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月灯りのうた-moonlit
「月明かりの下では物事は 日光の下とは全く違って見える」
というトーマスマンさんの紡ぐことばがすごく好き。
日光の下では決して気づかれることのなく、見逃されてしまうような意志ある者たちの、声にならない確かな言葉や、
確かに感じる多くの不自然さや違和感を、
また、どうしても傷み続けてしまう、抉られるような心の痛みをも。
きっと、月灯りは、静かに強く、温かい光で、それらを鮮やかに照らし出し、やさしく包み込んでくれるだろう。
そう、全部。
あの時、言葉になりきれなかった想いをも、
束の間の感情の突風によって簡単に攫われてしまう程に密度の小さかった今まで私が持ち合わせていた勇気の呆気なさも、
僅かに吹く風にさえ、ゆらゆらと不安定に揺れ動いてしまう私の意思をも、
私が受け入れきれない、愛しきれない限りないものをも。
ここにあるもの全てを覆うように、
月は、愛してくれる。
光がここに存在しているから。
光をここで感じることができるから。
アンデルセンさんは、『絵のない絵本』の中で、「月が人をやさしく照らす」という描写を「キスをする」という言葉で現す。
この表現がきっと、とてもよく似合っている。
月灯りの下で、
柔らかくやさしい月の光を独り身に纏って、
はなしをしよう。
わたしは、わたしのことばで。
きみは、きみのことばで。
月の光がやさしく真実を照らし出してくれる。
きっと、真実というものは、平和で、尊く、愛に溢れたものだと思うの。
現在に、どんなに破壊的な痛みが伴っていても、今居る世界がどんなに窮屈に感じられていても、
不確かな社会の中で必死に紡ぎ出す「大丈夫」という言葉ではなく、
確かな「大丈夫」という「光」が存在しているから。
美しくて、尊べるものがこの世界には溢れているから。
ちゃんと、ここに存在しているから。
ちゃんと、今、感じることができるから。
信じている。
世界と人、そして心の土壌をもかたちつくった存在の偉大さを。
世界は、どこまでも、広く、広がっていることを。わたしが私のままでも、自由に、飛び回れる程には十分すぎるほどに。
そして、よりよいことばが知り得ないほどに無数に溢れ、存在していることを。
それらが、人の心に想いと喜びを見出すことを。
あのね、きみ(月)のやさしい光に包まれて、
お喋りをしていたら、決心がついたみたいなの。
深呼吸して、じっとして。
ー今夜は おやすみ。
明日は 太陽の光の下で会おうね。
"決心ができていれば、あなたの心にのしかかるたいていの問題は、太陽の前の霧のように立ち消えてしまうものだ。"
-カール・ヒルティ