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ふぁるこん
2023年10月10日 06:22
「何か大事なことを忘れてしまっているような、そんな気がするの」 彼女は真剣な面持ちでぼくに相談を持ちかけた。そこは待ち合わせに使用している大学の噴水広場。大学構内にあるその場所は、学校内の用事も、街中に遊びに行く人にも良く待ち合わせ場所として利用している。 目の前にいる彼女は、長い髪を巻くように一本に束ねている。大学生になった今も幼さを残した表情をしていて、奥二重の目を懐っこそうに細めてこ
2023年10月4日 06:27
空に満月が淡く光る夜、僕こと倉崎直樹は通っていた高校の屋上のフェンスの外側に足をぶらつかせながら、夜闇の空を眺めている。 学校の裏口が壊れていて、事前に窓を1つ開けておけば校内に侵入できることをかつての先輩に聞いた知識がこんなところで役に立つとは思わなかった。 つい6ヶ月前の平凡な毎日が夢のように感じられる。 突然のことだった、母さんが死んだのは。 交通事故で、トラックに引かれて即