たくさんの小さな思い出
こんにちは☺︎
エッセイ投稿します!
大切な花の話です。読んでいただけたら嬉しいです☺️
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ある時、結婚式で持ったブーケから、小さな新芽が出ているのを見つけた。ドライフラワーにしようと吊るしていたのだ。
私は驚いて、夫を呼んだ。夫も芽を見てびっくりしたようだった。私たちは、なんとかして育てたいと話しをした。私は後日、新芽がある程度伸びてから切り、水に根元を少しつけてから、プランターの土に植え付けた。新芽は少し多肉植物のような葉をしていた。1つだけではなく何本か出ていたので、もしかしたら1本くらいは育つかなと考えた。ただ一方で、何の花かわからなかったので育て方を調べようがなく、すべて枯れてしまっても仕方ないと覚悟もしていた。ブーケの写真を見返してみたが、どの植物の葉っぱなのか判別できなかった。何日かが経った。確か4〜5本植えたうちの、1本は根付かずにしおれてしまったと思う。その1本はこの時点で元気がなかった気がする。ただ他の株は植えた時と変わらずぴんとしていて、もしかしたら根付いたのかなと、私は少し期待を覚えた。そのあと何週間か経つと、植えたばかりの当時の写真と比べて、明らかに成長していると分かるようになった。私はすごく嬉しくて、夫に見せた。夫は植物に特別興味があるタイプではないが、見て喜んでくれた。
芽を発見したのは、寒い時期だったと思う。12月くらいだっただろうか。それから3ヶ月が経ち、年が明けて2月になった。芽はぐんぐん成長し、他の植物でいうと開花時期のチューリップの背丈くらいになった。その頃までには、ブーケを作ってくれた方に連絡し、植物の名前がカランコエだということが分かっていた。初めて聞いた花の名前だった。検索すると、小さな花が集まって咲いている写真がたくさん出てきた。ブーケの写真を見返すと、オレンジ色の花がカランコエのようで、調べて出てきた写真と同じ形をしていた。花言葉は「あなたを守る」「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」。カランコエはこの寒い時期に蕾をつけた。初めて見つけた時は興奮して、近くで何度も見て確認し、写真をたくさん撮った。
このころ、私はよく仕事のことで悩み夫に相談していた。私は大人しそうな顔をしているが、頑固で気難しく、結婚相手としては扱いづらい面倒なタイプだと思う。この時期も、悩みながらも結局仕事を辞めなかったり、夫に八つ当たりして傷つけたりした。夫は夫で安定して仕事に忙殺されていて、家では憂鬱そうにしていることもままあった。私たちはまだまだ未熟で、何事にも余裕がなかった。毎日を過ごすことに必死だった。ただそれでも、2人で家にいて話しているだけで私には癒しの時間となっていたし、記念日を祝ったり、たまにはどこかに出かけたりした。
カランコエの蕾がついた後、なかなか花が咲かず、私はやきもきしながら毎日様子をみた。蕾は少しずつふくらみ、すっかり暖かくなった4月か5月のある日に初めのひとつが花開いた。カランコエは、たくさんの花が集まって咲くうち、一気に咲くのではなく順番に少しずつ開いていくのだ。それから毎年寒い時期に、鮮やかなオレンジ色の花を咲かせてくれている。私たちは変わらずに一緒にいて、寄りかかりあいながら何とか頑張っている。今年も花が咲き始めたので、私は夫に、おばあちゃんになってもうすぐ死ぬ時にもカランコエの心配をしていそうだなあという話をした。夫は、自分たちが死んだら花も一緒に燃やしてもらおうと答えた。私は、いくらかは欲しい人に譲って、残りは夫の言う通り、棺桶に入れてもらうのもいいなと考えた。私たちにとって、まだまだリアリティのない想像上の話だ。
小さいけど大切な思い出が詰まった花が、この先も毎年咲いてくれたらいいなと思っている。
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