降水確率0%の通り雨2《君の雷鳴 僕の過敏性体質》9
日々の暮らしの中で、たけるの内在するエネルギーチェックは僕が、空間の歪みと敵の動向チェックはあいすが、それぞれ担当していた。
「あきらはどうして私にそんなに触れてくるのだ?」
「あーごめん!」
「いや、別に気にしてはいないが」
やばい、楽しすぎた。もちろん触れなくてもエネルギーチェックはできるのだが、触れていた方が圧倒的に簡単なのだ!
(触っている方がやりやすいんだもん。でも、ちょっと露骨すぎたか)
「えっと、その、さわっていると、なんだか安心するというか、ほら、君もみけさんにさわっていると、気持ちが落ち着くだろう?」
「私はねこか」
「似たようなものかな、君は僕にとって癒しなんだよ」
「なんだか釈然としないが」
(おっ、なんとかごまかせたかな、おわっと?)
「膝枕してやるから、少し休め、昨夜は宿直の晩だったのだろう。目の下が黒い」
たけるがあきらの頭を掴みあぐらをかいている膝に乗せる。
「ゆっくり休め」
(休めるわけないだろ〜)
「と、いいつつ、主君の膝枕でおやすみとは、あいかわらずの度胸だな、お前の兄は」
「弟だよ、流石にあれはないけどね」
「膝枕にされて寝る主君も主君だが」
「ほっとく?」
「ほっとこう、中宮大夫さまに、こっぴどく怒られるがいい」
悪い笑みを浮かべたあいすと門脇はすごろくでもするかと、その場を立ち去った。
あきらとあいすが、タケルのもとで過ごすようになって、早、3年が経とうとしていた。たけると門脇は12歳になり、来年元服を迎える。
あきらとあいすは10歳になろうとしていた。
この3年で変わったことといえば、身長と、いつのまにか4人が、宮中の人気者となっていたこと。並び立つところを見ようと、彼らの行くところ、御簾のうちには、女房たちが必ずひしめいていた。ことに、あきらとあいすは、『白銀(しろ)と赤丹(あかに)の天界の童子』と呼ばれ、一目見れば幸運が訪れるなどと、傍迷惑な騒がれ方をしていた。それを知った時2人が本気で落ち込み、そこをたけると門脇に目撃されている。
「なんでだよ、、、」
「めげるな僕負けるな僕」
「あきら」
「あいす」
「「うわ~ん」」
「3年、なんだね」
「ねえさんたちからの報告によると、エセ創始がたけるから手を引くことはなさそうだね。それに、機会を伺っている段階は、もう終わりそうだって」
「そろそろってこと?」
「うん」
「そっか。ごめんね、あいすにばかり調べものさせて」
「なんの。そのかわり、あきらにはたけるの面倒みてもらってる」
「面倒、ほんっと面倒」
「うまくいってないのか?」
「そんなことはない。大体へんげの過程のほとんどはあきつが終わらせているから、僕がするのって残滓のトリートメントくらいだし」
「あきらが気にしてるのはあれか」
「あれ」
「そうか、」
あいすがごろんと後ろに倒れて、天井を見る格好になる。
「たける、説得できると思う?」
「うーん」
「だけど、、そうやるしかない!」
あきらも後ろに倒れこむ。
「ごちゃごちゃ考えても仕方ない!やってやるさ!」
「そうだね。
、、あ、そういえばさ、はいこれ、ねえさんから」
「なに?これ、風景画?」
山の中のひろびろとした広場に社がある。そばを川が流れ、木にはたわわの果物が生っている、そんな水墨画。
「『避暑地の別荘』作ったから、みんなで行きなさいって」
「えーーすごい!わーきれいなとこ、でもみんなって、」
「たけるの傍を離れるわけにはいかないだろうから、たけるも門脇も連れて、羽伸ばしてきたらってことらしいよ」
「だったらさ、ねえさんたちも一緒に行かないかな。場所広そうだから、もう一軒くらい社建てられそうじゃん。ね、できないかな」
「いいね、今度ねえさんに会う時に打診してみるよ、きっと行くっていうよ。ねえさんたちだもの」
「そうだよね、うわー楽しみ!」
だが、2人の避暑の計画がかなうことはなかった。
3日後ー
ー緊急事態ー
あきらとあいすの頭に警報が鳴り響く。
起こっては欲しくなかったが、来るべきこと。
2人は目を見交わし、あらかじめ決めていた場所へと向かう。
あきらはたけるのもとへ
あいすは、次元の裂け目へ
「たける!」
たけるの部屋にはすでに第一陣の襲撃が襲っていた。
「あきら!」
部屋の壁がうごめいている。
雨が降り始めた。