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なぜ装具の間違った処方が起こってしまうのかについて考えてみた。

みなさまこんばんは。
つくば公園前ファミリークリニック(ファミリハつくば)という整形外科クリニックの院長をしています中川将吾です。

自分は小児整形外科医として、日常的にこども(障害の有無にかかわらず)たちの足の問題をかなりよく診ているドクターの1人です。

知っている人、知らない人もいるかと思いますが、病院で処方される装具。ありますよね。歩くために必要になってくるやつ。あれってドクターだけが処方できます。リハビリ担当の療法士さんが「装具をつけた方が良いのでは?」と言ってきたとしても、それだけでは処方ができません。ちゃんとドクターが診察し、その責任の下に処方がでます。

そんな装具ですが、少々問題があると感じています。

今日はそんな『合っていない装具』に関して考えてみようと思います。

装具処方のタイミング

病院で処方される装具。そこには大きく分けて2通りの出し方があります。

1.治療用の装具として
2.更生用の補装具として

これの違いわかりますか?1は病気に対して。2は障害に対して処方されます。

一般的な整形外科では病気の治療に対しての装具を処方しているので、2の場合について理解していないことも多いと思います。

ですが、これらは使用する保険制度がまったく異なり、必要な書類も違います。初めの頃は自分もよく分かっていなかったのを今でも覚えています。だってだれも教えてくれないですからね。

1.治療用の装具として

まずはこちらから。
病気やケガの際に、体の痛みを和らげたり、回復に向かわせたり、運動機能を補ったり、訓練の為に使用します。医療保険を利用してその費用がまかなわれます。基本的に一次的な使用に限られ、病気が治った段階で終了になります。

治療用という名の他に訓練用の装具とも呼ばれます。使い続けることで、病気やケガで損なった機能を取り戻すことができます。

こちらももちろん機能が元通りになれば必要なくなるはずです。
小児の運動機能の場合はどうでしょう??

小児の場合、運動発達は基本的にずっと続きます。そして体の発達も続きます。その時々で必要な装具は変わってくるし、運動や体の発達に合わせて変えていかなければどこかでミスマッチが起こります。

2.更生用の補装具として

対して、更生用というのは、障害を持った方(児)が、一般社会の中で平穏無事に過ごすために処方されます。基本的に固定された障害に対して使用するもので、処方されたらずっと同じ使い方をすることが見込まれます。

※車椅子などに関してはこの限りではありません

更生用補装具は障害者手帳を元に、自治体から費用が支給されます。そのためには審査があり、余計な機能や華美な装飾などは認められないことが多いです。

装具変更のタイミング

では処方された装具がどのタイプかわかったところで本題です。
装具はその時々で適切なものを処方する必要があるんですよね。

例えば能力が上がったとき。

良くある使用方法として、体の衰えた機能を補って他の部分を鍛える。または回復するまで待つというタイプのものがあります。

他にもサイズが変わったとき。

手や足、体幹の太さや長さ、形などが変わってきます。イメージしやすいのは成長による違いですが、手術の前後で変わった場合にも変更や更新を行います。

合っていない装具の誕生する瞬間はここです。

間違いの起こるタイミング

変更とは少し勇気のいる行動です。

これまで使っていたものと違うものになる。この今までと違うというところにハードルが存在します。今の装具がいつ作られたものなか。どういった目的(能力)のために作られたものなのか。どうなったら次の装具(変更)なのか。ということを理解していなければそこで正解を選べません。

多くは以前のものをそのまま新しく作り直して処方がされているのが現状です。どちらかと言うと、治療用の装具と言うよりも更生用補装具の様な使われ方ですね。

担当医や担当療法士の変更なんてのもあります。複数のリハビリ施設を利用している場合、イニシアチブを誰がとるか分からなくなっており、昔のやり方が延々と続いている場合もあります。

ですが、先ほども述べたとおり、こどもたちはその間に成長しています。

装具があることが当たり前。なしでも行けるはずなのに使うために能力をセーブしてしまっている。そんなことがあるかもしれない。
それを頭の片隅に少しでも考えることができれば、おそらく装具のミスマッチはもっと減らせると思います。

成長できるタイミング

実際いまのクリニックでは,問題無く床から立って歩いているのに,ずっと装具をつけっぱなしで足趾がまったく動かない子がいます。外して数日練習すると装具なしでも立派に地面をつかみながら飛び跳ねて遊んでいます。

もし、綺麗に歩くためにその装具が処方されていたのであれば、長距離を歩く際には必要になるかもしれません。ですが、能力をセーブしてしまっていることは確実なので、その使い方をキチンと説明してあげる必要があります。

もし、形を整えるためにその装具が処方されていたのであれば、形を装具で整えて成功する例はほとんどありません。それはその他の筋バランスが崩れたままだからです。その形になるのにはおそらくそれなりの理由があります。そこまで理解して処方されていますか?もしかしたらそれは今すぐ手術をした方がADLアップにつながるかもしれません。

もし、家族の要求でその装具が処方されていたのであれば、そこは医療者としてメリットとデメリットをキチンと伝えてあげなければいけません。装具の処方がされる際に、メリットだけで、使い続けることで起こるデメリットをほとんど聞かされていません。

装具を処方されたこどものご家族の方は、ぜひ担当医に「なぜこれが必要なのか?」「どういった目的に使用するのか?」「どうなったら外れる(交換になる)のか?」を聞いてみてください。ハッキリと答えられるドクターであれば、自信を持ってついて行って良いと思います。

そしてそのときこそが、こどもの成長に対して親が出来る支援のタイミングなのです。

中川将吾
小児整形外科専門ドクター


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