなった)で「ヒッキーカンクーントルネード」「ヒッキーソトニデテミターヨ」を観て以来だ。
ハイバイを観るのには、理由がある。
それは・・僕の「推し」が出演しているからだ。
僕は彼のファンで、かれこれもう十七年、追いかけてる。
劇は、山田家の祖母の葬式の場面から始まる。
父親の家庭内暴力により、4人兄弟はバラバラに暮らしていたが、祖母の認知症をきっかけに、4人兄弟と父母が集まる。しかし酒に酔った父の発言から、山田家は再び混乱に陥っていく・・・。
前半は次男次郎(田村健太郎)の視点で、後半は母通子(小松和重)の視点で、山田家が集まった日の同じ出来事が表されている。前半で謎だった事が後半で紐解かれていく・・という演出だ。正直僕は観劇中その演出をハッキリと理解できず、理解できない自分に少し悶々とした。
が、その悶々を吹き飛ばす程に、俳優の演技に引き込まれた!
宴会中、父(後藤剛範)の過去に何もなかったかのような発言に我慢できず、激昂してしまう次郎。
「理不尽に!理不尽に殴られたら、まっすぐ育つものも育たないんだよ!」
「俺はっ・・・お前たちに理不尽に手をあげたことはっ・・・ ないっ・・・愛なんだよっ!」
「あんたの!!あんたのせいでさあ!!」
「だからこの人に何言っても無駄なんだって・・・」
熱を帯びた役者のそのセリフが、その動きが、その存在が胸に響く。
心閉ざした雰囲気の長男と、言わずにはいられない次男との対称的なキャラクター設定も、噛み合わなさが切なくて、良かった。激昂した後、頭を掻きむしり泣き崩れる次男の姿から、彼がいかにバラバラになった家族の再生を期待していたのかが・・・ひしと伝わった。それなのに、どこかコミカルにうつるのだから不思議だ。
次男役の田村健太郎さんの演技が、好きだ。
演じている感がなく、役そのものとして存在しているように見える。ともかくリアルだ。
演技は極めてリアルで自然だ。なのにもの凄く一生懸命に生きている、足掻いていることが痛いくらいに伝わってくる。血が通っている。そういう役柄が多い、ということなのかもしれない。けど、田村さんの真摯な人間性が演技に表れている気がしてならない。
カーテンコール。舞台にはやや斜めに棺が立たされている。不穏だ。
鋭い目をした田村さんは、客席を見渡すと、深く礼をして、一直線に舞台からはけていった・・・。
われるような拍手。「うーむ・・・」僕は唸った。
僕は劇場からでたのであった・・。凄いものを見ちまったなあ・・・うーむ・・。
田村さんはこれからも役者を続けるのだろう・・・。もの凄いスピードで、いつか倒れるその時まで、緩めることなく走り続けるのだろう。ならばこちらも追いかけ続けるよ・・・!!!
劇場近くの中華料理屋で卵チャーハンを食べ、安宿のある蒲田に向かう‼️
ぜひ、ハイバイ「て」観ていただきたい・・・。
地方公演がまだあるようです!
おしまい