症状の「原因」には機械論と有機論の違いがある
病気や症状の「原因」といっても、人それぞれに捉え方、解釈の仕方が様々です。現代医療における急性症状おいて、原因は比較的単一的で、明確な答えがある場合が多いのですが、心療内科に訪れる様な患者さんは、心身相関の問題や自律神経系の問題など、原因が特定しにくい場合が多いかと思います。代替医療の分野においても、原因は「背骨の歪み」、「骨盤の歪み」、「気の滞り」など、様々な因果関係で辻褄を合わせようとする傾向があります。しかしながら、原因を深く追及すると、終わりのない原因になったりします。つまり、病気や症状を引き起こす原因には段階があり、どの段階の原因で施術をするかで、“対症療法的”なのか“原因療法的”なのかの深さ、あるいはレベルがあるということです。昔、「元から直さなきゃダメ・・・」という何かの宣伝文句がありましたが、私の臨床経験から考察すると、慢性症状のケースでは、元の原因へのアプローチであればあるほど、症状がぶり返しにくいという傾向があります。恐らく原因療法を追求している臨床家の先生であればそのように感じているのではないでしょうか?
病気や症状を治すためには「原因」を探して、「原因療法」を施すことが必要であるということは、多くの専門家としての考えであり一般的な人の考えでもあります。治そうとする、あるいは治すためのサポートをしている多くの治療者が「原因」があっての「結果」であるとう前提で治療を施します。中には、「原因」などの追求は横に置いといて、患者の訴える症状緩和だけに専念して、患者の訴えや話をよく聞いたりという患者の要望に応えることを優先させて、患者さんにできるだけ寄り添うサポートをしている治療者も少なくはないでしょう。臨床上、症状によっては、はっきりした原因がわからなくても、患者さんとの信頼関係がうまく構築され、患者さんにとっての承認欲求の満足度が高いと、症状が良くなっていくケースは多々あります。
骨折や血管障害、感染症などの機械論的な病気や症状に対しては「原因」の特定は必須であり、明らかな「原因」があって、その「結果」として症状が生じる場合がほとんどです。これらの機械論的な目で見て確認できる“線形的”な原因治療は西洋医学が得意とする分野です。その一方で自律神経失調症や慢性疼痛など症状が変化しやすい有機論的な“非線形的”な症状に対しては、目では確認できないため「原因」の特定が曖昧であることが多くなります。私の臨床経験において、多くの慢性症状の改善例から考察すると、自律神経失調症や慢性疼痛など症状の原因の多くが、心身相関という「心と身体の関係性」による誤作動信号に関係していると私は確信しています。
心の信号は、神経系の信号と同様に、目で確認できるような誤作動ではないため、心身相関に関係する施術効果を通して、施術後に症状が軽減、消失するなどの治療体験がないと、心の信号が症状に影響を及ぼしていたとは言えませんし、施術を受けている患者さんも納得できないでしょう。そこが、心身相関と生体エネルギーの施術を理解してもらうことの難しさであり、施術効果を通じて体感してもらいその結果で証明することが肝心です。そのような心の信号、神経系の信号は、有機論的な原因であり、機械論的原因のように目で確認できるものではなく、心や身体に関係する生体の信号=電気的信号が複雑に関係しているのです。
多くの患者さんや治療者も含めて、病気や症状の原因がメンタル面に関係しているのではないかと感じながらも、“心”のせいにしたくない傾向があり、心身相関的な施術のアプローチの難しさがそこにあります。また、“心”といっても、それは無意識の心なので、精神の問題、心がいいとか悪いとかの問題ではないということを理解してもらうことが肝心だと心身条件反射療法(PCRT)では考えており、あくまでも「心の信号」、すなわち「神経の信号」や「生体の信号」の誤作動を調整の対象としています。心、すなわち意識が動けば、神経信号が活性され、その信号が混線して誤作動を生じさせるという前提で、その誤作動信号の検査と調整を行います。繰り返しになりますが、誤作動に関係する信号は特に、意識的な心の信号ではなく、無意識的な心の信号であるということも理解上で、施術を行うことが大切になります。
長年、心身条件反射療法(PCRT)で慢性症状など心身相関に関係する有機的な症状や病気の原因と結果を研究している立場の治療者からみると、有機的症状の原因は複雑であり複合しているケースは少なくはありません。心の信号=神経の信号=脳の信号が常に動くという前提で考えると、身体を「静的」ではなく「動的」な観点で捉えること、さらには「部分」ではなく「全体」のつながりで捉えることが必要です。しかしながら、多くの治療者は機械論で「静的」に、「単一的」に原因を捉えようとします。PCRTの臨床研究から言えることは、慢性症状などの有機的な症状の原因は複合的で、目では確認できない「信号」であり、「関係性」によるものです。PCRTでは「心と身体の関係性」による誤作動、身体面と環境面や栄養面との関係性による誤作動など多方面の観点から誤作動信号を特定して調整を行なっています。慢性的であればあるほど、誤作動信号に関係する誤作動記憶は複合しており、その施術は消去法のように消して調整を行います。脳や身体に影響を及ぼしていた「不健全な信号」を「健全な信号」に書き換えて学習記憶させるように調整をしていきます。
多くの人々が西洋医学的な考えで、病気や症状の原因を機械論的に捉えているので、PCRTの有機論的原因論を説明するのは難しいところですが、原因のサインとなる誤作動反応が、調整される度に、症状が改善されるとう事実から、PCRTは明らかに「原因療法」であると言えます。しかしながら、西洋医学の原因療法ではなく、あくまでもPCRTは有機論の原因療法であるという意味で、病気や症状の原因には機械論と有機論の違いがあるということを、多くの人々に丁寧に説明する必要があると思います。