一文無しの朝は、いつも美しい。 大学2年生の時、年上の先輩に誘われて初めて賭け麻雀をやったときのこと。私はそのときルールもレートもよくわからずに遊んでいた。そんな事も分からずにギャンブルをやるのはいかがなものかと思うかもしれないが、自分としてはなんとなく可愛がってもらえる先輩が何人かいたから、なんとなく着いて行って遊んでいただけだった。その日はもちろん朝まで負け続けた。でも当時の私は自分がいくら負けてるのかもよく知らなかった。具体的な金額は伏せるが、大卒の初任給くらいは一晩で
「ええ、五目…。」と、名人はつぶやいて、はれぼったい瞼を上げると、もう石を並べようとはしなかった。 「先生、ありがとうございました。」と、名人に礼をしたまま、深くうなだれていて、身動きもしないのだった。両手をきちんと膝にそろえて、白い顔は青ざめていた。 「あれはみんな、新婚旅行ですね。」と、名人に言った。 「面白くないだろうなあ。」 と、名人はつぶやいた。 白九十八を名人はまた半時間あまり考えた。口をこころもちあいて、瞬きながら、扇を使うのが、魂の底の炎を煽り立てようと
「今月も電気無しか」 机に置いてあった封筒を見て、男はため息混じりに呟いた。彼はその封筒を開けることなく、一杯になったゴミ箱の中にねじ込んでしまった。 300年前の2040年、大規模な地球の気候変動から逃れるためにアメリカが地下都市を建設し、それを”楽園”と呼ぶことによって地上の人類を移住させた。日本もその例外ではなく、かつての東京の地下に”楽園日本地区”が建設され、当時楽園に憧れた多くの人が移住した。長い年月をかけ楽園は発展していったが次第に地下の資源が枯渇し始め、世界の
十七歳の六月、窓際で五時間目の授業を聞きながしていた。勢い良く開けた窓からは教室に篭っていた先ほどの体育の熱気が、雨つぶを飲み込んだ涼しい風とすれ違うようにして出て行った。なんとなく気だるげで落ち着かない教室の雰囲気は、まるで夏を待っているようだった。放課後までまだ四十分もある。私は机に顔を伏せて少し眠ることにした。 そこは暗い森の奥、大きな屋敷のような旅館だった。そこには私の他にも既にたくさんの客が居た。彼らは育った場所も年齢も様々で、学校にいるときは出会えないような人ば
与謝野晶子訳「源氏物語」を最初から読んでみてます。おばあちゃんが昔書いた小説をお母さんに読み聞かせされてるような、なんだか優しい文章です。自分的には彼女の訳はとてもしっくりくるし、原作の静謐な美しさをなるべくそのまま受け継いでいる印象を受けました。また、そもそもの物語が面白くて登場人物(主に源氏)も魅力的なのでいつの間にかその世界に引き込まれるような感覚を味わえました。紫式部の観察眼や物語のセンスには脱帽するばかりです。 晶子氏の訳は、作中の和歌の解説が極端に少ない気がします
こんにちは。自分はいつもやるべきことを後回しにして、後々になってから取り返しのつかないことになってしまうことがしょっちゅうあります。 これを書いている今でさえ、数々のレポートの締め切りやこれから行くバイトの準備を忘れて、後回しにしています。いや後回しにしているというよりかは、どこか見えなくなるほど遠くへ放り投げてしまったり、暗い穴の中に放り込んで蓋をしているようにも思います。とにかく何も見たくないし、思い出したくもないんです。やがてこの一連の動作はごく無意識的に、反射的に
ここ最近、家のパソコンの調子が悪くて、うまくネットに接続できないことが多かった。朝8時30分、早く目覚めたのでパソコンを開き、音楽を聴きながらゆっくりしていると、突然両耳に流れていた音楽が止まった。 「またこれだ、最近よく切れるんだよな」 ここ数日で電波が突然途絶えたり、突然復活する現象が頻繁に起きていた。 普段はすぐ繋がるのだが、今日はなかなか復活しなかった。仕方がないのでパソコンの電源を消した。ため息をついて、周りを眺めてみる。閉め切られた緑のカーテンの隙間から輝く光の
最近は何というか、何かを創り出したいと考えることが多くなった。自分が美しいと思うもの、自分の考え、世界を何かによって構築したい。じゃあその何かっていうのは何なのか考える。自分が興味あるところで言えば、 小説、音楽、詩、絵画などがそうだ。じゃあ実際に作ってみようということで、まずはこうして少しでもいいから文章を書いてみる。教科書をたくさん読んで覚えても実際に問題を解かなければ身につかないように、こうしたアウトプットの工程は自分が思ってる以上に重要なことだと思った。もちろんインプ
11時頃に目を覚ました。ここ数日は「カラマーゾフの兄弟」を夜遅くまで読んでいて、つい起きるのが遅くなってしまう。昼から英語の授業があったので、食事をしてからシャワーを浴びた。まだ4月にも関わらず、冷房をつけてやろうかと思うほど暑い。着替えている時にふと、これから夏に着るような服が全くと言っていいほど無いことに気付く。大学が終わったら夏服を買いに行くことにした。せっかくなので、数少ない友人の一人を夕飯に誘う。すぐに、「仕事が終わったら行く」と返事が来た。 大学に着くころには授
4月15日 良く晴れた日だった。ちゃんと早起きはしたし、シャワーも済ませたのだが、なんとなく気分がよくなかったので午前の授業は休んだ。「海辺のカフカ」を読み終わったので新しい本を買いに行くことにした。外はぼんやり暖かくて、散歩するにはうってつけの天気だった。近所の桜はもうだいぶ散ってしまって、公園はだんだん緑色に変わりつつあった。本屋では「羊をめぐる冒険」の上下巻を買った。1400円くらい。帰り際、高台にある公園に寄ってみた。この公園には見晴らし台があって、街を一望できる
今日は昼過ぎからバイトだった。10時に目を覚ますと、外はよく晴れていて気持ちよかった。出発の直前になって部屋の中でケータイを失くしてしまい、見つからなかったのでそのまま家を出た。せっかく午前中に起きたのに、既にバイトには遅刻だったので少しがっかりしていたが、春の優しい暖かさはそれを忘れさせてくれた。駅に着くとケータイの中にSuicaが入っていることを思い出し、切符を買うことにした。周りにはそんな人なんてもちろんいなくて、30年前からタイムスリップしてきたようだった。バイトのこ
10時ごろに起きた。昼からの大学は休んだ。シャワーも入ったし、家を出る準備はしていたけど、やめた。英語の先生には体調が悪いと連絡しておいた、英語で。それと月曜日までの課題をいくつかやった。まだ一個フランス語の課題があったけど、疲れたからやめた。なんだか落ち着かなかったので、ベッドに入った。天井を眺めていると、くだらない考えが頭の中をぐるぐる回っていた。これは朝から自分にまとわりついていて、これを書いている今でさえ浮かんでは消える。それから少し眠った。夢のことはよく覚えている。
気づけばもう春なので、いちばん春っぽい百人一首の歌を紹介。 作者は伊勢大輔(たいふ)。なんか男っぽい名前だけど女性である。 わざわざ訳なんてしなくてもこの詩の美しさは分かると思うけど一応 「昔は奈良で咲いてた八重桜が、今では京都でもっと美しく咲いてるなあ。 (これはきっと、今の方が世の中サイコーだからだよな?)」 という詩。 「古(いにしへ)」と「今日(けふ)」、「奈良」と「京(けふ)」、「八重」と「九重(都のこと)」という3つの対比によって、桜の美しさと京の都の繁栄を同時に
ここ数年間で発見した、一人の時にすると良いことをまとめてみる。 ここでいう”良い”というのは、生産性どうこうではなく、余計な考え、感情が消えて心が落ち着くということ。禅。 家編毎日の8割くらいはこれ。 誰にも邪魔されないし、時間も他人も気にしなくて良い。暖かいコーヒーか紅茶、さらには草もあれば最高。 1 音楽を聴く どんなに疲れていても、お金がなくてもいつでもできる至高の行為。 これは音楽に限らず言えることだけど、マルチタスクは絶対にしない。音楽を聴くときは、ただ目の前
BADSAIKUSH 舐達麻 feat. KENNY-G OUTLAW (Official Music Video) バダサイ史上で五本の指に入るほど素晴らしい詩だと思っていますが、HOOKが残念・・・。ビートはもちろん、原曲であるPlease Tell Me Why という曲も本当に秀逸なだけに惜しいです。ちなみにHOPEというイベントではG-PLANTSとデルタにもそれぞれバースがあって、HOOKはなんとAwitchさんが詠っています。幻のコラボ。曲としての完成度はもち
DAYDREAM / ANARCHY & BADSAIKUSH (prod.GREEN ASSASSIN DOLLAR) この詩を耳にした我々はまず、3分44秒の白昼夢へと誘われる。短い居眠りが終わる頃には昼下がり、目の前には春の暖かい空が広がっているはず。 Anarchyなんとも美しい叙景。ハワイのバルコニーから熊谷へと旅立つ前の幸せな時間。 正に。これはきっとバダサイと自分のこと。 何かしらのシンパシーを感じているに違いない ”高級料理よりもドミノピザとコーラそれ