リハビリテーション科
脳外科のリハビリテーション科に勤務しているときには、毎週水曜の午後から義肢装具の会社のおじさんがやってきていました。
脳血管障害で体が不自由になった人の為の装具などを作成するのです。
もちろん、その日すぐにというわけにはいきませんので、リハビリテーション科と共同で、どんな装具がいいか、どんな義肢がいいのか、検討をします。
といっても、70近くなるこのおじさんは50年近い経験があり、患者さんを一目見るだけで、こんな装具とか義肢はどうかなと提案をしてくれて、リハビリテーション科の先生たちはすべて丸投げでした。
渡邊先生、どんな世界もだけどやはり経験を積まないとダメだよね。その人その人の生活を聞いて、どんな風に家で過ごすのか、椅子の生活の人もいれば床の生活の人もいる。それによって装具の作り方も違うんだよ。
はじめて聞く言葉に感心することしきりでした。
いつもこのおじさんが週に一度やってくるのが楽しみで、水曜の午後はこのおじさんが数名の患者さんの装具を提案して、了承をとると制作するためにその人の体形を測り、体重をはかり写真を撮り、会社の制作部にもっていくのです。
出来上がった装具を患者さんに装着するときも、片足を切除してしまった方もれば、腕が麻痺で使えなくなった人など様々な人に装着し、その人がどんどん笑顔になっていくのが素敵でした。
残った残存の能力を上げていくこともリハビリ、新しく使えるように装具などを装着することもリハビリなんだよ。
決まった形などないんだからさ。
そう言ったおじさんの笑顔が素敵な人だなと思ったものです。
義肢装具士の資格者はなかなか少なく、養成する学校も少ないのです。
北海道には北海道科学大が義肢装具の専門科があり、今はコンピューターと連動するような新しい装具を開発したり、大学の機械科と共同で研究したりもしているのです。
この分野にもどんどん若い人が進出してほしいと思います。