友情とかやさしさとか。
「2回も行ったよ」という友人Aちゃんの弾む声を聞きながらも、行くのをためらっていました。
アレとの出会いは数ヶ月前。「すごくおもしろい、ハマるよ!」というAちゃんの言葉に興味を示し、動画サービスで見始め、第7話あたりまで視聴しました。
あれー、ハマらないじゃない。
私は「戦いが続くだけで、セーラームーンと同じじゃない?」という古すぎるアニメのタイトルをつぶやきながら、パソコンを閉じました。
それからアレはさらに日本を席巻する大ヒットへと上り詰めていきます。
え、そんなにおもしろいかなぁ、えー、そうかなぁ。私はハマらなかったんだけど、どうして?
そして思います。
もうちょっと見たらもっとおもしろくなるのかな。
あまりに騒ぎ立てる世間の興奮の波に、やっぱり乗っとくでしょ、乗らなきゃ、という気持ちが芽生え、再びパソコンを開いたのは数週間前。
続きから見始めました。
なんとなくおもしろいかもと感じ始めます。
残虐なシーンは好きにはなれないけど、それでも続きが気になるところまで私の関心は進んだのです。
そして26話の最後に、アレの主人公とその友人たちが列車に乗り込みました。
おしまい。
え? おしまい?! ここで? 27話はないの?
何それー! つまり「続きは映画で見てね」という仕組みなんですね。これはやられた、こういうことか。だから映画館にみんなこぞって行くのね。大ヒットのからくり見たり。だって続きがすごく気になるよ。
それにアニメがリスタートしたときに、映画を見てなかったら、その部分のお話が飛ぶということになるんじゃないですか? それは困る。
というわけで映画館に行くしかない状況に追い込まれたのです。
そして映画館で続きを見ようと決めた私はAちゃんに「アニメ、見終わったんだけどね、あれって続きは映画でってことよね?」と尋ねました。
「そういうことになるねー」
そして話題はアレのあれこれの話に。すっかりファンになっているAちゃんはもちろん漫画全巻購入済みで、私とは知識量が違う。
私なんてね、特に名前を覚えるのが苦手なので、あんなややこしい漢字の名前は覚えられないんです。なんとか柱とか、なんとか下弦とか、そういうのこんがらがっています。
Aちゃんは漫画からすでに得ているあらゆる情報を教えてくれます。そこに映画の話もね、教えてくれるんです。「なんとかさんの大ファンになるよー、あーでこーで、あーだから、ハマる!」とかって、なんかライオンのたてがみのような秋色の髪で、異常に爽やかで、初めてアニメで見たときは違和感を覚えたほどの正統派の話しぶりのあの人が映画で大活躍するそうです。
漫画ではその先はどうなるのかを「え、続き話していいの? ネタバレになるけど大丈夫?」とか言いながら楽しそうに教えてくれます。「まぁ、うん」とネタバレをどこまで聞いていいのか迷いつつ、でも気になるからやんわりと受け入れてしまいました。
「この先はほんと、どんどん死んでいくの」
そうなんだ、だって敵の大将はとんでもなく強いもんね。あれはもう太刀打ちできないよ。そりゃみんな死んでいくよね。勝つなんて無理でしょ。そう思います。
そしてまた映画の話に。
「ライオン髪の彼(Aちゃんはちゃんと名前を言っている)はほんっと惚れ惚れするほどかっこいいよ! あんなにかっこいいとは思わなくて、登場してすぐに彼に目をつけてた友達がいるんだけど、見る目あるなぁと思った! 見に行ったら絶対ファンになるからね! まぁ、彼も死ぬんだけどね」
え。
最後なんて言いましたか?
彼も死ぬの? 映画で?
「あ・・・それは聞きたくなかった」
思わぬ究極のネタバラシに、私の心はシーンとなりました。
「えー!! あ、ごめん!!」
「いや、うん」
「ほんっとごめん!」
「いや、まぁ、でもそこは知りたくなかったけど、うん」
「ごめん、ごめんー」
いつも親切心あふれる彼女のやさしさに、今日もそっとふれたお話でした。
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「アレ」とは、みなさんお分かりだったと思いますが、「鬼滅の刃」(吾峠呼世晴(ごとうげ こよはる)さん著)です。
映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は公開から10日間で興行収入100億円を突破し大きな話題になっていますね。
コロナ流行以降、映画館には初めて来ました。どうしてもこれは映画館で見たい。戦闘シーンをね、やっぱり大画面の迫力で堪能したいのです。
いま映画館で、この文字を打っています。
「鬼滅の刃」のコアとなるストーリーは、主人公の竈門炭治郎(かまど たんじろう)が鬼に噛まれて鬼になってしまった妹の禰豆子(ねずこ)を人間に戻すために、鬼を退治する組織「鬼殺隊」に所属し鬼と戦うお話です。
映画では鬼殺隊の上位剣士・炎柱の「煉獄杏寿郎(れんごく きょうじゅろう、ライオン髪の人)」とともに、「下弦の壱」と「上弦の参」の鬼との壮絶な戦いが繰り広げられます。
ネットではこのアニメの残虐性について賛否両論です。映画はPG12指定で、12歳未満の子供の観覧には保護者の助言・指導が必要になります。
アニメの第一話は主人公の家族が惨殺されるシーンから始まります。その凄惨な描写に目を逸らしたくなりますし、そのときの私の表情も「うわー」となりました。
アニメ、映画のどちらに対しても否定的な声はその残虐性に集まっています。一方で肯定的な意見の中には「残虐性が焦点ではない」「残酷で容赦のない世界にどう立ち向かうか」「あきらめない心」「友情や愛」「生と死への理解」「道徳観を成長させる」などが見られました。
そのあたりと、Aちゃんが何度か語っていた映像の素晴らしさも意識しながら映画を見てみたいと思います。
「映画のラストは号泣する」というレビューを見かけたので、ハンカチを準備しています。
たぶん、たくさんのやさしさにも出会える映画だと思うので、じっくり楽しみたいと思います。
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[感想]
やさしさは愛です。
号泣。
最終話まで必ず見届けます。
お気持ち嬉しいです。ありがとうございます✨