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往診

もう何年も前の話ですが、うちで依頼している往診の鍼灸師が数名いるのですが、当時いた一人の女性から、あの往診の依頼があったおうちには、行けませんと言われたことがあります。

え??どうしたの?なにか問題が?

すごいにおいが私ダメで・・

におい?

はい・・・特に悪臭というわけじゃないんです。その家その家にある独特のにおいなんですが、そこの家の匂いだけは受け入れられなくって終わった後に、どうしても気持ち悪くて車の中で、発進する前にしばらく時間がかかってしまいます。

なるほど。そういう事か・・・

先生は、わからないかもしれません、男性だし特にほかのおうちの匂いって気にならないのかもしれません。

私は我慢ができないのです。

なので、この仕事からはおろしていただきたいのです。

・・・・・わかったよ、じゃ君はいかなくていい。

ありがとうございます。

こんな事が以前ありました。

僕も匂いは敏感なので、気持ちはわからないでもないですが、医療職としてどうなのでしょうか?という気持ちも同時にあります。

昔往診は、僕もしたことはあります。

2~3年にわたって、週に2回ほど行っていた高齢者の家がありました。

開業したばかりのころです。

寝たきりの男性でした。奥さんと二人暮らしです。

寝たきりでお風呂も入ってない状態でしたので、初めて行ったときは部屋の中の匂いは強烈でした。

お風呂にはいつはいりましたか?奥さんに聞きました。

ずっと入っていません。体をタオルで拭いたりはしています。

もう30年も前です。介護保険も十分に機能していない状態でしたので、まだまだこんな家は沢山あったと思います。

まず衛生的にしなきゃさ、お風呂沸かせる?

はい、お湯をはるだけだから大丈夫です。やれますよ。

じゃお湯を入れてきてください。僕は服を脱がせます。抱き上げていきますから。

わかりました。

まだ20歳代の正義感の強い時代です。こんな状態の高齢者を置いておけません。

僕も下着だけになって、悪戦苦闘でお風呂にいれたのです。

先生、ありがとう、お金はきちんと市に請求してくださいよ。

うん、わかったよ。

介護従事者ではないので、お風呂にいれたからといって請求ができるわけじゃありません。

まったくのボランティアでした。

そんな週1回のお風呂を3年の間やっていたのです。


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