【一般】考察、捻挫になりかけている:新聞記事「施術の現場より12」
よく捻挫と聞くと思う。スポーツ外傷では鉄板のケガであり、その代表格は足首の捻挫だ。業界では足関節捻挫と言われており、その正体は足首の動きを抑制する靭帯という組織が捻りの力(外力)が加わったことにより損傷する事を指す。つまり、捻挫=靭帯損傷となるが当院に来院した患者や保護者に同様の説明をすると、捻挫は軽傷で靭帯損傷は重傷と考えている人が多い。スポーツ外傷においては痛い理由がハッキリしている事が多く、捻挫や肉離れなどはまさしくである。
○○症候群と呼ばれるスポーツ障害においても、近年のスポーツ医科学の発展により痛みの理由は明確化されてきており、症候群の意味は原因不明であるというロジックは通用しなくなってきている。このことをふまえて考えると、痛いという症状が明確に出現しているのは100であり、痛み(症状)がなければ0であると言ってもいいだろう。ケガは0か100、イエスかノーである。尚、ここでの数字はケガの程度ではなくケガの有無を指している。施術の現場にあると、捻挫の一歩手前や捻挫になりかけているという説明を受けたという話を患者から聞くことがある。捻挫の手前やなりかけとは少々疑問が残る表現である。捻挫は一度の力により引き起こされるため、正常な組織が徐々に異常な組織に変化する事はない。手前やなりかけは、正常から異常への中間点(過渡期)ととらえることが一般的であるが、そんなことはケガの性質上ないだろう。拡大解釈すれば、関節に捻りなどの力が加わり、それが靭帯への負荷となり靭帯損傷が起きるほんの刹那である。捻挫はしているのかいないのか、0か100であると言った意味もご理解いただけたと思う。
関節は、日常生活やスポーツなど身体を動かすためには必須の部位であり、当然ながらその負荷も大きい。捻挫をしていなくても様々な要因により、痛くなることだってあるだろう。しかし、それは捻挫ではなく手前でもなく他の疾患(病気やケガ等)である。その辺りの鑑別ができるかできないのかの差が、患者の回復を左右する事は言うまでもない。説明という観点から考えても、一歩手前やなりかけと言われて「分かりました」と言う人はいないと思う。人の身体を触る職業は曖昧な説明は避けるべきであり、もし知らないのなら勉強も必要だろう。痛いと悩む人からお金を頂いて診るとはそういうことである。
後記:スポーツ外傷で転院してくる患者に問診票を記入してもらうと結構な多さで「手前・なりかけ」と説明されたと書いています。患者にそれでイメージできるのかと聞くと口をそろえて分かりませんといいます。患者がわからない説明は説明をしたことにはならないのは常識ですが・・・結局のところ、施術者サイドが「知らない」を患者に悟られないようにそれっぽく説明したことにするために使われているだけなのです。我々は医師ではないので診断することはできませんが、事実を積み重ねて疑いがあると可能性を示すことは可能です。それが、お金を頂くという事って当たり前だと思います。
次回(13回)は「骨盤矯正は治療なのか」です。
医科学的解説は文字数の関係もあるので、ネット上に上手く解説している人もいますのでそちらにお任せします。基本的な部分と一般論で書いてます。
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