この先も変わることのない”家族”だからこそ、社会の構造を理由に諦めるのを変えたい。Famieeには大きな可能性がある。【杉山文野さん取材】
みなさんこんにちは。
私たち一般社団法人Famieeは、現在の法律では夫婦や親子と認められない世界中の人たちが、家族としての当然の権利やサービスを受けられる社会を目指し、ブロックチェーン技術を使った「家族関係証明書」の開発と発行をしています。ミッションである「多様な家族形態が当たり前に認められる社会の実現」のため、家族関係証明書の導入企業や団体を増やし、家族としての当然の権利やサービスを必要とする方々をサポートしたいと考えています。
このnoteは、Famieeの理念や活動に賛同してくださった方々に、サービスに関することや「多様な家族形態が当たり前に認められる社会」への思いなどを伺う取材シリーズです。
第二回目のゲストは、株式会社ニューキャンバス代表/Famiee Projectメンバーの杉山文野さん。
LGBTの当事者として企業への講演会や子どもなど幅広い世代と関わりをもつ杉山さんに、Famieeプロジェクトのメンバーになった理由や期待していることなどを語っていただきました。
杉山文野。「誰もが安心して暮らせる社会」を目標にLGBTの啓発活動を行う。プライドパレードの運営を行うNPO法人東京レインボープライド共同代表理事や、街の清掃活動を行うNPO法人グリーンバード理事を務めるほか、飲食店の経営など幅広く活動している。様々な活動の共通コンセプトは「色んな人が垣根を超えて集う場所をつくる」こと。
仕組みより、共感して応援してくれているという気持ちが嬉しかった。
ー杉山さんがFamieeプロジェクトのメンバーになった経緯を伺ってもよろしいですか?
文野(以降,杉山):
Famieeプロジェクト代表の内山さんと出会ったのは4年程前のG1サミットでした。サミットの中でLGBTやダイバーシティに関するセッションを行ったときに内山さんもいらして、興味をもってくださいました。それから交流がはじまり、ちょうど僕が子どもを持とうとトライしている時期に家族について深く話すようになって。内山さんは「家族でありたいと思う人が家族として認められない社会はおかしいよね。」とまるで自分ごとのように僕の思いに共感してくださいました。
まずはFamieeプロジェクトの仕組み自体というよりも、その共感してくださった気持ちが嬉しかったですね。一般社団法人、NPO、自治体、企業など色んなセクターの人たちと協力しないと問題の解決には進んでいかないと思うんです。正直に言うと最初はブロックチェーンのことはあまりよくわかっていなかったのですが、「多様な家族形態が認められる社会にする」という最終的な目標が同じであれば、色んなアプローチがあっていいと思い、協力することにしました。
Famieeプロジェクトは、日本を超えて世界的な大きな可能性があるサービス
―Famieeプロジェクトのサービスに対してどのような印象をもたれていますか?
杉山:
場所に縛られず色んなものを超えられる画期的なサービスだと思います。各自治体のパートナーシップは自治体ごとに色々ルールがあって、最近では自治体同士の連携をやっていこう、という話はありますが、全国で同じものはつかえません。渋谷区のパートナーシップをとった当事者に話を聞いた時に、「どうしても仕事の関係で引っ越しをしなければいけなくなったときに、証明書を返還しなければいけないっていうのは、すごく寂しかったんですよね。」という声を聞いたことがありました。
まさに今は場所に縛られる時代でもないので色んなものをこえて改ざん不可能な形で二人の関係性が証明され、色んなところで活用されるのは画期的だと思います。
―たしかに、引っ越してもずっと使い続けられるのはいいですよね。
杉山:
しかも同性婚だって、同性婚ができる国では証明書をもらえても日本に帰ってくると効力がないとか、そういったことが世界中で起きているので、そこを超えられるというのは大きな可能性があると思います。
―杉山さんは活動の幅が広く、当事者やそうでない人の意見も色々きくと思うのですが、Famieeプロジェクトに対して批判的な声とかはありましたか?
杉山:
まだそういった声はききませんが、これからFamieeプロジェクトが大きくなればなるほど批判的な意見はある程度でてくると思います。でもそれは全てのことに言えると思っていて、渋谷区のパートナーシップを進めた時も批判の声は多くありました。何かをスタートする時には、色んなエネルギーも必要だし批判も受けるけど、最終的にだめなものは淘汰されるし、いいものは残っていくと思います。必要なことを続けて社会の中で価値をだせば、それに見合う対価を得たり、ビジネスとしても社会活動としても両立をするというだけだと思います。構造的な差別が解消されなければ個人的な差別は解消されない。法律を変えるためにも、社会の空気を変えていきたい。
―Famieeのサービスのように多様な家族のかたちが浸透し当たり前になったら、10年後にどんな社会になっていると思いますか?
杉山:
一番わかりやすいひとつのゴールは法律が変わることだと思います。婚姻の平等、差別禁止法、トランスジェンダーの戸籍変更条件の緩和は実現させたいと思っています。なぜかというと、個人レベルの差別や偏見がなくならないのは、そもそも構造上の差別があるからです。「全ての国民は法のもとに皆平等」と言いながら結婚できる人とできない人がいる、この社会の仕組み自体が非常に差別的なことです。かといって構造的な差別が解消されれば個人レベルの差別が解消されるかといえばイコールではありませんが、少なくとも構造的な差別がなくなれば限りなくゼロにしていくことはできると思います。
一人で法律を変えることはできませんが、法律を変えるための社会の空気を変えることが今の僕たちひとりひとりにできる最大限のことだと思います。Famieeプロジェクトや今あえて使っている言葉、例えば「LGBT」という言葉など使う必要ががなくなる社会になっていたいですよね。こういった社会活動はなくなるのがゴールであって、Famieeプロジェクトのサービスも必要なくなるような社会とか世界になるのも目標だと思います。
―なるほど。
杉山:
でも、なくすためにも今はまだこういった活動が必要。パートナーだって今は同性パートナーと敢えて言っているのは、異性のパートナーが当たり前なため、あえて「同性」パートナーと言わないと可視化されないからです。すべての人の“すべて”に色んな人が含まれていることが共通認識になるのが大事だと思います。
―そういった意味で、FamieeプロジェクトはLGBTだけではなく、“多様な”人たちに向けたサービスですよね。
杉山:
これはLGBTだけでなくまさにダイバーシティの話しですよね。ダイバーシティという言葉も、「そんな言葉をわざわざつかわなければいけない時代もあったな」と振り返るとそうなると思うし、そうなってほしいと思います。
”家族”はこれまでも、これからも変わらない
―10年前と今では大きく社会の価値観は変わってきましたが、杉山さんが活動をするなかで、周りの人のLGBTに対する価値観ってどのように変化しましたか?
杉山:
この10年は大きく変わりましたし、ここから先の10年もさらに変わると思っています。特に社会のLGBTに対する対応が自然になりつつあり、昔は「トランスジェンダーってなに?」って対応で、説明すると「そうだったのですね。失礼しました!!!」という感じですごく珍しいことのように扱われていました。今は「そうなのですね。」というふうに社会に少しずつではありますが浸透しつつあり、大きく変わってきたと思います。実生活が変わってきたのは大きいですし、いま話している内容も10年後には全く違う景色が見えていると思います。
―表面的なことではなく、実生活が変わるって本当に大きいですよね。
杉山:
社会は今ものすごいスピードで変化しており、現在一般的に言われている「家族」というものは変わっていくと思いますが、本質はなにも変わらないとも思っています。いわゆる家制度とか血縁という意味の“家族”ではなく、心の拠り所というか生活を共にするような大切な人たちって絶対にいると思うんです。だから大切な人と過ごしたいと思うにも関わらず、制度から漏れる人は解消していきたいなと思います。
―たしかに、本質的な“家族”は変わらないですよね。10年の中で社会が大きく変わったと仰っていましたが、なにが変化を起こしていったとお考えですか?
杉山:
変化の要素は無限にあると思っていて、一つは当事者が声をあげ続けていたから。でも鶏卵みたいな話で、理想は社会の理解が進んでカミングアウトができる環境ですが、現実は当事者がカミングアウトしない限り社会は気づかない。だから、できる人からカミングアウトしたほうがいいと思っているので僕もあえてするようにしています。
それともう一つ社会を変えてきた要素としてあるのは、アライの存在。当事者ではないけれども同じように声をあげてくれる仲間、友達、メディア、企業の発信もあると思いますし、あらゆる人が関わってくれたから今があると思います。
―たしかに、当事者以外のアライの力も大きいですよね。
杉山:
よくアライの方から「いつからアライって言っていいんですか?」と聞かれるのですが、当事者も目に見えないようにアライの人も目に見えないので、アライの人にも積極的にここにいると言ってほしい。
一度世界的にも大きなプライドであるサンフランシスコのパレードの運営をしている方と話したことがあって、「とにかく文野!細かいことは気にせずいけるところまでいってから考えろ!大きくしてから小さな声をしっかり拾っていくことが大事だ。」と言われて「なるほどな。」と思いました。
もちろん一人一人の小さな声はとても大事です。ただいきなり「全員をよくすることはできないけど、全体をよくすることはできる。」と考えると、目標は社会に広く伝えていかないと現実は変わらないので、ちゃんと大きくできるうちにしっかり大きな波をつくっていく。良いことも悪いことも、小さいことも大きいことも、当事者も非当事者もありとあらゆる人がここに関わってくれたことが社会を変えた一番の要因だと思っています。
社会のせいで素晴らしい機会を奪われるのは絶対に変えていきたい
―話がすごく個人的になりますが、お子さんをもってから何か考え方や価値観って変わりましたか?
杉山:
大人として、LGBTとして、2つの視点から大きく変わったと思います。
LGBTという視点でいうと、僕自身は子どもをもってみて初めて子育ての素晴らしさを知りました。自分の過ごす時間が豊かになり、見える景色も変わりました。結婚して子どもを持たなければ幸せになれない、と言うつもりは一切ありませんが、こんなに素晴らしい人生の機会をLGBTという理由だけで社会から諦めさせられている状況は絶対に変えたほうがいいと思います。結婚をしたい、子どもを持ちたいって思っている人が社会のせいでもてないのはあまりにも理不尽で、もったいない。
大人としてという視点からは、この子が大きくなる頃に今より生きやすい社会を残しておきたいという気持ちです。今までもそういった気持ちがありましたがどこかリアルに感じられていませんでした。でも、子どもの時間軸で考えるようになってからは、すごくリアルに思います。この子が大人になった時には、女性だから、親がトランスジェンダーだからという理由で、やりたいと思うことを全力でやれない社会ではなく、全力でできる環境をつくるのが大人の責任だと考えています。
―最後にいまFamieeの導入を検討されている企業の方に向けて杉山さんからメッセージをお願いします!
杉山:
まずはなんでもやってみてほしい。新しいものには不安がつきものですが、何もしないことが一番の失敗だと僕は思います。やってみて、良いところは残して、悪いところはやめる、その繰り返しだと思うので、もしちょっとでもいいと興味をもってくださるのであれば是非トライしてみてほしいですね。
杉山文野さん、お忙しいなかありがとうございました。
・Famieeプロジェクト
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・メディア露出
家族の多様性を認める社会へ。Famiee活動第一弾は、同性カップル向け「パートナーシップ証明書」 | LoveTechMedia - ラブテックメディア
https://www.famiee.com/
民間が同性カップル証明を発行、企業が利用へ みずほFGなど約20社、福利厚生で | 共同通信
https://this.kiji.is/627467476837123169?c=39546741839462401
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https://www.japantimes.co.jp/tag/famiee-project/
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