ダークスレイヤーの帰還、永劫回帰獄(ネザーメア)の戦士を読んだ感想。

まず、世界観を重視するならその構築くらいは丁寧にやれよ、という印象だった。

二点挙げる。

まず一つ目。

『全ては同じ事の繰り返しで意味が無いように見える。なのに無限世界は上から下まで結局は力で御されてこれもまた意味がない。この愚かな仕組みを作ったものを見つけ、倒すべきならそうしたい』

と、まあ文中の主人公らしき人物が言うのだが、その人物自体が現状打破のために倒すだのなんだのと宣うわけだ。ここには大きな矛盾がある事はわかるだろう。

次に二つ目。

『永劫回帰獄の四方を統べる四人の王にして騎士は、それぞれが主物質界に永遠に災いをもたらすとして封印されたと伝わる。彼らは死、疫病、天災、飢餓、戦争、勝利を得んとする心、などを司るとされている』

とある。

これはまあ正直いって綺麗じゃないなという感想を抱いた。

四方を統べる四人の王にして騎士とあるのだから、彼らが司る災いも大別して4つに出来ないものかね?四方を統べる四人の王にして騎士、六つの災い!では締まらない。

この奇妙な引っ掛かりというか「汚さ」は、蛇足のせいだと思われる。

この四人の騎士なんちゃらという話のモデルはヨハネの黙示録の四騎士でほぼ間違いない。

第一の騎士
『ヨハネの黙示録』第6章第2節に記される、第一の封印が解かれた時に現れる騎士。白い馬に乗っており、手には弓を、また頭に冠を被っている。勝利の上の勝利(支配)を得る役目を担っているとされる。

第二の騎士
『ヨハネの黙示録』第6章第4節に記される、第二の封印が解かれた時に現れる騎士。赤い馬に乗っており、手に大きな剣を握っている。地上の人間に戦争を起こさせる役目を担っているとされる。

第三の騎士
『ヨハネの黙示録』第6章第6節に記される、第三の封印が解かれた時に現れる騎士。黒い馬に乗っており、手には食料を制限するための天秤を持っている。地上に飢饉をもたらす役目を担っているとされる。

第四の騎士
『ヨハネの黙示録』第6章第8節に記される、第四の封印が解かれた時に現れる騎士。青白い馬(蒼ざめた馬)に乗った「死」で、側に黄泉(ハデス)を連れている。疫病や野獣をもちいて、地上の人間を死に至らしめる役目を担っているとされる。

(ウィキペディアより抜粋)

支配、戦争、飢餓、疫病!

どれもこれもが人間を死に誘う厄だと言える。

しかしここに作者は死と天災を加えた。

オリジナリティを出したかったのかもしれないが、蛇足に思えて仕方ない。

まずは死。

災いの帰結する所が死であるのだから、いまさら大分類として挙げる必要はない。

そして天災。

これを挙げるのなら、飢餓や疫病あたりは要らないな。なぜなら天災の結果としてこれらの厄が引き起こされる事が多いからだ。まあ疫病あたりの解釈は微妙だが。少なくとも飢餓はそうだね。

ちなみに一つ目については、俺と同じ様にひっかかった人がいるらしくて、この様に述べている。

以下引用。

『全ては同じ事の繰り返しで意味が無いように見える。なのに無限世界は上から下まで結局は力で御されてこれもまた意味がない』

だから黒衣の男は、そんな「愚かな仕組み」を作った黒幕がいるならどうにかしなければ、と旅立ったわけですよね。必要ならば倒そうとすら考えて。

しかし、倒すというのも結局力で御すということでは?
力以外の何か、例えば弁舌か何かで説得するにせよ、それは無形の力であり、力であることには変わりありません。

力による支配を基軸とした「愚かな仕組み」を打破するのに、力を使ってしまうというのも何やら萎える話です。この抵抗のパラドックスをどのようにして解決するのかが気になります。

この辺りは後々しっかり筋の通った説明がされるんでしょうかね。』

これは確かにその通りだ。

それに対して作者はこの様に返答している。

以下引用。

『ありがとうございます!
そこに一番気付いてほしい所でしたので、こういうコメントは嬉しいですね。
果たしていかなる解や真相が示されていくのか、長い物語ですが楽しみにしていただけたらよいと思います。
とりあえず、
・彼は自分が愚かな仕組みの一部であることをよく理解しているので、黄金の騎士の問いにため息をつき、彼さえ殺していません。
・本格ファンタジーは『一つの時代の終わり』が描かれる物語です。
・美女多い物語ですが、なぜ多いのか?
あたりを考察していただけたらと。』

これは要するに後出しするから今は説明しないよって事だ。

であるなら文中であえてみずからその矛盾を示唆し、少なくとも謎が一つは存在する事を読者に伝えるのが普通だと思う。敢えて矛盾を書くのならば、『これこれこういう所が矛盾あるけど、それには理由があります』というような、思考の導線くらいは敷くよ普通。これは想像だが、そもそも作者はその矛盾について考えてもいなかったのだろうな、と思われる。

まあ実際はどうか分からないが、俺は謎が明かされる事を期待していない。

だがそこまではいいとして、さらに謎なのはこれだ。

1.彼は自分が愚かな仕組みの一部であることをよく理解しているので、黄金の騎士の問いにため息をつき、彼さえ殺していません。
2.本格ファンタジーは『一つの時代の終わり』が描かれる物語です。
3.美女多い物語ですが、なぜ多いのか?

この3つの回答に対してコメントをした読者が抱く事はただ一つであろう。

「で?だからなんだよ」

これが適切に思われる。

特に3だ。

女が多いからといって、だからなんなんだ?

その美女が登場してもいない状態で考察もクソもできるかよ、となる。

各部の整合性のとれなさ、作者の反応。
これらを様々に考慮して、以下の評価を下す。

48点/100点


これはあくまで俺の感想、印象であることもここに書き記す。

ちなみに、一番謎なのは

許可なき転載の禁止、引用・スクショをする際には事前の調整をいただくよう記載しています、などと言う抗議文がきた事だ。

これについて前回の記事から引用し、この様に返す。

『引用については名輿文庫様の規約よりも著作権法32条1項が優越します。サイト上でどれだけ「無断引用禁止」と書かれていようが、上記引用要件を満たす限りは無断で使用可能です。よって当方は本記事の削除、あるいは変更の要を認めません』

以上!!ダークスレイヤーの帰還、永劫回帰獄(ネザーメア)の戦士に対しての感想でした。


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