降水確率0%の通り雨4《君の雷雲 僕の離脱性体質》5
「あきら!」
なんだろう、この胸騒ぎ。つけているブレスレッドが熱い。
携帯電話が鳴った。
「はい」
「あいすか」
「門脇、どうしたんだ」
何だか声が焦っている?
「詳しいことは後で、今どこにいる」
「倉石の家だけど」
「そこにいてくれ、今から行く」
「どうしてだ、何かあったのか」
「・・たけると倉石が行方不明だ」
「な、、わかった、探しに行く」
「そうじゃない、今は家にいてくれ」
「時間を無駄にはできない、、あいつらのしわざなんだろう?」
「だから、あーもう、いい、今行く!」
ざっ、
部屋に門脇が現れる。
「な、んで」
「この手は使いたくなかったのに、聞き分けないからだ」
あいすが、目を見開いて門脇を見ている。
「時空移動、本来は時間を超える時に使うんだけど、3次元でもなんとかなるもんだな、いいこと知ったよ」
きー、家の外で派手なブレーキ音がする。そして、階段を上ってくる複数の足音。
「あいす!」
「ねえさん!?」
扉を開けて入ってきたのは、ありさとあずさだった。
「駅のホームであきらが倒れて、その後、たけると一緒に姿を消したそうよ」
「倒れた!?あきらが?」
「あいす、何か心当たりある?」
「夕べ熱出したけど、朝には下がっていたし、ご飯もしっかり食べてた」
「ご飯を残したんならかなりの重症だと思うけど、食べてたんだろ?」
「しっかりおかわりしてた」
「なら、体調の心配はないな」
「だけど救急車を呼んでいたらしいのよ。意識混濁状態だったって」
「なにそれ!!だったらなおさら、こんなことしている場合じゃないじゃない!すぐに探さないと」
「どこを!俺だってすぐにさぐったさ、透視眼でな!だが、どこにもいなかった!」
「!、ごめん」
「落ち着きなさい、見当はついているのよ」
「!ネオ創始か、あきらと俺を攫った、やつらか」
「いいえ、もっとやっかい。それに、ネオ創始は、すでにないわ。壊滅させられた」
「かなり、怒ってたと聞きました。あの方から」
「??なに、なんのこと」
「私たちもね、あいすと同じよ、あきらをずっと見守ってきた。この15年間。いろいろな姿でね」
「探偵ごっこみたいで楽しかったです」
くすくすとあずさが笑う。
「ねえさん?」
ありさが指を鳴らすと、そこに現れたのは、
「吉川さん、小林さん???」
門脇がめちゃくちゃ驚いている。そうだ、この二人はあきらのゼミの、、
「はあああ?」
「心臓に悪い」
「ふふ、で、本題。今日集合時間を早めたのも、あきらを攫いに来るだろうという情報が入ったからなの。だから、理由は言わずに、時間の変更だけ門脇に伝えた。一刻も早く合流して保護したかったから。たけると一緒に来るはずだから、その時に話そうと思っていたのよ」
「俺は?俺には何も言ってくれないつもりだったのか」
「あいす忘れたの?私たち3姉妹は糸を通じて全て共有できるでしょ」
「そうだけど、あきらを傍で守れない、今みたいに」
「仕様のない時もあるわ。でも、相手はもっと早く手を打ってきた。あきらの記憶を開き、戸惑っている間に連れ去ってしまった。想像だけどね」
「あきらの記憶?」
「あいす、あなたがデータ化して整えておいた記憶です。
春に、あきらの記憶が見えるようになって、それなのに思い出すことができないって、不審に思っていた記憶ですよ」
「不思議だったんだ。いつでも見ることができるようにしておいたはずなのに、なぜ見れないんだろうって。まさか、その攫ったやつが力を加えていた?」
「おそらく」
「ねえ、もしかして、ねえさんたちそいつを知っているの!?」
2人は、何も言わない。
もう一度あいすが詰め寄ろうとしたとき、
隣室から大きな音が響いた。となりはあきらの部屋、あいすが駆け出す。
「あきら!」
乱れた室内、そこにいたのは
たけるだった。
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