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お互いの“意識”で家族になる「拡張家族」というカタチ 〜相手の人生を“自分ごと化”できれば、きっと社会はもっと良くなる〜

【Famieeディスカッション 第2回 ゲスト:石山アンジュさん】

多様な家族のあり方を世の中に投げかけていく「Famieeディスカッション 家族のカタチ対談シリーズ」の第2回目は、拡張家族を提唱・実践する石山アンジュさんと、Famiee代表理事の内山幸樹が対談。Famieeアンバサダーで経済キャスターの瀧口友里奈がモデレーターを務めました。その内容を抜粋してご紹介します。

(noteではディスカッションの一部を記事にしています。ディスカッションの全内容は、FamieeのYouTubeチャンネルでご覧いただけます。)​​

0歳から60代まで100人超の大家族
ひとつ屋根の下にたくさんの価値観がある

瀧口 友里奈(以下、瀧口):アンジュさんは拡張家族Cift(シフト)というコミュニティを運営していますよね。まずはじめに、拡張家族とはいったい何なのか、お話しいただいてもいいですか。
石山アンジュ(以下、石山):拡張家族というのは、血縁関係に拠らずに、お互いの“意識”でつくる家族です。私はCiftの立ち上げメンバーとして2017年からかかわっていますが、最初は渋谷のシェアハウスで38人から始まって、約5年が経過した現在は家族の人数は105人ぐらい。拠点は一昨年、京都にもつくりました。年齢は、下は0歳から上は60代まで。職業も、弁護士とかミュージシャンとか鍼灸師とか、いろいろです。
100人それぞれに、育ってきた家庭環境も全然違います。血縁家族との距離感、たとえば、どれぐらいいっしょにごはんを食べるのが当たり前だと思っているか、家族にどれぐらい自分の恋愛相談をするか、仕事の相談をするか、そういった価値観も全然違いますし。そういった中で拡張家族を営むのだけれども、私たちは家族というものを定義しない。でも、「家族って何だっけ」という問いを分かち合うことを、大事にしています。
もうひとつ大事にしていることは、「リーダーを決めない」「ルールを決めない」「多数決で決めない」ということ。いっしょに暮らしていると本当にいろいろな問題があったりトラブルがあったりするんですけれども、じゃあそういったときにどうするかというと、2つありまして、1つは対話をあきらめないこと。もう1つは自己変容。何かにぶつかったときに、それにちゃんと向き合って、自分が変われるかどうかを考えるということです。

ずっといっしょにいることが前提だから
今すぐに答えを出さなくてもいい

瀧口:Ciftを運営する中で、アンジュさん自身の価値観も変わったりしましたか。
石山:自分の時間を誰かのために使ったり、たくさんの家族の人生を「自分ごと」として考えたりすることの嬉しさとか、GIVEすることの豊かさみたいなものが、すごくわかるようになりました。それと、複数の人の価値観の物差しが同じ屋根の下にあるので、自分の価値観が広がっていくような感覚があります。社会が別のかたちで見えてきたり、感覚器官が拡張されていくような感じ。
瀧口:感覚器官が拡張されるって、すごいですね。内山さん、アンジュさんのお話を聞かれて、どうですか。
内山 幸樹(以下、内山):ぼくはITをやっているので、ITって人間の五感の拡張だと思っていたんです。地球の裏側の人の声が聞こえたり、聖徳太子みたいに数百人、数千人の人の声を同時に聞けたり。だけどITを使わなくても自分の感覚が拡張するというのは、すごいと思いました。
「リーダーを決めない」「ルールを決めない」「多数決で決めない」というのもすごいですね。そこに行き着くまでにはどういうプロセスがあったのですか。
石山:明確にではなかったかもしれませんけど、この考え方は最初からあったと思います。家族は会社や部活とは違うので、やっぱり誰かの声が大きかったり、ひとつのことを押し付けたりするのは違うんじゃないかと思っていたので。
ただこれは、めちゃめちゃ面倒くさいことでもあるんです。たとえばコミュニティとして何かを決めたいとき。全然、決まらないんですよ。対話の中でぶつかることもあるし、何時間話しても決まらないから対話に疲れちゃうみたいなこともあるし。でも「長い時間軸をいっしょにいようね」という合意があるからこそ、今この瞬間に決めなくても、対話を繰り返していく中で、半年後とか数年後に、行き着くところに行き着いていたな、みたいな。そういう経験を何回かしたことがあって。
内山:人生いっしょにいると決めているので時間をかけて答えを出せばいい、というのは、いわゆる伝統的な夫婦にも通じるポリシーだと思いますよね。
石山:そうですね。まさに100人と夫婦関係をしているような感じです。

大変なときに支え合うのが家族
1人1人と向き合うのは、面倒だけど尊いこと

瀧口:アンジュさんは、Ciftは家族でもあり、協同組合でもあると言っていましたね。
石山: Ciftには家族の口座があって、そこに組合費としてひとりひとりが3,000円とか5,000円とか入金するんです。同じ金額を入れなきゃいけないというルールはないです。0円表明みたいなのもあります。そのお金の使い道は、都度、家族会議で決めるんです。
人によって、みんなのために何をしたいか、どういうふうにGIVEしたいかは違う。それをお金で表す人もいるし、子育てにかかわったり、みんなの話を聞いたりすることで表そうとする人もいる。それぞれ、その人ができるかたちで。今日は私、夜ごはんをつくろうと思っているんですけど、別に当番というわけじゃなくて、自主的につくっているだけなんです。単純に、みんなのためにつくりたいという気持ちが私を動かしている。
内山:石山さんは、ご結婚されていますよね。パートナーといっしょにごはんを食べるときもあれば、別の家族といっしょに食べるときもある。石山さんには家族がたくさんあるということなのでしょうか。
石山:家族の中にパートナーがいるという感じです。パートナーとはもともと拡張家族の中で出会ったので、付き合う前からいっしょにごはんを食べていましたし。そもそも家族だったのに、なぜ結婚というかたちをとったかというと、家族の中にはLGBTQの人やポリアモリーという多夫多妻的な価値観の人もいるけど、私は男女の1対1のパートナーシップを望んでいるし、相手にもそれを求めたかったから。ただ、互いの意識で家族になれるとも思っているので、法律婚は選択しなかった。結果的事実婚というか。それが私たちなりの結婚。口約束をして、みんなでパーティ的な結婚式はしたけれども、行政上の手続きは一切していないです。
瀧口:拡張家族は順調で何の問題もなさそうだけれど、大変なことや苦労もあったりするのでしょうか。
石山:家族って、どちらかというと大変なときを支え合う存在だと思うんですね。仕事がうまくいかないとか、恋愛がうまくいかないとか、血縁家族が病気になったとか。100人いたらそれだけの人生の数があるわけですよ。人数が増えれば増えるほど、話を聞いたり、どうしたらいいかをいっしょに考える時間が長くなる。大変だといえばすごく大変だし、でも尊いといえば尊いみたいな。
分断や対立が進んでいる世の中で、ひとりひとりがそれを乗り越えていくためには、人類にはもともと良心が備わっていると信じることと、“わかり合えなさ”に向き合う修行をすることが必要だと思うんです。だけど、そんな修行をする機会は今の社会にはなかなかない。いっしょにいることが前提の人をたくさん増やすことによって、そういう時間がめちゃくちゃ増えるんです。
私が家族だと思っている相手は今は100人だけれども、道ですれ違った人、同じ電車に乗った人、そういった人にまで思いを及ぼすことができたら、そしてそれをみんながやったら、世の中はすごく良い方向に向かっていくんじゃないかなと思います。

制度や法律がないのなら
自分たちでイノベーションを起こせばいい

瀧口:アンジュさんが代表理事を務める一般社団法人Public Meets Innovationでは、去年、ミレニアル世代100人といっしょに、これからの家族のかたちについての政策を提言としてまとめました。内山さんはその動画
「これまでの「家族観」への違和感」

と、「多様な「家族」の形」

に、とても共感して、何度も繰り返して再生されているそうですが、Famieeとして、これに描き出されている家族の問題点に対してどういうアプローチをしているのか、今後の計画も含めてお話しいただけますか。
内山:Famieeは多様な家族形態が当たり前に認められる社会を実現しようというミッションのもと、現行の法律では家族として認めてもらえないことに苦しんでいる人たちに対して、家族関係証明書を発行する活動を行っています。その中でつくづく感じるのが、家族のあり方がこれだけ多様化しているにもかかわらず、現行の社会制度はすべて、いわゆる伝統的な家族の形態を前提にしているということです。どういうことかというと、伝統的な家族の核になっている婚姻制度というのは、異性同士で、姓が同じということにはじまり、同居、性生活、扶養、財産分与といった権利や義務がパックになっています。今、同性カップルの方々向けのパートナーシップ制度というのがあちらこちらでできてきていますが、これは、姓は異なりますが、ほかの権利や義務は伝統的な法律婚の家族に準じています。
でも実際には、もっともっと多様な家族のカタチを求める人たちが増えています。たとえば夫婦でも別姓にしたいとか、シングルマザー同士がいっしょに助け合って暮らしていきたいとか。60代とか70代で、「パートナーはほしいけれど、今さら結婚じゃないでしょう」という方々もいる。ですからFamieeでは、同性カップルに限らず、お二人が互いの権利と義務をアプリ上で契約することで、多様な家族のカタチを実現できるような第一種パートナーシップ証明書を発行する準備を進めています。
石山:制度や法律が変わるにはだいぶ時間がかかるけど、今の時代はテクノロジーが進化しているので、「ないなら自分たちでつくろうよ」という選択肢が増えていると思うんですね。Famieeがやっていることはそのひとつのかたちだと思いますし、それがきっかけになって社会が変わっていけばいいなと思います。
内山: Famieeは、家族として認められたい、家族としての権利がほしいという方々に対して、それを実現するためにどうすればいいかを考えてやってきているんですけれども、石山さんたちの家族というのは、自分たちが家族だと思えば家族になれるという考え方ですよね。その発想の違いに対して、何か思われるところってありますか。
石山:どっちも正解だし、どっちも選択肢としてあることが社会として豊かなことだと思います。
私が大事にしているのは、他責にしないこと。たとえば、「夫婦別姓が通らないから私たちは結婚できない」と言って10年も20年も時間が経ってしまうのはとてももったいないことだし、それはある種、他責にしているのだと思う。枠組みのせいにして「私たちは幸せではない」という時間をすごすのではなくて、発想を変えたり、新しいものをつくったりすればいい。そういう考え方が広がって、ひとりひとりが自分の豊かだと思うカタチを、みんなといっしょにつくっていけるような社会になっていけばいいなと思っています。
内山:まさにFamieeをつくったときもそうでした。法律で同性婚を認めさせようといってどんなに動いても、年単位でものすごい時間がかかる。当事者の人たちは今、目の前のことで困っているんですよね。自分たちで、「いいよ、私は家族として認めるよ」という人たちを集めることができれば、課題を解決できる。そのほうが早いよね、と。すごく一致するところがあるなと思いました。
(noteではディスカッションの一部を記事にしています。ディスカッションの全内容は、FamieeのYouTubeチャンネルでご覧いただけます。)​​

Famiee

執筆:Famieeメンバー 坂本潤子


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