苗字の話
あんたに言っておくことがあるんだよ。
うん、なんだい?
今は渡邊姓を名乗ってるけど、お父さんはもともとは別の姓だったのはわかっているよね?
うん、わかってるよ、父は孤児だったので里子に出されてそこで受けてくれた家が渡邊という家だったことも知ってる。
大塚という名前が父の名前でした。
父がわかっていたことでした。
大塚の名前を持って島根から中国にわたりそこで置いたいかれた孤児だったのです。
あんたのおばあちゃんは、七崎という姓を名乗っていなかったのはわかってる?
わかってるよ。病院に入院していた時に木村という名前を名乗っていたから。
木村姓だったよね。
私は、小学校の頃は木村を名乗っていたんだよ
そうなんだね。
それが突然に兄のあんたの叔父が七崎姓を名乗り始めたんだよ。
突然?
その理由が、兄の父が七崎という男性だったことがわかったからなんだよ。
七崎という男性が父だったはずだけど、結婚はせずにおそらく男性が逃げたのか、
おばあちゃんが逃げたのかわからないけど、認知したんだね。
それで、兄は七崎の姓を名乗った。
数年は兄と違う姓だったのだけど、根室にその男性がやってきて私も面倒を見ると言い、私も中学に上がる前に七崎姓を名乗り始めたんだよ
なるほど・・・
13歳から結婚するまでは七崎姓を名乗ったんだよ。
おばあちゃんは、旧姓の木村を名乗っていた。
なるほど。わかったよ。
ところが、中学二年の時に田中という男性がきた。
うん、田中??新しい男性だね。
その男性は、私の父だと言い始めて、中2の私は田中の戸籍にはいるように言われ、七崎から、一時期田中を名乗っていたんだ。
え?つまり、木村から、七崎になり、そのあと田中になったということなの?
そうなんだよ。田中という男性はどうやら東京の政治家だったらしい。その田中が私の父で、兄は七崎という男性だということが真相だったと思う。
兄とは異父兄弟だったんだよ。
私は田中さんに数年預けられたけど、嫌で帰ってきてしまった。それで再度七崎姓を名乗ったんだよ。
事実だけど、だれにも話したことはなかった。
もうすぐあの世だからね。真実はだれかに言っておきたくて。
わかったよ。ちゃんと覚えているから。忘れないよ。名前だけの問題だからさ、大した問題じゃないよ。
そういうと目をつぶって考えているようでした