4月13日

今日は昼過ぎからバイトだった。10時に目を覚ますと、外はよく晴れていて気持ちよかった。出発の直前になって部屋の中でケータイを失くしてしまい、見つからなかったのでそのまま家を出た。せっかく午前中に起きたのに、既にバイトには遅刻だったので少しがっかりしていたが、春の優しい暖かさはそれを忘れさせてくれた。駅に着くとケータイの中にSuicaが入っていることを思い出し、切符を買うことにした。周りにはそんな人なんてもちろんいなくて、30年前からタイムスリップしてきたようだった。バイトのことはよく覚えていない、何かしたような気もするし、何もしなかったような気もする。
　バイトが終わったのは23時で、外はいつの間にか真っ暗だった。駅で切符を買うこと以外、ケータイがなくて困ったことは案外特になかった。帰りの電車で「海辺のカフカ」を読み終えた。読み終わるのが勿体ないほど素晴らしい作品で、これを書いている今もまだ余韻が抜けてないように思う。最寄り駅を降りて、自宅へ向かう。いつもはイヤホンをしているので気づかなかったが、夜道は驚くほど静かで、その心地よい静寂を聴きながら歩いた。ときどき遠くから聞こえる虫の声が、夏の訪れを思わせた。