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健康経営は人生100年時代を見据えて

今年も経産省による「健康経営銘柄・健康経営優良法人」公表の季節がやってきた。前者に関しては東証上場企業のうち、昨年実績で40社と狭き門である。また後者は年を追うごとに認定社数が増加している。しかし産業医の視点からは、健康経営に熱心に取り組む企業や部門は一部に留まり、今ひとつ盛り上がりを欠くように見える。なぜだろうか。

理由のひとつは、企業が従業員らに提供する健康施策の多くが、直接的な効用として認知されにくい点にあろう。健康管理スタッフが社員に対して適正体重の維持を説いたり、労務管理部門が残業時間の短縮を掲げたりしても、かけ声倒れに終わるケースが散見される。

また往々にして、組織のトップマネジメント層はその職位に上り詰めるまでの数十年間、業務による心身への負荷や対人ストレスに打ち勝ってきた場合が多く、今さら現場の社員に向けて「健康第一」とは宣言しづらい状況もあるだろう。

「健康に社会参加し続けること」の価値

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しかし考えてみて欲しい。労働人口の減少、一億総活躍、人生100年時代、自助・共助・公助、と近年の政治キーワードを並べるだけでも、今後の日本において「健康に社会参加し続けること」の価値が、急速に増すことは明らかである。

無論、ここで言う「社会参加」は雇用状態に左右されず、障がい者の就業や、主婦としての地域生活や高齢者の年金生活をも包摂する概念である。つまり我々は「健康かつ幸福に暮らす」という普遍的価値を、国を挙げて再認識する時代に生きており、企業においては社員とその家族の健康と幸福を支援することが、今後の競争優位の基盤となると考えられる。企業の提供する健康支援策や健康投資による生産性向上は、中期的には株価に反映されて企業価値の増大に繋がり、長期的には企業の存在価値や社会的評価の上昇へ帰結するだろう。

全てのステークホルダーが「健康経営」意識を

さて人生100年時代、働く世代にとっては年金受給開始年齢の引上げと終身雇用の終焉を横目に、一律定年退職の廃止なども視野に入れた企業選択が、現実味を帯びてくる。健康経営は、現場の社員や健康実務担当者のみならず、全てのステークホルダーがトップマネジメントに発信すべきメッセージである。

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