あたまのかたちを守るために〜出産を控えた妊婦さんにこそ知って欲しいこと〜
みなさんこんばんは。
つくば公園前ファミリークリニック院長の中川です。
今日は、これまでヘルメット治療を2年半行ってきて、「あたまのかたちってやっぱり予防だなー」と思ったので、予防の大切さについてあらためて考えてみたいと思います。
つくば公園前ファミリークリニックを開院してからこの2年半、実に200例以上のあたまのかたちの治療を行ってきました。都内の専門クリニックなどには数の上で劣りますが、1人でやっている割にはかなりの症例が集まってきています。あたまのかたちの異常がないかどうかの診察のみで、ヘルメット治療にまですすまない例を数えるとこの4倍ほどです(経験上、4人に1人が治療にすすみます)。
あたまのかたちの治療に関しては頭蓋縫合早期癒合の診断や治療などもできる小児脳神経外科の先生の方が良いのかも知れません。でも最近では、小児科や形成外科の先生も治療に参加しています。
たくさんの経験を通して、その予防に関しては運動発達を知っている小児整形外科ドクターを差し置いて右に出る者はいないと自負しております。
今日はそんなお話をみなさんにご紹介します。
ヘルメットについて
ヘルメット治療とは、生後間もない赤ちゃんの向きぐせなどによる頭のかたちの変形に対して、ヘルメットを装着することで頭の形状を改善させる治療法です。
ヘルメットの種類と価格
まずは頭蓋矯正ヘルメットの種類と価格について、三種類の商品を紹介します。ここ数年でそれぞれのヘルメットについて新製品が登場し、3Dプリンタを使用したオーダーメイド設計、軽量化や通気性の改善など、どれも似たようなつくりになってきたという印象です。 (自費診療となりますので、詳しくはそれぞれの医療施設にお問合せください)
クルム(ジャパンメディカルカンパニー)
特徴:日本初の日本製ヘルメットで、症例が豊富。定期調整により、成長に合わせた最適なサポートが可能。水洗い可能。
治療価格:40-60万円
カラー:三種類(ホワイト、ピンク、ブルー)
スターバンド3D(AHS JAPAN)
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特徴:前後に2分割し、装着が容易。寝ながらでも装着可能。定期調整で、成長に合わせたサポートが可能。
治療価格:
カラー:一種類(グレー)
・ベビーバンド3(Berry)
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特徴:デザインが豊富。水洗い可能。アプリで治療効果を確認可能。導入医療機関数が最多。
治療価格:30-40万円
カラー:13種類
ヘルメットの効果
ヘルメットをかぶることで頭の凹んでいる部分に圧のかからない空間を作り、赤ちゃんの成長に合わせてその部分が膨らみ、丸みを帯びるよう成長をコントロールしています。ヘルメットは、一人ひとりの頭の形状に合せてオーダーメイドで設計されており、1日23時間、2〜6ヶ月前後にわたって装着をおこないます。
生後4-6ヵ月に開始することで、その効果は高くなり、ほぼ正常域にまで改善されることが多いです。それ以降の場合であっても、程度によっては左右の対称性が改善されたり、後方の丸みができてきたりします。
変形の原因
向きぐせ
向きぐせという用語は聞いたことがあるけど、その原因はよくわからない
といった声を聞くことがよくあります。
『向きぐせ』と聞いて、真っ先に思い当たるのはドーナツ枕と呼ばれる中央がくぼんでいたり、穴が開いている新生児用の枕です。治療用に使われていたりしますが、これは効果の有り無しがかなり分かれます。
赤ちゃんのあたまはそれこそ千差万別。長かったり丸かったり、大きさも形も様々。それに合う枕を見つけるのは容易ではありません。合わない場合は効果が無いばかりか、あたまがはまったまま動けなくなってしまい、逆に変形を強めてしまう可能性も考えられます。
向きぐせの原因も様々です。癖というのは頚部周囲筋の伸張反射による調整のことだと考えられます。つまり、常にそちらを向いているので筋肉の長さに左右差ができてしまっているため、動かしても戻ってしまうことです。
向きぐせが長く続いていると、その影響が背中や骨盤位も及んでしまいます。体全体が捻れてしまっていると、頭だけをいくら戻してもすぐに向きが戻ってしまいます。
頭蓋縫合早期癒合症
頭蓋骨は7つの骨でできていると言われています。新生児〜乳児期の間は骨同士が完全に離れており、縫合と呼ばれる線維性組織で結合されています。
頭蓋骨縫合早期癒合症という病気は、この縫合が本来癒合するよりも早く骨性に癒合してしまうことで、それによって骨の正常な成長が阻害され、あたまのかたちが歪んでしまう病気です。
治療法としては、脳神経外科的な手術が必要となるケースがあります。
当院では頭蓋縫合早期癒合症を疑った場合、専門医による診断が必要となるため筑波大学附属病院の小児脳神経外科医に紹介しています。
予防方法
さて、いよいよ予防の話です。
運動発達との関係性
あたまが一方方向に向いているのはそもそもおかしいですよね。ここをどのくらい異常かと捉えること。自由に動いて運動感覚を育てていくことがそもそもの運動発達の基本なのです。
赤ちゃんはお母さんのお腹の中で頭を自由に動かすことがあまりできません。長い手足をバタバタと動かしていますが、頭は出産時にお母さんの骨盤に固定されて動きません。その代わり、頭はとても大切な臓器であり、身体のどのパーツよりも成長が早いため、相対的に赤ちゃんは頭でっかちで産まれてきます。
お腹の中で、おおきな頭は行き場がなく、片方によって変形してしまうコトがあります。他にも出産で産道を通る際、頭の骨がゆがむコトにつながってきます。赤ちゃんの頭が変形し、ゆがんでしまっていれば、動かしにくい頭はそのまま行きやすい方向に傾いてしまい、戻す事ができません。その状態が長く続くと、筋や関節の内部感覚ができあがってしまい、曲がった状態が当たり前になります。”まっすぐ”というのが異常な位置として捉えてしまうのです。
産まれた瞬間から正しい位置にキープすることを目標にし、自由な動きを妨げないこと。この考えが重要であり、これは股関節に対する考え方と同じです。
新生児期はどうしてもベッドに寝かせてしまいがちですが、産後にしっかり抱っこをして過ごす時間が確保できれば、身体も頭も大きくゆがむことがないと考えられます。
背骨のまがり
さて、最後にもう一つ。向きぐせがなかなか治らない原因の一つとして考えられる背骨の曲がりについて解説します。
ここで言う背骨とは、首に繋がる部分の骨のことです。
みなさん、ためしに背骨を左右どちらかに曲げてみて下さい。もし左に曲げた場合は右向きになりやすく、右に曲げた場合は左に向きやすいということがわかると思います。
そうです。頭だけ戻してもすぐにまた向きぐせが出てしまうのは背骨のまがりが治っていないからなのです。
背骨のまがりを治すためにはタミータイムと呼ばれる、赤ちゃんが起きている時に、大人が見守っているなかで、うつ伏せにして過ごさせることが推奨されます。
自分の力で背骨を動きやすくする姿勢であり、親御さんたちにとっても、背中を触ってあげやすくなります。
ぜひ優しく背中をなでてあげてください。気持ちよさそうにクネクネと身体を動かしていれば、偏ったまがりも治りやすくなります。
まとめ
読んで頂いてありがとうございます。
今回の記事では、出産前の妊婦さんに見て欲しい、あたまのかたちの変形を予防するための知識について記載しました。
要点は以下の通りです。
ヘルメット治療はあるけど、価格については一度知っておく必要がある
変形は大きく2つ。向きぐせと頭蓋縫合早期癒合症
向きぐせは早めの対応が必要
背骨まで含めた運動発達のためにも抱っこを積極的にする
もし、今回の記事でわからないこと。もっと知りたいことがあれば、われわれにお任せください。
ではまた!
つくば公園前ファミリークリニック
中川将吾