「草の根」医工連携やってます
ご無沙汰してすみません。しばらく事業の立上げに注力していて、心に余裕がありませんでした。でもまた近く人生の転機を迎えそうなので、ここで一息ついて学びを記しておきたいと思います。テーマは「医工連携」…目下取り組んでいる事業のことです。
さて、まずこの医と工。私は文系ですから、医療も工学も理系として同一視していました。しかし実際にはお互いの言葉が違うというか、なかなか上手く分かり合えていないものなのですね。つまり医師が「あったらいいな」を構想する時に技術的な設計までは考えていないし、技術者は臨床現場の課題までイメージできない。だから私はその間に介在して、翻訳者のような役割を果たしています。それが私の「医療の“あったらいいな”デザイン工房」で、製薬で有名なアストラゼネカ(株)運営の共創プラットフォーム「i2.JP」で、記事にして頂きました。
そしてこの記事がきっかけとなって、東京と大阪で開催された「i2.JP」4周年記念イベントでリバースピッチの機会を頂きました。今日はそこで行われたワークショップでの議論から、医工連携の課題と、なぜ私が「草の根」と題してこの文章を書いているのか?…を以下に纏めてみたいと思います。
※ 私のリバースピッチとワークショップのテーマは、こちらに記載されています⬇️
株式会社メディカル・プリンシプル社
「日本発ものづくりを促進するプラットフォームの活性化に向けて」
「医工連携」は特に新しい言葉ではありませんが、大学におられる権威筋の先生方と、医療で開発経験豊富な企業との間で行われている、一部の限定的な動きと捉えられているようで、市井の臨床医師からは縁遠い存在だそうです。では日々の臨床現場で、医師は「あったらいいな」と思わないか?…というとそんなことはなく、毎日あるのだけれど、聞いてくれる相手がいなくて諦めてしまう…とのこと。
私はこれを、とても勿体ない状況だと思いました。医療のものづくりは、作り手(企業)が使い勝手(医療者)をイメージできない独特な領域がゆえに使い手(医療者)の協力が開発に欠かせないのですが、特に医師へのアクセスがしづらい為に、開発力ある多くの企業が医療は敷居が高いと感じ、参入を見送ってしまうからです。
つまり世界で最も高齢化した国として日本は、市井からもっと多くの医療機器・ヘルスケアデバイス・ソフトウェアを生み出せるかもしれないのに、その機会を逸していると思いました。かろうじて開発に取組んでいる大学は本来、高度先進医療を追求する機関なので、医工連携がその領域だけでしか行われないとしたら、勿体ないですよね。しかもこの機会損失で、これから高齢化に向かう国々にも同じ轍を踏ませてしまう…そんな先駆けた国に居る者としての責任感を、私は勝手に感じていたのです。
だからあえて「草の根」に拘り、臨床課題を何とかせねば!と足掻く市井の医師エージェントとして、企業を巻き込んでゆきたい!…そう思って立ち上げたのが「デザイン工房」ゆえ、私のキャリアにおける集大成として取組むことを、ここに宣言します。
具体的には、「あったらいいな」が限られた医師の我儘と取られないよう事業性や市場を調査したり、知財に値する医師の発想は予め権利化を促したり、さらには、私がキャリアを通じて培った資金調達や人材採用のスキルも駆使しつつ、企業が投資するに見合う苗が、工房から次々と生まれるような土壌を作りたい!…と考えています。
ただその実現には、この事業に長期でコミットすることが不可欠なので、短期的な収益を追求する経営とは相容れないと自覚しています。何とか折り合いがつくよう尽力してきましたが、そろそろ限界かもしれません。この点は、はっきりした段階で改めて詳しく記すつもりです。
想えば齢58にして、未だ夢を追う気力・立場・環境に居ることが有難いと同時に、その過程で関わった人たち全員に心から感謝です。振り返れば、良きも悪しきも全ての経験が、ここへ辿り着くための化学反応だったと思えるので。でも私の人生、まだ何も成し遂げていません。だから私は「晩成する大器」なのだと自分に言い聞かせ続けます。何か成就するその日まで。ただそれで何も残せずに最後を迎えたとしても、それはそれで面白いし幸せなのかなと。死ぬまでこの心持ちが続くのだから…さほど悪くない終わり方ではないかと思うのです。これからそんな風に生きてゆきたい!…と宣言する文章でした。
最後までお付き合いくださり、どうもありがとう。お身体に気をつけて、皆様どうか良き年の暮れを!