
向き癖とあたまの変形とは
新生児〜月齢の低い赤ちゃんは1日のほとんどを”寝て”過ごします。この”寝て”というのは”眠って”を指すこともありますが、この場合は”横になって”が当てはまります。
向き癖は目覚めている(横になっている)ときにできるものなので、寝ている(眠っている)ときだけ注意すれば良いわけではありません。
癖というものは、そちらのほうが心地よいと感じて繰り返し繰り返し行った結果です。そうしておかないといけない理由が赤ちゃんにはあるのです。
向き癖と股関節脱臼についての内容は過去に詳しく書いていました。
この中でも、赤ちゃんには見える世界の範囲があって、そこで動いているものを見ようとしていると書いてあります。
右向きで寝ていることの多い赤ちゃんはもちろん右手しか見えません。抱っこで起こされたとしても右脚しか見えません。左は動いていても確認ができないので知らんぷり。徐々に注意は右側のみに移ってきます。
赤ちゃんは動くものに対して「何だろう」と注意を向けます。そしてそれが自分の動きだと気付くとさらに動かします。視界の端っこで何か動くものが見えるとそれを見ようと動きます。
まずは視線から、そして首が動くのが普通です。そのときに頭を持ち上げる動きがしやすくなっていれば首が動きますし、すでに向き癖がついてしまい、頭の形が変形してしまっているとなかなか首が回せません。
そんなときに有効なのが『首枕』です。
首枕の有効性
柔らかい布(おくるみなど)をくるくると丸めて首と肩の下に入れてあげます。頭を少し浮かせるのができ、回旋が楽になるので左右が向きやすくなります。
正面からのぞき込んであげると真正面を向きます。これは首枕なしではなかなか小さい赤ちゃんはできません。
赤ちゃん用のドーナツ枕もありますが、こちらはまったくオススメしません。頭を正しい位置で支える力が無く、結局枕の上に横向きになってしまいます。
体(この場合は肩周り)を安定させるための使用もできます。この辺は昨日の記事の中にも書いてあります。
さて、この首枕。いつまで使ったら良いのでしょうか。
それは自分で頭を動かすまでです。頭を持ち上げて他の場所に移動したり、寝返りを始めたらもう頭を置いてくれません。追いかけて乗せたり、動けなくさせるわけにもいかないのでそこで終了です。だいたい4-5ヵ月ごろでしょうか。
目が覚めている間は寝かせたままではなく、抱っこしたり、うつ伏せにしたり、いろいろな姿勢で遊んで頭を動かす機会をつくってあげると良いです。
頭の形が変形する
最後に向き癖の最大の問題。あたまの変形についてです。
これには斜頭、長頭、短頭症という3つのタイプがあります。斜頭は頭の一方が平らになって形がゆがんでしまった状態。長頭は両側が平らになった状態。単頭は後ろが平らになったいわゆる”ぜっぺき”というやつですね。
自分も左が潰れています。一度MRIを見たことがありますが、ものすごい変な形でした。ちなみに脳も少しゆがんでいました。
比較的早期に向き癖の存在に気付いて、枕を当ててあげると改善します。それでも自然に軽快する目安は2ヵ月くらいかと思います。
矯正用のヘルメットなんかもありますが、行っている施設が限られていたり、費用が自費だったりします。
早めに気付いて育児の仕方を変えることで対応可能かも。
気になったら相談をしてみてください。
中川将吾
小児整形外科専門ドクター