降水確率0%の通り雨4《君の雷雲 僕の離脱性体質》12
宮殿にて
「結局、何度もたけるを襲ってきてた、ネオ創始って、なんだったの、おばさま」
「さあねえ、たけるがあの子の鏡面体であることは、一部では良く知られていたし、たけるを手に入れれば、あの子も手に入ると思ってたのかも知れないわね。そうすれば、神を脅す手段ともなりうるってね」
「そんなに、あきらの、時止めの姫の力は強大なの?」
「シン宇宙を一つ生み出せる程には」
「まさか!」
「創世神の後継よ、あの子は」
「では、たけるは」
「それを壊せるほどの力がある、あきらとたけるは創造と破壊の番なのよ」
「新しい世界を望むものにはこれ以上にない素材ですね」
「もう、存在しないけどね、あの人を、時の神を本気で怒らすから壊滅させられるのよ」
「?なにがあったんですか?」
「写真よ」
「あ、そういえばあきらとあいすを誘拐した時に、写真を撮っていましたね。でもあれは、黒焦げになったのでは」
「それくらいあの人は時を戻して復元してしまうわよ。
で、その写真が」
「脅しにつながっていた、と」
「いいえ、全然可愛く撮れてないと」
「、、え?」
「こいつら、私の娘の良さがちっともわかってない、非常に不愉快だって怒ってね」
「は、はは」
「あの人、親バカだから」
「冨田が時の神だということは、私たちは、気づきませんでした。教授は、長老はもしかしたら、ですが」
「仕方ないわ、パワーの桁が違う。あきらとたけるは、力を封印してるし」
「彼らの持つ"魔"とはなんなのですか」
「大いなる災い、7変化の使徒、呼び方はさまざまだけど、わかるのはただ、何かが起こるってことだけね」
「それは、いつ?」
「そうね、わからないわ、今世か、来世かずっと先か。ただ、時止めが、あんなにも抵抗しているってことは、そう遠くないのかもしれない。もう、2人は、いえ運命のあの子たちは、すでに出会ってしまっているし、ね
親とはいえ、私は、あの人だって所詮は傍観者なのよ。子の人生、この場合神生っていうのかしら、には口出しはできない。見守るだけ。あなたたちに、時止めをずっと見守ってって頼むのがせいぜいだったのよ。ありさ、あずさ、今まで、あの子達のそばにいてくれて、ありがとう」
「おばさまに頼まれたからじゃないわ。そばにいて楽しかったからよ、もちろん、これからもひっついているつもりよ、彼らの結末を見るまではね」
「あー、私も転生したいわ!あの人ったら毎日、あきらがどうした、あいすがどうしたって、そればっかり連絡してよこすのよ。ここを守っている私がどれだけ苦労しているかなんてちっとも考えないで!!」
「、、所詮おじさまですから。でも、そうですね、転生は無理でも、内緒で遊びに行くのはありかもしれませんね。おじさまも、転生ではなく、身体を構築しているだけですし」
「いい考えね!ありさ、あずさ!」
「で、あなたは一体なにをしたいのかしら」
ありさたちが去った後。
冨田の姿で神の椅子に座り、ぼんやりと時の球体を回しているところを、后に見つかってしまった。
「雨降って地固まる、はずだったんだ」
「ずどずどのぬかるみですわね」
「ひどいな、せめて固まる前のセメントと言ってくれ」
「砂糖でも入れすぎたんでしょ」
それじゃ固まらないわよ、ふん、娘に甘すぎたみたいねと、后はとどめを刺す。
がっくり、音がするくらい時の神は肩を落とす。落ち込んだかと横を見ると、何かぶつぶつ言っている。
「大体、時を超えるごとに記憶を0に戻すあいつが悪い」
「本来転生とはそんなものでしょ」
「いや、私の鍛え方がゆるすぎた。もっと、根性を鍛えなければ!ということで、地上に行ってくる」
「まてい!」
后は時の神の首根っこを掴む。
「ここにも、土砂降りのぬかるみがありますけど、これはどうなさるつもりなのかしら」
怒ってるっっ、やばいくらい、怒ってるっ!
「えっと、だから、そうだ、后も一緒に行かないか?」
「ここを空っぽにして?そんなことできるわけないでしょ!」
「統始の長老を呼べばいいさ。あいつなら、任せられるだろう?」
「統始の長老?うーん、まあ、」
「それでも不安なら門脇もつけよう。あいつも大概有能だしな」
「そうね、あきらとあいすにも会いたいし。いい考えね、あなたにしては」ニヤリ
「一言余計だよ、后」ニヤリ
2人で顔を見合わせて、くすくす笑う。
「それでもさ」
ふいに真剣な顔で、時の神が言う。
「たとえ、逃れようのない、厳しい運命を背負っているのだとしても、あの子は幸せになれるだろうか?」
一瞬目を見開き、そして、ふんわりとした笑顔で后はいった。
「十分幸せだと思いますけど。素敵な人たちに囲まれて、皆んなに大切にされて。それに、馬鹿を10京つけたような親バカがそばにいますからね。まあ、鬱陶しいが勝つんでしょうけど」
だからほどほどにねとは言外の弁。
汲み取ったかどうかは知らないが、満面の笑顔で、そうだな、と時の神は后の肩に手を置いた。
「モルタルは、水分が多すぎると固まらない、か。今度は土砂降り攻撃で行くか」
「だから、やめーい!」