相馬野馬追
今年も始まった。
震災前はそこまで有名でもなかった福島県のお祭りだ。
戦国時代に軍用馬を調達するために、野生の馬を追った由来だとか。
甲冑姿で行列。
神旗争奪戦。
盆踊り。
流鏑馬。
まぁ、色々あります。
震災後、福島県の復興のシンボルとなった。
他県、外国からの観光客も年々増加しているとのこと。
そういえば、山手線でもそんなコマーシャルが流れていたなぁ……。
実際は梅雨明けと重なって、茹だるような暑さのなか、ただ馬を眺めているだけ。
そんな様子を悲哀を込めた目で見ていた。
今思えば、震災から一年経過したとき、
「鎮魂の意味を込めて、野馬追を再開したい」
と当時の市長が言い出したことを覚えている。
当時、まだ除せんが道半ばで、危険な地域が南相馬にまだあり、住めない地域も市内にあった。
この爺は何を言っているのだろう……
当時の自分はよくこう考えていたものだ。
あれから時は経ち、本当に僕らは鎮魂の思いでこの行事を見ているのだろうか。
個人的には震災でなくなった方々には、ゆっくりと海を眺め、思いを馳せることが、命の尊さを考えることができるし、穏やかな気持ちで弔うこともできると思う。
毎年のように、酔っぱらいの喧嘩や未成年の飲酒喫煙、コンビニの駐車場に居座りで警察が世話しなく動くようなイベントに最早鎮魂の思いなどない。
僕は個人で慰霊の気持ちを捧げたい。
福島県のどこかに住んでいます。 震災後、幾多の出会いと別れを繰り返しながら何とか生きています。最近、震災直後のことを文字として残しておこうと考えました。あのとき決して報道されることのなかった真実の出来事を。 愛読書《about a boy》