高い壷を売る商売
関わる人を幸せにしたいとか、家族のためにとか、仕事関係者のためにとか、お店の発展のためにとか、武道館に行くため、夢のため、あげくには、お金をもらってるくせにハッキリと言う人もいる、「自分のため」と。
「立場が上がれば上がるほど、色んなことを考えて働くのが商売人だけど、これをさ、お金を払ってくれるお客さんに当然のようにアピールする人が最近増えたよね。それが自分の魅力だとでも思ってんのかな。図々しいなって思う」
商売人は、目の前の、お金を払ってくれるお客さんのために働くというのが最優先、というよりは、最優先であるように魅せないといけない。心の中では「自分のために」でもいい。でも、見せてはいけない。
とくに人気商売はそう。
自分が商品なのだから、嘘でもいいから「お客さんのために」と言っておかないと。
わたしが好きになる人は、みんなわたしのために歌ってくれる人だし、わたしのために本を書いてくれる人だし、わたしのために何かを尽くしてくれる人。
そう思えない人に、お金を払う価値なんてない。
「応援してください」
は?
お金払ってるのこっちだから、あなたがわたしを応援するべきじゃないの?
家族のため? 夢のため? あっそう、じゃあ頑張ってね。
わたしはわたしのために歌ってくれる人が好きだから。
音楽ライブにしろ、トークライブにしろ、一流と言われる人は、必ず目の前のお客さんのためのライブをする。
もっと見た方がいい、知った方がいい、一流を。一流とはなにかを。
どう楽しませるか。
どう笑わせるか。
どう感動させるか。
そればかり考えているような人。
「一流だからそれができるんだろう」
そうじゃないんだけどな。一流とは何かが分かっている人は、早い段階からそうしてる。一流になる素質をしっかり持ってる。
「【武道館行きます!】みたいなさ、夢を語ることが魅力だと勘違いしてる奴もいてさ、ファッション武道館って呼んでんだけど、行動が伴っていればいいけど、全然客呼ぼうとしてないし、あきらかな嘘なの。バカなアーティストってさ、高い壷売るような仕事してるよね」
この壺は〜とても価値があり〜
自らの価値をいかに高く見せるかに躍起になるアーティスト。
【チケ代上げても魅力があれば客は来る】
それは二流の発想で、一流を知る客はモノの価値が分かる人なので、「欲深いな。このクオリティーでこの値段はない。金稼ぎに走ったか」と、呆れて来なくなる。
そして一流は、
【値段が安ければ色んなお客さんが気軽に来てくれる】
と考え、それを実行し続けられるように、時には自腹を切ってでも行う。
客のために頑張る人を、客は「頑張っている人」と判断するので、応援する人が増える。
自分のために頑張って、特別な技術や能力を身につけたところで、誰からも求めなれなければそれは無価値。
会社勤めをしている人なら分かる。
「俺はこんなにすごい能力があるんだ。だから俺を使うには高い金払え」
と、会社の中でアピールする社員を、誰が使うだろうか。会社は会社のために働いてくれる社員を求めるし、それに対してお金を払う。
「じゃあ、独立すれば?」
【優秀な人ほど独立する】
と、わたしと同じ苗字の人がよく言ってるけど、独立したところで、考え方が変わらなければ社会も同じ。人様のために、人様に必要とされるように生きなければ、最初は上手くいっても、そのうち飽きられて行き詰まる。
どうすれば使ってもらえるか。
どうすれば必要としてもらえるか。
自分の価値は、他人が決める。
自分の価値は、自分で決めるものじゃない。
「まぁ人気商売だとさ、自分の価値を自分で決めなきゃいけないから大変だよね。高い壷だと思われないような値段つけなきゃね」
一流を知って、二流を目指すのか。
一流を知ってるなら、一流を目指すのか。
より多くの人から必要とされる人に、価値がある。