「お金・相場」に関する幸福否定-チャートで世界の仕組みを考える 実践編1:アメリカ大統領選とワクチン開発

* 用語説明 *

幸福否定理論:心理療法家の笠原敏雄先生が提唱。心因性症状は、自らの幸福や進歩を否定するためにつくられるという説。娯楽は難なくできるのに、自らの成長を伴う勉強や創造活動に取り組もうとすると、眠気、他の事をやりたくなる、だるさ、その他心因性症状が出現して進歩を妨げる。このような仕組みが特定の人ではなく人類にあまねく存在するという。

抵抗:幸福否定理論で使う"抵抗"は通常の嫌な事に対する"抵抗"ではなく、許容範囲を超える幸福、自らの成長・進歩に対する抵抗という意味で使われている。

反応:抵抗に直面した時に出現する一過性の症状。例えば勉強しようとすると眠くなる、頭痛がする、など

相場:(本稿で扱う意味)
実物・現物・直物取引ではなく、市場における価格変動によって生じる差額で利益を得ようとする投機的取引。(goo国語辞典)

*指標としての反応の使い方の違いのまとめ*

・個人の抵抗が強い領域
個人としては自分の反応を追い、抵抗がなくなった部分を意識上で理解できた部分を形にしていく。

・専門家の抵抗が強い領域
(どの分野でも)ある程度、専門性がある人の集団においては、専門家の中で、不自然に避けられている部分の反応を探る。例えば、当然検証されるべき事が、専門家の著書や論文、インターネット上で全く見当たらない、など。この場合、該当部分を専門家を相手に話をすれば、反応(あくび、眠気など)が出る事が多い。

・専門家、一般人の分け隔てなく全体的に抵抗が強い領域
専門家、一般人の区別なく全体に抵抗があるように思われる事に関しては、個別の反応の調査の積み重ねでは限界があるため、並行して、本稿においての"お金を稼ぐために莫大な時間を使うにも関わらず、多くの人がお金とは何かを知らない”など、明らかにおかしい点を抽出しながら比較検証の精度を高めていく。

本連載では、お金・相場に関する幸福否定と思われる症状を扱っています。

トレード(売買)に関しても、思い通りに行動できないという反応がありますが、その前に相場チャート・値というデータを見るだけで反応が出る人が多いという問題があります。

今回の米大統領選、9日に発表されたファイザー社の新型コロナワクチン開発成功のニュース、その時の実際の相場の動き、また、私自身がどのように考えたか?を実践編として書いてみたいと思います。

米大統領選前

米大統領選前は、ここ半年のアフターコロナ銘柄、特にハイテク株が10月末のアップル、アマゾン、フェイスブック、アルファベット(グーグルの親会社)の決算発表が良好だったにも関わらず、大きく売られました。

報道では、“ハイテク株が過熱気味だった”、”決算に満足せず”という内容の記事が多かったのですが、私自身は懐疑的な見方をしていました。

要は大手のファンドによりつくられた相場と考えていたため、次の資金はどこへ行くのだろう?と考えていました。

米国株式市場もハイテク株の売りに引きずられながら、10月半ばから大きく売られ、10月13日から30日にかけて、約10%近く下げました。

この時は、

米大統領選はバイデン氏有利だが接戦になる。郵便投票でのバイデン氏の得票を、トランプ大統領が不正が起こるとし、裁判になり、最悪のシナリオとして大統領が決まらない可能性がある。

それによって市場が不安になっており、暴落もあるかもしれない。

という記事や意見が多かったように思います。

また、9月末からは、ドイツ銀行やJPモルガンチェースの不正が発覚したとの事で、既に既出で解決済みの出来事が記事になり、ヨーロッパの株式市場が大きく下落しました。

31日、11月1日が週末の休みを挟み、大統領選前の2日から相場は上昇に転じます。

この動きも、私は不自然に感じました。大統領選が終わってから相場が上がり始めるならわかるのですが、もっとも不安定な時に突然上昇に転じる動きに違和感を感じました。

米国大統領選 投票・開票当日

11月3日の米大統領選投票日、翌4日の開票日共に、バイデン氏有利、トランプ大統領逆転、などのニュースが入り、混迷を極めますが、株式市場は上げ続けます。

その後、同じようなペースで上げ続け、数日で10月半ばからの下げを取り戻す勢いで米国株式市場は上昇します。

米大統領選後-11月9日、先物市場

9日、先物市場(NY市場が開く前)に、株式市場は暴騰し、ダウ平均は6%以上上がり、一瞬ですが今年2月の史上最高値を抜いてしまいます。

アメリカのファイザー(製薬会社)の臨床試験で、新型コロナワクチンで9割超えの効果が出たというニュースが材料になったという報道が出ます。


米ファイザー、ワクチンの効果9割超に
ファイザーによると、独ビオンテックと共同開発中のワクチンの治験に参加した人を調べたところ、9割以上の対象者に予防の効果が生じたという。引き続き副作用が無いかなどの安全性を確認しており、データが集まり次第FDAに緊急使用許可の承認を申請する。
(引用:日経新聞 2020年11月9日)

NYダウ一時1600ドル高、初の3万ドル視野 ワクチン期待で
【ニューヨーク=宮本岳則】9日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均が大幅反発で始まり、上げ幅は一時1600ドルを超えた。2020年2月につけた最高値(2万9551ドル)付近で推移し、3万ドル台乗せを視野に入れる。

米ファイザーなどが新型コロナウイルス向けワクチンの治験結果を公表し、予想以上の効果が示された。景気回復が早まるとの期待から、投資家がリスク資産に資金を振り向けた。

米株市場は朝方から買い優勢で始まった。取引開始前にファイザーが治験結果を公表し、時間外で先物価格が急伸。現物株もその流れを引き継いだ。

米大統領選で民主党候補のバイデン前副大統領の勝利が確実となり、先行きの不透明感が晴れつつあることも、投資家にリスク選好を促した。特に景気に左右されやすい銘柄の上げが目立ち、石油メジャーのシェブロン株や娯楽大手ウォルト・ディズニー株の上昇率は10%を超えた。
(引用:日経新聞 2020年11月9日)

この時の米国のセクター別の株価の動きをチャートで見てみたいと思います。

ファイザーポイント

(出所:Investing.com)

まず、新型コロナワクチンの治験に成功したとの報道があった、ファイザーは先物で買われ、市場が開くと同時に大きく売られます。(チャートでは赤が上昇、緑が下落。青い矢印が11月9日。11月6日の終値から9日の始値までの空白が先物取引で動いた値幅)

このニュースに飛びついて、ファイザーの株を購入した個人投資家は含み損が出ているはずです。

セクター別チャートを見る

次に、セクターを見てみたいと思います。

QQQポイント

QQQ(ナスダック100指数連動ETF)。GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)で約45%強の割合を占めます。いわゆるアフターコロナ銘柄の代表的なETFです。

11月9日の終値は、11月6日を下回りました。

次に、最も安定している生活必需品セクターのチャートを見てみます。P&G、コカ・コーラ、ウォルマートなどの企業が組み入れられています。

XLPポイント

9日は先物取引で上昇しましたが、市場が開いた後に売られ、6日の値まで戻しています。

私は使っている証券会社でステートストリートグローバルアドバイザー社のセクター別の取引ができるため、同社のETFのチャートを見ています。

セクターは、

一般消費財(アマゾン、ホーム・デポ、ナイキ、マクドナルドなど)
生活必需品(P&G、ウォルマート、コカ・コーラなど)
エネルギー(シェブロン、エクソンモービルなど)
・金融(バークシャー・ハザウェイ、JPモルガンなど)
・ヘルスケア(J&J、ファイザーなど)
・資本財(鉄道、輸送、軍事など)
・素材(ガス、塗料、繊維、鉱物など)
・テクノロジー(アップル、マイクロソフト、VISAなど)
・公益事業(電力、ガスなど)

に分けられていますが、9日にセクター別にチャートを見たところ、金融セクターと、エネルギーセクターが大きく上昇していました。

金融セクター

XLFポイント

エネルギーセクター

エネルギーセクターポイント


私は、新型コロナワクチンの治験成功のニュースで、製薬会社の銘柄を集めたヘルスケアセクターが上昇したのかと思っていましたが、上昇したのは新型コロナウイルス流行後に大きく売られ、低迷していた金融とエネルギー(主に原油)セクターでした。

次に、国別チャートを見てみたいと思います。

国別チャート

まず、時価総額が世界の4割以上を占める、アメリカの株式市場を見てみたいと思います。先物取引を見るために、指数ではなく、S&P500指数連動型のETF(SPY)のチャートを見てみたいと思います。

アメリカポイント

9日の市場が開く前に大きく買われ、市場が開くと同時に売られています。

次に、EUを見てみます。

ドイツETFポイント

ドイツのETFは、情報技術、製造業の割合が高く、金融、エネルギーの割合が低いという特徴があります。

6日から9日にかけて上がっていますが、10月に大きく下げているので、元に戻ったという印象です。

次に、イギリスのチャートを見てみたいと思います。

イギリスポイント

イギリスは、金融とエネルギーの割合が非常に高く(2020年3月5日時点で、金融約20%弱、北海油田関連のエネルギー15%弱、情報技術約1%になります。既に新型コロナウイルスによる暴落が始まっていたので、2020年2月前は、金融、エネルギーの割合はより高くなります。)、新型コロナウイルス流行以降に株価が低迷しましたが、11月9日に大きく上昇しました。

次に、アジアのタイのチャートを見てみたいと思います。

タイポイント

タイのETFも金融が約40%弱、エネルギーが約15%強という構成になっており、9日に大きく買われました。

また、同じくエネルギーの割合が高いロシアも、9日に大きく買われています。

ポイントロシア


アメリカ、ドイツのチャートの新型コロナウイルス流行後のチャートが似ており、原油の割合が高いイギリス、タイ、ロシアのチャートが似ているのがわかると思います。

世界中の国々のETFのチャートを見てみましたが、やはり、金融、エネルギーセクターの比率が高い国の株式指数が上がっている(回復している)傾向があります。

尚、非常に重要な中国に関してですが、国有企業中心の指数と、国有企業の持ち株比率が低い指数で、組み入れ銘柄が全く違うので、分析が非常に難しいという点があります。時価総額が大きいMEITUAN DIANPINGという企業が入っているか、入っていないかだけで指数が変わってくるので、今回は分析の対象外としています。


新型コロナウイルス流行から米国大統領選までの見解

以下は、現段階での私自身がチャートを見て考えた見解となります。

新型コロナウイルス流行から投げ売り状態になっていた世界中の

・エネルギー企業(特に原油)
・不動産
・金融株

が、米国大統領選に世界中の注意が逸れている間に、大手の金融資本が先物市場(一般投資家が参加する市場が開く前)に買われている。

ワクチン開発で新型コロナウイルス流行の終焉の兆しが見えたから、原油、不動産、金融株を買い戻しているのではなく、大手の金融資本が、世界中の原油、不動産、金融を奪いに行っているのではないか?

と推測しています。

一般投資家が、ハイテク株やワクチン関連の株、米国株式市場への投資で湧いている中で、大手の金融資本は、

・ハイテク株、ワクチン関連の株は好材料で市場が開いたら売り
・一般投資家や国家、企業の運用の隙をついて原油、不動産、金融を購入

という動きをしているので、新型コロナウイルス流行の次に原油が暴騰するイベントが起こるのではないか?と懸念しています。

もちろん、チャートを見て、自分の考えで組み立てた推測に過ぎないので、外れる可能性も十分にあります。実際には、もう少し様子を見ないとわかりませんが、後出しでは意味がありません。

推測が外れたら、自分がまだ相場チャートから世界の流れを読めていないという事に過ぎません。

あくまで、相場チャート・値から世の中の流れを自分自身で考えるという一例として参考にしていただく事が目的になるので、時期尚早ながら、自分の見解を出したいと考えています。

心理療法的見解

これらの作業を進めていく過程で、私自身

・アレルギー症状
・寝つきが悪くなる
・酷い凝り
・頭痛

などの反応が出ました。

但し、反応は結果の目安ではなく、本質的な部分へ進んでいるという過程の目安になります。過程が中途半端であれば、結論が間違っているという事になるので、反応を追いかけるという視点でも参考にして頂ければと思います。





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