見出し画像

まだ探してない場所なら希望があると思った。

スマホで見ることを前提とした表現があります


初めて、交通系ICカードを手に入れたとき。
初めて、数百円で違う県に行けたとき。
僕たちはどこまででも行けるんだねって思った。


見知らぬ駅で降りた。
往復500円以内で見えた高層ビルは余りに高くて首が痛くなった。
変なオブジェ、やけに古臭い橋、全てが初対面だったのに気さくな街だった。
安全に配慮され、多くの花に囲まれた公園でキャイキャイと遊ぶ子どもたち。
大人になるということは、罪を重ねること。
きっともうこの楽園の住民にはなれない、なんて。
統合失調症の症状が酷くなる気がして帰路についた。



あの日、海を見に行った。
往復1000円もかかった海。
徒歩10分で見えた海が恋しかった。
潮風の匂いも、波の音もほとんど同じだったけど、なんだかその海は他人のモノのような気がした。
波がごうごうと鳴るのが地球の鼓動みたいで好きだった。
目を瞑って耳を澄ませても人の声が、心雑音が、うるさかった。
翌日は朝から学校があったから、1時間半かかる帰り道のために足早に帰路へついた。


友人達の中で僕だけが違う電車に乗るからと学校の最寄りで遊んでくれる友達。
帰りに「また明日ね」と別れる。
対岸のホームで喋っている姿たちが見える。
ただでさえ僕は耳が悪いから、何も聞こえなくて。
違う、聞こえるはずはなくて。
独りでスマホをいじるフリをして、ふと顔を上げ、目が合ったら手を振る。
僕がいない、その集団がとても完成されたものに見えた。
友人達のいるホームが舞台で、僕のいるホームは観客席なのだ。
こんなにも路線はあるのに眩しいからそっちの路線だけ乗れない。


一周回ったら同じ駅に着く電車。
           家
        学校   学校
     買い物        買い物
    家              家
   学校               学校 
    家              家
     学校          学校
       買い物    買い物
           家     
一周回ったら同じ駅に着く電車。

プチ冒険も友人と一緒にいるのも多分好き。
満足してないとかそういう話じゃなくて。
楽しい、楽しいから。


広い檻の中、自由だと思っているのはモルモットだけ。

あーあ、
僕はどこにも行けないんだね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?