降水確率0%の通り雨《君の落雷 僕の静電気体質》7
なあ、運命は、お前は一体何を望んでいる?
答えはない。また深い眠りについたのか。
「飲み会?何それ?」
朝、いつものように迎えに来たたけるに思いもよらないことを聞かされた。
「僕が約束?ないない。からかわないでよ。」
「いや、ほんとだ。話を作ってはいない。」
「ほんとに?なんでそんなこと受けたんだろう、、僕、、」
考えたところで記憶が浮かぶわけがない、空白の景色が見えるだけだ。それでも意識を集中してみる。
びりっ
「いたっ」
「どうした」
「静電気が、」
いたた、今のは結構衝撃があった。
「季節じゃないんだけどな」
油断してた、ブレスレットは外せないね。いつもしている静電気防止ブレスを身につける。ちなみにこれは僕が発明した特殊ブレスだ。僕は酷い静電気帯電体質で、市販しているやつじゃ役に立たない。だから創った。僕は小さいころから発明少年といわれるくらい色々なものを創ってきたけど、人の役に立ちたいとかいう理由では決してない。自己保身のためだ。自分が生きていくのに必要不可欠なものを考えていたら、副産物として誰にでも便利なものができただけ。
「で、コンパだっけ、誰が来るの?僕が了承するくらいだから、よっぽどの人がいるのかな。予想もつかないけど」
「いいや、いつものメンツだ」
「と、いうと?」
「お前の所属しているゼミの連中だ」
「・・なんで?なんのために?」
「お前と親睦を図りたい、そうだ。来年卒業だからだと」
「それって意味ある?」
「ないだろうな」
「そだよね、なにかを期待してるのかな」
「それもない、ようだ」
「ふーん、じゃあ、、、まいっか、わからないから人だもんね。僕を了承させる何かがあったんだろう、うん」
深く考えることはしない。あとから考えることにはそれこそ意味がない。
学校行こうか。そう言って、僕はそれでもいつもよりは少し長く悩んだ服を着て、たけると一緒に家を出た。
「今夜はよろしく、無理に誘って悪かったけど、決して後悔はさせない。」
その日の予定の受講を終えて、ゼミ室へ行ったらいきなりこんなことを言われた。ちょっと、かなり引きながらいつもの挨拶をする。
「話は聞いてる、初めましてから始めていいかな。知ってるかもしれないけど、僕は倉石、君は?」
「あああごめん、俺は冨田、今日のコンパに君を誘ったのは俺、どうしても君と一緒にいたくて。気持ち押し付けてごめ、」
「覚えてないけど、承知したってことは、僕も行きたかったてことだと思うんだ。記憶に残ることはないけど、僕も楽しく過ごせればと思っているよ」
「倉石!いいやつ!」
女の人の声が飛んでくる。え、誰?
「富田になんぞ気を使わなくていい、土下座なんて力業で人の気持ちを動かそうなんざ外道だね。」
「土下座、、」
「吉川さん!」
「倉石、私はこのゼミで助手をしている吉川というものだ。冨田は酷いやつだから、飲み会の間はずっと私の隣にいるといいよ、防波堤になってあげる。」
「い、いえ」
「そう、倉石大丈夫だよ、僕は門脇、君の同級生だ。吉川さんのフォーメーションより教授の散開より僕のストームは完璧だよ。ということで、倉石の隣は僕ね」
「門脇!」
「門脇、てめ!」
なにが、おこっている?この三年間こんなことあったっけ、記憶がないのを忘れて必死に記憶をたどる。
「思い出すわけないじゃん」
すぐに、考えることをやめて、唯一の人との生きた接点を探す、が
「そうか、そういう手があるか、有難う感謝する」
たけるは長く明るい色の髪を持つ女の子と話していた。
「いいえ、またどうぞ」
ふんわり笑って女の子が答える。
誰だろう、とりあえずたけるを呼ぼうとして、でも、何を言えばいいんだ?
今までこんな風に面と向かって好意を向けられたことがあったかって?
らしくないな、記憶がないのにそう思うのもおかしいんだけど、らしくない、やっぱり少し浮かれてるのかな。普通の、普通の学生やっているって。今まで人の輪の中で、楽しいことも悲しいことも何もかも平等に忘れてきた。だから、人がいたはずの場所は全て空白で、何かで埋めなきゃならなかった。
「あきら」
「え、あ、たける、今何時?」
「4時だ、なんだか疲れているようだが、やはり飲み会に出るのはやめた方が」
「ちょっとまてー!!」
「何を待つんだ?冨田」
「三徒、お前は部外者だろうが、今日はゼミのコンパだ!」
「忘れているようだが、富田。あきらは俺のいないところへは行かない」
「うっ」
「行けないじゃなくて行かないというところがえぐいよね」
「何でしょうか、吉川さん」
「君が行くことは織り込み済みだけど、席順を決めるのは主席の僕だ」
「残念ながら文系の主席は俺だがな、門脇」
「理系と文系どっちが上か今決めるか?」
「院生も混ぜてね?去年までの主席は私よ、お二人さん」
「小林さん」
「それをいうなら、日本トップの私の役割は何でしょうか?ほっほっほ」
「篠塚教授は蚊帳の外でいてください、切実に」
「ほっほっほ、い・や・で・す」
「えー、あの一度全員自己紹介してもらってもいいでしょうか?なんか混乱してきたので、それぞれの立ち位置まで言っていただけると助かります。」
「そうか、疲れたんだなあきら、やはり帰った方が」
「いや、疲れてないし、帰る気もない。なんか君の立ち位置も確認した方がいいような気もしてるよ、たける」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?