「自然」と触れ、「命」を頂く
自然環境リテラシー学 川コース 第2回
2022年 7月2〜3日
こんにちは。
今回のリテラシー学では、キャンプinn海山を拠点として、三重県南部にある奇跡の川「銚子川」を満喫し尽くしました。
「奇跡の川、銚子川」。最初は正直ちょっと大きく出過ぎているのではないのか?と思っていました。例え透明度が高いと言えど、そうでもないだろうと高を括っていたものの、そんな考えは現地に着いた瞬間に吹き飛びました。
最初に訪れたのは、まいこみ淵と呼ばれる銚子川の河口のところでした。私が見てきた中で、河口付近は川の流れの最終地点であり、なおかつ海からの水が流れ込んでくるためゴミが浮いていたり、水が濁っていたりと、正直なところ綺麗な場所というイメージはありませんでした。しかし、銚子川の河口は驚くほどに透明で、パッと見ただけでは川の中流、もしくは上流付近と勘違いしていまいそうな程でした。
実際に川の中に入ってみると、夏の暑さを忘れるほど冷たく、そして数多くの生き物に満ち溢れていることに気付きました。特に水温については、やはり上流の水なのではないかと疑う程冷たく、ずっと入っていると風邪を引いてしまいそうになりました。また、淡水と海水が混ざり合うことで発生する「ゆらゆら帯」と呼ばれているものを実際に見ることができたのは、とても嬉しかったです。
しかし、日本の多くの川でもこの現象が起こっているにもかかわらず、川の汚れの影響で見ることができていないというお話を聞き、人の活動の影響でこんなにも素晴らしい現象を見えなくしてしまっていると思うと、複雑な気持ちになりました。
銚子川の生き物の観察と、ゆらゆら帯の観察を終えた後は、川でのレスキュー訓練を行いました。川でのレスキューは、救助する人が川の中に入らないのという点が重要である、という点がとても印象的でした。人が目の前で溺れているところを実際に見ると、どうしても直接その人のところへ向かわなくては、と考えてしまいがちです。しかし、それは要救助者のみならず、救助をする人の命までも失いかねない危険な行動であるということを、今回のリテラシー学で改めて学びました。
今回の救助訓練で用いた道具は「スローロープ」と呼ばれる、一見ごく普通のロープの先に大きなプラスチック製の浮きがついたものでした。使い方としては、要救助者のところへ浮きを投げ込み、ロープを手繰り寄せることで要救助者を岸まで引っ張ってくるという簡単なもの。ただ、それをいざ使うとなると、考えていたほど簡単なものではありませんでした。
何がそんなにも難しいのか、それは要救助者のいるところに浮きを投げ込むというものでした。ボールのように投げられるようなものではなく、カウボーイが使っている縄のようにして投げ込むため、コントロールをすることが至難の業でした。私が実際にやった時は、要救助者として川に入っていたペアの顔面に当ててしまい、「コントロールが全く効かない…」と驚きました。
浮きを投げ込むという事に加え、岸まで引っ張ってくるということも、難しいと思ったポイントでした。川には常に流れがあり、要救助者はその流れに乗ってどんどん流されていきます。この時、ただロープを引っ張っているだけだと、ロープが要救助者の首に引っかかってしまいそうになってしまいました。例え川底が浅く、いざとなったら直ぐに安全策を講じることができるようになっていると言えど、首にロープが引っかかってしまいそうになった時は非常に焦りました。
(顔面に浮きを当ててしまったり、ロープを首に引っかけそうになってしまったりと、ペアの人には本当に申し訳ないことをしてしまいました…)
レスキュー訓練を通して、やはりいざという時のために一度レスキューを経験しておくということが重要だと思いました。資料や講演など、レスキューの手法を学ぶ機会というものは多いと思います。しかし、ただ見たり聞いたりしただけでは、実際にうまく行動するということが不可能であるということを、身をもって実感しました。川は私たちの生活の中でとても身近な存在であり、なおかつ多くの命を飲み込んできた、脅威の存在でもあります。川を「脅威」の存在ではなく、「自然とのふれあい」となる存在にするためにも、今回のような訓練を経験しておく必要があると思いました。
キャンプinn海山へ
まいこみ淵での生物観察やレスキュー訓練、ゆらゆら層の観察などの活動を終えた後、キャンプinn海山へ徒歩で向かいました。その間の道のりは、連日の猛暑が嘘のようなほどに涼しく、そして見渡す限りの緑に囲まれ、とても気持ちの良いものでした。まいこみ淵からキャンプinn海山までは、歩いて行くと50分程かかる道のりですが、この大自然の空気は、車を使っては肌で直接感じることができない貴重なものだと思います。
キャンプinn海山に着くと、すぐ傍を爽やかな音を立てて流れる銚子川、そしてその両脇に青々と生い茂る木々に目を奪われました。今まで川原のある場所に行ったことがなく、写真で見たことしかなかったため、思わず見入ってしまいました。
着いてすぐに声を掛けてくれたのは、キャンプinn海山の支配人を務め、とても優しい「校長先生」こと田上さんでした。小さなバイクに乗り、颯爽と傍を通り過ぎていく姿は、格好いいとも、可愛らしいとも思いました。田上さんが私たちにお話しされたことは、面白く、そして銚子川を思うその気持ちがとても伝わってくる内容でした。特に、なぜ銚子川がここまでの透明度を誇るのかについて、滝壺で作られた丸みを帯びる石が、濾過装置の役割を果たすから透明な水になるという内容を聞いた時は、思わず「なるほど」と呟いてしまいました。銚子川を構成する多くの要因が、偶然にもこの川の水を綺麗なものにしている。確かに銚子川は「奇跡の川」と呼ばれるに相応しい川だと思いました。
「自然」から命を頂く
私が1日目のキャンプinn海山で1番楽しみにしていたのは、エビを採って食べるという活動でした。
田上さんが簡単にエビのいる所と採り方をレクチャーしてくださった後に、やる気満々で川へ繰り出したものの、全く採れないという何とも言えない事態に陥りました。そんな中、すぐ隣では大量にエビを捕まえている人もいて、何でなんだろうか?と思いつつエビを探していました(日頃の行いがそんなに悪かったんでしょうかねぇ…)。しかし、終わってみれば2匹獲れたので、ちょっと嬉しかったです。
エビ採りを終え、川から上がった後すぐにエビの調理が始まりました。味付けは塩のみのシンプルなもの。エビは指先にちょこんと乗るくらいの小ささです。しかし、口に入れた瞬間、想像を遥かに上回るエビの美味しさと、ほのかな川の香りが口いっぱいに広がりました。今まで食べたことのない、採れたてだからこそ味わえる美味しさだと思います。
その美味しさに加えて、1つ思ったことがありました。それは「命」のありがたみです。
今回食べたエビは、生きていたものをさっと加熱したものでした。言い方を変えると、「目の前で、今まさに生きていたものの命を頂いた」という形になります。
調理する前、生きたまま加熱するのは可哀想だとと思いました。しかし、私という1つの生き物が生きているということは、毎日他の生き物の命を頂いているということになります。他の生き物の命を貰って、自らの命の糧にする。スーパーでお肉やお魚を手軽に買えるようになった今となっては忘れてしまいそうな、しかし1番忘れてはいけないことを、もう一度思い出すことができました。
雨の中目指す、銚子川の上流
2日目は生憎の雨となり、予定通りの活動ができるのだろうか、と不安な思いを覚えながらのスタートとなりました。
最初に、魚飛渓を目指して歩きました。途中、シロスジカミキリの実物を見ることができたのが、何気に興奮した出来事です。
魚飛渓に着くと、そこに広がるのはまるで人の立ち入ることのない秘境のような風景でした。
実際にこんなにも神秘的な景色を見たことがなかったので、ここまで歩いてきた疲れもどこかへ消え、思わず息を呑んでしまいました。
川の中には小指の爪程から手のひら程の大きさの魚が悠々と泳ぎ回っていて、その傍を悠々とメンバーの方々が泳いでいたので、これぞ自然とひとつになるということだ!と心の中で思いました。私は濡れてもいいような靴を履いてこなかったので、川の中に入れませんでした。ちょっと後悔しています…
川の中には入れなかったものの、川岸にいる生き物を観察したり、水切りをしたり、大きな岩を乗り越えてみたりと、小学生の頃に戻れた気持ちがしてとても楽しかったです。今度は濡れてもいい靴を持って、川に入りに来たいと思います。
シーカヤックとは一味違う
チームワーク必須のカナディアンカヌー
魚飛渓からキャンプinn海山に戻ってきた後に、今回の実習で最後のアクティビティであるカナディアンカヌーに挑戦しました。
カナディアンカヌーと聞いて、シーカヤックと殆ど勝手は一緒だろうと思っていたら、全く違う扱い方をしていたので、驚きました。特に、パドルの水をかく部分が片方にしかないため、ただ水をかいているだけだと真っ直ぐ進めないという点が難しいポイントでした。
更に、今回カナディアンカヌーに3人で乗ったため、上手く声をかけて漕がないと、思った方向に進めないというところも難しいポイントだと思います。しかし、慣れてくるとチームの息も合ってきて、とてもスムーズに進むことができました。
カナディアンカヌーに乗ったあとは、伏流水が出てきているポイントに向かいました。
そのポイントに到着して、川の中に入ってみると、水が他と比べ物にならないほどに冷たく、そして透き通っていました。頭から伏流水の出ている付近の川の水を被ると、まるで冷蔵庫にずっとしまってあった水をかぶっているのかと勘違いしてしまうほどに冷たかったです。
ここにも魚やエビが沢山いて、グループのメンバーからゴーグルを借りて潜ってみると、岩の影に数えきれないほどの魚やエビが隠れていて、思わず岩陰に頭を突っ込んで生き物をより近くで見てみたくなってしまいました。
自然と触れ合って…
今回のリテラシー学では、大自然と思う存分に触れ合い感じることができたと思います。加えて、人工物に囲まれた普段の生活では忘れてしまいそうな大事な事にも気づくこともできました。
その中で、ただ楽しむだけでなく、この素晴らしい自然を保全していく大切さにも目を向けることができたと思います。多くの人がこの自然を体験してくれるということは、とても喜ばしいことであると思いますが、その影響でゴミが捨てられてしまったりして、環境が破壊されてしまう可能性があると思うと、逆に人が来ない方がいいのか?とも思ってしまいます。
「守る」ことはとても大変なことですが、「壊す」ことは容易いことです。私たちは、この地球の「支配者」ではなく、多くの自然と生き物が暮らす地球にいる1つの「生き物」です。この地球にある自然を開発やゴミの投棄などによって「壊す」のではなく、生き物として自然と共存し、この環境を「守る」ことがこれからの人々にとって必要になってくると思います。
◯今回お世話になった施設
・キャンプinn海山 さん
〒519-3408
三重県北牟婁郡紀北町便ノ山271番地
https://camp-inn-miyama.com/