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平熱日記2024_Doors再訪

12月某日

松村雄策の晩年のエッセイ集を読んでいたら、久々にドアーズが聴きたくなった。松村さんは若いころからエッセイでドアーズを特別な存在として取り上げていた。自分で初めてバンドを組んだ時には「Break on throuth」をカバーしたと読んだことがある。バンド自体のお手本は多分ドアーズだったのではないだろうか。バンド名は自滅回路であり、実に文学的である。

私が持っているのは「1st」、「Strange Days」、「Morrison Hotel」、「Waiting for the sun」のオリジナル4枚とベスト盤1枚。「Soft Parade」、「LA Woman」、「Absolutely Live」」は未入手。死後にリリースされた「American Prayer」は大泉学園Hard Offで手に入れたのだが、グルーブに汚れがたまりまくっているようなひどい音で、いくらポリッシュしても改善されないので手放した。

ドアーズは私がロックを聴き始めた1970年代半ばにはすでに解散し、ボーカルのジムモリソンはこの世にはいなく、神格化された存在であった。ラジオでヒット曲が流れるということもなく、音は彼らに関する記事から想像するだけだった。想像すると、何やらものすごくおどろおどろしていて、センセーショナルで、文学的で、ドラッグにまみれたバンド、そしてボーカルのジムモリソンをパティスミスは「死者の声を持つ」と称したのを雑誌で読んだりした。むむ、あるいはスージースーだったか。いずれにせよビートルズ的でもストーンズ的でもなさそうな、今まで聴いたことのない音だろうと想像していた。

だが実際聴いてみると、Light my fireやHello I love you,Touch meなどポップなヒット曲も多く、カリスマチックでありながらも大衆的人気もあるというアンビバレンツな存在なのだった。あまりこういうバンドはいない。

イメージ的にはNYのベルベットアンダーグラウンドと双璧を成していたようだが、商業的な成功という点ではドアーズの圧勝だった。まあしかし後進への影響力という点では甲乙つけがたいかもしれない。ちなみに村上龍とルーリードの対談がML誌上で行われ、リードがジムモリソンのことを「カリフォルニアの阿呆」とか言ったらしくて、村上龍が落ち込んでいたのが笑えた。

一般的にドアーズは初期作品の評価が高い。松村さんもそのような評価で、「LA Womanは後期の傑作といわれるが初期2作に比べるとかなり落ちる」といったコメントがあったようで、経済的に制約のある大学生は後期作品の購入を見送っていたのだ。実際後期の作品Morrison Hotelは楽曲的にはばらつきがあったように記憶しているし、1st、2nd の一部のスキのなさに比べるとやや弱いか。しかしもしかしたら第三者の評価に引きずられていたのかもしれず、今回は自分の耳で確かめてみたい。

そういうわけで後期作品群が今回のねらい目である。

アナログで聴きたいアーティスト筆頭格なので、とりあえず時価を調べに中古レコード屋へ足を運ぶ。大雑把に言って、USオリジナルは6000円台、Lateプレスは3000円台といったところ。売れたバンドだけに、こんなもんだろう。

12月某日

会社の健康イベント「歩こうフェス」というのは、個人とチームで歩数を競うというもので11月中旬から1か月にわたって行っていた。我々のチームは2位、個人的には10位につけてまずまずの成績。体験記を多少のデフォルメをしつつ会社ブログにアップしたら一部の人々に熱狂的に受けて、廊下やエレベーターホールで突然声をかけられ「ブログ面白いですう」とか言われたり、アンケートフォームで「ファンです」とか「プライベートが知りたい」とか言われたりする。いやはや。
およそ30日の大会期間中の1日当たりの平均歩数は2万歩超で、個人ランキング10位に入った。が、それから3週間近くたつが足の疲れが取れないような気がする。  

12月某日

立ち寄ったDU新宿店のブックコーナーで、たまたまつげ義春の「漫画と貧乏」という対談・インタビュー集を見つけて買ってしまった。今年6月ごろの発売なのだが、雑誌とかチェックすることがないので出ていたことすら知らなかった。

ただ、最新(近)の対談を収録、と思い込んだのは私の早とちりで、ねじ式後の1960年代後半の第1次ブームから2003年ごろまでの対談・インタビューを集大成したものだった。
読み進めるが、ネットで注文していた松村の「リザードキングの墓」が到着したので、そちらに乗り換えて今は休止中。
「娯楽漫画が描けない」「頭の中で想像するのが面白いが、漫画を描くことは苦痛」など、らしい発言が並ぶ。とすると、「ねじ式」は想像力と才能だけで書かれた作品なのか。私小説的な作品と思われているものの大半が実話だとか、夢の描写と思われていたものがそうでないとか、

どうにもつかみようのない人物である。

ゲンセンカン主人、やなぎや主人などをまとめて一本にしたラジオドラマを中学生の時に聞いた時の衝撃は忘れられない。

12月某日

ガーランドジェフリーズの「Wildlife Dictionary」をネット通販で取り寄せてリビングで聴く。いきなり往年のダブサウンドである。ドラムにロビー・シェイクスピアが参加。なるほど。1997年の作品だが、「Escape Artist」のころとなにも変わっていない。濃いサウンドに濃い声である。昼飯を食いながら聴いたが、BGMとしてはやや不向きか。少々陰鬱か。最後の曲が結構かっこいいインストだった。

12月某日

久々に娘のご帰還である。目的はクリスマスの鳥の腿の唐揚げを食べること。妻は決して料理がうまくはなく、好きでもないようだが、この鳥の腿の唐揚げは抜群にうまいのだ。ケンタをはるかに凌駕している、間違いなく。

そして当家では、クリスマスとは鳥の腿の唐揚げを食べる日なのである。ケーキもない、ツリーもない、そんなクリスマスである。そして今日は火曜で休肝日なのだが、クリスマスだから、飲むのだ。娘に打診したら「のもうかな~」と返ってきた。

今の職場は六本木にある日本で一番高いビルで、ほとんど観光地になっており広場はクリスマスにちなんだ催しものでごった返しているのだが、こちらの楽しみはちゃんとあるのだ。

やがて新年となる。


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