人工知能を学習した5 過去のAI
記号的AI(Symbolic AI)
- エキスパートシステム(Expert Systems)
- 知識グラフ(Knowledge Graphs)
- ルールベースシステム(Rule-Based Systems)
1. 記号的AIの概要と定義
**記号的AI(Symbolic AI)**は、ルールと知識の表現を基に推論を行うAIの一種です。
データのパターン学習ではなく、手動で設計された論理ルールや知識ベースを用いて推論を行います。
1980年代のエキスパートシステムのブームを支えた技術であり、医療診断、計画、故障診断などの分野で活用されました。
2. 記号的AIの仕組み
シンボル(Symbol):人間の知識を「シンボル」(例:「猫」「走る」)として表現。
ルール(Rules):IF-THEN形式のルールで知識を構造化(例:「もしAならBを実行」)。
推論エンジン:ルールと知識を使って、特定の目的に沿った結論を導きます。
3. 記号的AIの構造と要素
3.1 エキスパートシステム(Expert Systems)
概要:専門知識を集約し、推論を行うシステム。
構成要素:
知識ベース(Knowledge Base):専門家から収集した知識
推論エンジン(Inference Engine):知識ベースを使って推論を実行
応用例:
MYCIN:感染症の診断支援システム
XCON:コンピュータ構成の自動化
3.2 知識グラフ(Knowledge Graphs)
概要:データ間の関係性をグラフとして表現し、推論や検索に使います。
例:
Google Knowledge Graph:検索結果における関連情報の表示
Wikidata:構造化データを提供するオープンデータプロジェクト
3.3 ルールベースシステム(Rule-Based Systems)
概要:IF-THENルールに基づいて判断を行います。
応用例:ビジネスルールエンジン(BPM)、税計算システム
4. 記号的AIの歴史と経緯
1950年代~1970年代:初期の人工知能研究
記号的AIは、初期のAI研究の主流でした。
ジョン・マッカーシーらが人工知能という概念を提唱し、論理演算やルールを使ったAI開発が進みました。
1980年代:エキスパートシステムのブーム
記号的AIの最盛期。企業や医療機関でエキスパートシステムが多く導入されました。
しかし、システムの開発コストが高く、ルールのメンテナンスが難しいことが課題となり、失速。
1990年代以降:機械学習の台頭
大量データの活用が進み、記号的AIからデータ駆動型の機械学習へとシフト。
ただし、記号的AIは医療診断支援や法務システムなど、特定の分野で存続。
2020年代:記号的AIと機械学習の統合
現在は、知識グラフや説明可能AI(XAI)の研究が進み、記号的AIと機械学習の融合が注目されています。
5. 記号的AIと現在のAIとの違い
6. 記号的AIと機械学習の統合
最近のAI開発では、記号的AIの知識と推論の解釈性を、機械学習の柔軟性とパターン認識能力と組み合わせる研究が進んでいます。
説明可能AI(XAI):AIの判断根拠を人間が理解できる形で示す技術
ハイブリッドAI:記号的AIと深層学習を組み合わせたシステム(例:医療の診断支援で画像解析とエキスパートシステムを融合)
7. 記号的AIのメリットと課題
メリット
高い解釈性:判断の根拠が明確で、信頼性が高い。
少ないデータで利用可能:データが少ない分野でも使用可能。
専門領域での強み:医療、法務、金融などの分野で有効。
課題
開発とメンテナンスのコストが高い:ルールの設計に手間がかかる。
柔軟性が低い:環境の変化に対応するのが難しい。
大量データへの適用が困難:ビッグデータの解析には向かない。
8. まとめ
**記号的AI(Symbolic AI)**は、手動でルールと知識を設計し、判断を行うAIです。
解釈性の高さや専門分野での活用が強みですが、柔軟性に欠け、機械学習に取って代わられました。
ただし、現在はハイブリッドAIや**説明可能AI(XAI)**の分野で記号的AIが再び注目されています。
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