政府の創薬エコシステムサミット

今日は日経バイオテクに興味深い記事があったので、紹介してみたいと思います。
タイトルは
  『政府の創薬エコシステムサミット、岸田首相が「政府挙げ『創薬の地』実現へコミット」と宣言』
     です。

最近、創薬エコシステムという言葉を良く耳にしますが、これは一体何を表すのか。
創薬エコシステムは、医薬品の発見から開発、商業化に至るまでのプロセスを支えるさまざまな要素や関係者が互いに連携しているシステムを指します。そして発見された医薬品候補が商用化に至ればそこで利益が得られ、その利益を再び創薬のための投資に回すことができ、創薬から商用化までのプロセスを循環させることができます。つまりエコシステムになります。医薬品の創薬から商用化までには莫大な費用が必要なので、うまく循環するエコシステムが必要になるという訳です。
ちなみにチャットGPTに訊いたところ、創薬エコシステムに関与するプレーヤーとして以下の1から8が挙げられました。

1. **研究機関と大学**: 新しい治療法や薬剤の基本的な科学的知識や技術を提供します。基礎研究や前臨床研究が行われる場です。

2. **製薬企業**: 医薬品の開発、製造、商業化を行う企業で、薬の候補を見つけ、臨床試験を実施し、市場に投入します。

3. **バイオテクノロジー企業**: 新しい技術や治療法を開発する企業で、しばしば革新的なアプローチを提供します。

4. **規制機関**: 医薬品の安全性と効果を評価し、承認する機関(例: 米国のFDA、欧州のEMAなど)です。

5. **投資家とベンチャーキャピタル**: 新しい創薬プロジェクトに対して資金を提供することで、研究と開発をサポートします。

6. **医療機関と医師**: 臨床試験の実施や新薬の使用に関与し、治療の現場からのフィードバックを提供します。

7. **患者団体と患者**: 医薬品の利用者であり、そのニーズや体験に基づいて新薬の開発を方向づける役割を果たします。

8. **テクノロジー企業**: データ解析、AI、バイオインフォマティクスなどの技術を提供し、創薬プロセスの効率化を図ります。

さて、なんとなく創薬エコシステムがどんなものか分かったところで、実際にこの記事の中身を以下に要約します。

2024年7月30日に、厚労省、経産省、文科省、内閣府が共同で官民協議会『創薬エコシステムサミット』を開催した。

岸田首相は、「日本を世界の人々に貢献できる創薬の地とする。外国の製薬企業やVCを呼び込み、アカデミアやスタートアップのシーズを育て実用化するまで連続的な支援を行う環境・体制を日本に作っていく」と宣言した。

同日、内閣官房健康医療戦略室は、政策目標と工程表を公表した。
(私が個人的に印象的だったものだけを書きます)
・ドラッグロスの解消
・投資とイノベーションに関連して、創薬スタートアップの民間投資額を2023年の倍にする。
・企業価値100億円以上の創薬スタートアップを新たに10社以上輩出する。
・日本の都市が世界で10位以内の創薬エコシステムの地として評価される。

その他、
外資系企業、外国資金を呼び込む。
国内のイノベーション拠点または国内にイノベーション促進プログラムを有する外資系製薬企業の数を2028年までに14社(2023年の7社の倍)に増やす。

などが書かれていました。

元々、日本は創薬に強い国です。アメリカには全然敵わないのですが、ヨーロッパなどは欧州をひとまとめに数えれば日本より創薬が盛んといえますが、個々の欧州の国々と日本を比べれば日本は負けていません。しかし、日本特有の規制や語学の壁があるので、最近は欧米の有力な企業が日本で臨床開発を行わないケースが増えてきました。これがいわゆるドラッグラグやドラッグロスで、最先端の薬剤を日本人が使えないという現象がすでに起きています。また新型コロナの際には、日本発のワクチンであるとか中和抗体、あるいはその他の抗ウイルス薬が中々開発されませんでした。こうしたことを踏まえて、近年日本政府は創薬や医薬品の製造に力を入れ始めたように思います。しかし、一方で薬価を抑えているところもあるので、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようにも見えます。医療費や皆保険の維持の問題もあるなか、日本が創薬エコシステムの地となれるのか?
とりあえず、政府の目標は2028年に設定されているので、4年後に結果は判明するでしょう。

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