出る杭は打たれる・笛吹けど踊らず
旧産炭地の荒れた学校で四面楚歌
わたしが新任教員として赴任した小学校は全校児童百数十人の一学年一クラスの小規模の学校でした。その学校は炭鉱が栄えた時代に炭鉱の会社が設立した私立の小学校でした。しかし、炭鉱が閉山してから児童数も減り地元の町が運営していました。
元炭鉱住宅の町営住宅に住む人々は定職に就いて生活していない人が多く、生活が荒れていました。わたしの担任した3年生の9割が生活保護・準用保護家庭でした。
保護者が反社会的勢力の構成員だったり覚醒剤使用者だったり服役中だったりしました。大学卒の保護者は一人もおらず公務員も皆無でした。
また、母子家庭・父子家庭の一人親家庭が大半で、両親揃っていてもバツイチバツ二の家庭が多くいました。働く意欲のある保護者の家庭は珍しく、偽装離婚をして生活保護費を不正受給している家庭もありました。
血のつながっていない父親に虐待をされている児童もいました。
こんな小学校が日本にしかも隣町にあるのかとびっくりし、カルチャーショックを受けました。日本一厳しい小学校として関西の大学の教授が校区の調査に来たこともあるそうでした。
けんか・仲間はずれ・いじめ
学校では道徳の時間にEテレを見せるのはいい方で、計算ドリルを解かせるなど道徳の授業をしている学級はありませんでした。
けんか・仲間はずれ・いじめは日常茶飯事で指導が難しく人権感覚・心の教育が全く育っていない子どもたちを前にしてどうしていいか分からないまま毎日が過ぎました。
その当時は今みたいに新任教員のための指導教官がおらず、同学年がなくサポートしてくれる先輩教員もいなくて一人で何もかもしなくてはいけなくて暗中模索と四面楚歌という状況でした。
見せかけの教育に疑問を持つ
ベテラン教員・先輩教員はお行儀・学習規律など見せかけ上っ面だけを重視する教育を実践していました。
わたしは教育実戦経験もなく本も読んでおらず理論があるわけでもなかったですが、学習規律や学力よりも心の教育が大切だという直感・信念みたいなものを感じていました。
骨を埋める覚悟
この学校に赴任したら貧乏くじを引いたか島流しに遭ったという感じの中、誰もがどうにかして直ぐにでもこの荒れた学校を転出したいという現場でした。
わたしもこの学校から出てまともな環境の校区にある学校で勤務したいと思うこともありました。
でも逃げ腰では学校を建て直すことは無理だと感じ、この校区の住民になってでも地域・学校をよくしてこの学校に骨を埋める覚悟でいました。
和が大切
この荒れた地域・学校・子どもたちをかけて行くにはまず学級の和・学校の和を醸成していくことが大切だと痛感しました。
そのためにはまず、バラバラの職員の和が第一歩だと感じ、職員会議の場で
「職員がまとまらないと子どものいじめはなくなりませんよ。子どもたちは職員室に来たときなどに職員の雰囲気を見て見ぬふりをしながら、よく見て感じ取っていますよ。職員がまとまることが大事です。」
「学習規律・学力よりも心の教育が大切です。」
と校長を始め全職員を前にして2年目の新米教員が抑えきれない感情をあらわにして熱弁を振るっていました。
虚しい叫び
しかしながら熱弁を振るっても賛同する職員はおらず、どこの馬の骨か分からない若造が何を言うかという雰囲気のみで、他の若い教員の代弁者になるだけでした。
校長も賛同するところはあったかもしれないけれどプライドが高く具体的な手立てや行動はしてくれませんでした。
何日も経ってから職場の飲み会のときに「あんたのいっていることは正しい。」と言ってくれる先輩教員もいましたが、一人で笛吹けど周りの職員は踊らずでした。
正面からの正攻法は通用せず
ここで学んだことは、いくら会議で正論を言っても一人では何もできない変わらないということです。
若気の至りで正面から正攻法でいっても出る杭は打たれて一人でもがくだけでした。根回しして賛同者を増やしていく方法をとるべきだったということを失敗の中から学びました。
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