雨とあなたと私と。
頬にかかる雨にきづいて「あ、雨だね」とつぶやいた。
並んで歩いていたあなたは雨にまだ気づいていない。私は雨に気づくのが誰もよりも早い。
「ん? 降ってる?」
「うん。降ってるよ」
短い会話を交わし、二人で空を見上げる。
きつねの嫁入りだろうか。
空は青い。
だけどおでこに、まぶたに、ほんのわずかな感触。静かで細かい雨つぶを感じる。
「あぁ、降ってるね」
としばらくしてあなたが言った。
「いつも気づくの早いね」
とあなたは笑う。
何度同じ会話をしたんだろうな。でも何度でもあなたは最後に笑ってくれる。その笑顔にいつもなぜだかホッとする。
「手をつなごうよ」
って私があなたに向けて手を差し出した。
「いいよ」
あなたの大きな手が私の小さな手をぎゅっと握ってくれた。
つないだ二人の手にパラパラと雨が落ちてきた。
少し足を速めてあなたが歩きだす。いつもは私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれるあなただけど、雨が降ってきたときは速足になるよね。だから私はたまにちょっと小走りになる。
でも今日はすぐ雨は止むよ。
だってほら、こんなに晴れてるじゃない。
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