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子どものころの思い出~ケーキ屋さん
子どもの頃の思い出の味の一つ。
東京都目黒区の学芸大学駅近くにある老舗ケーキ屋さん「マッターホーン」
子どものころから結婚して家を出るまで、我が家のケーキの味と言ったらマッターホーンのケーキだった。
クリスマスにはいつも予約して買ってきてくれる、イチゴが一杯のった昔ながらのバタークリームのショートケーキ。
親戚が遊びに来た時にはいつもたくさんのシュークリーム、エクレア、ショートケーキやチョコレートケーキが箱一杯に詰まっていた。遊びに来てくれる親戚もここのケーキを手土産にしてくれて、冷蔵庫に入りきらなくなった時もあったけ。
ある日のおやつにロールケーキやダミエが冷蔵庫に入っている日もあった。
父は九州男児で甘いものが好きではなかったし、夜はビールで晩酌しながらステテコ姿でお刺身を食べているような人だったけれども、マッターホーンのケーキを家族や親戚たちと囲む日はよくしゃべっっていた。
子ども心に父が楽しそうに笑っている姿が嬉しかった。
父はみんなが幸せそうにしている顔がきっと嬉しかったのだろう。
私が就職したての頃、仕事帰りにデパートで美味しいと言われるケーキをたまに買って帰った。家族は喜んでくれたけれどもマッターホーンのケーキを囲んだ時ほどの幸せ感は今思えばなかったような気がする。
父が末期ガンで闘病生活に入った時に、親戚で集まって父の病状について話合うことになった。
この時も親戚が買ってきてくれたマッターホーンのケーキが食卓にあった。
みんなどうしたらよいか悲嘆にくれる中、父の頑固さをネタに、連日の緊張感に疲れ切った家族や親戚の顔に笑顔をもたらせてくれた。
マッターホーンのケーキを食べると子どもの頃の家族の思い出がたくさんよみがえる。一番はめったに見られなかった父の笑顔。
今はすぐには買いにいける距離ではなくなってしまったけれども、今度食べるときは私は何を思い出すのだろう。
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